投資、及びトレードにおける売買の手法は大きく分けて、以下のような『順張り』と『逆張り』に分類されます。
・順張り:相場の流れ(トレンド)に沿っていく形でポジションを建てる(買う、または売る)手法。 ・逆張り:相場の流れ(トレンド)の反転を狙う形でポジションを建てる(買う、または売る)手法。 |
一般的に言われる『順張り』『逆張り』の定義は上記のようなもので、相場の流れ(トレンド)がそのまま継続すると思えば、その思惑に沿ったトレードは『順張り』になるはずですし、その流れ(トレンド)が終わると思えば、その反転を狙うトレードが『逆張り』となるわけです。
その上で、理想なのは、この両方を自在に行いながらトレンドが継続する時は『順張り』で利益を上げ、トレンドが反転する時は『逆張り』で利益を上げられる事だと思います。
ですが、相場の世界で、それを自在に実現するような事はそう出来ることではありません。
よって、大多数の投資家、トレーダーは自分なりの相場の判断基準を確立した上で、
・トレンドが継続する可能性を分析した上で『順張り』を主としている人
・トレンドが反転する可能性を分析した上で『逆張り』を主としている人
この2つに大別される傾向にあり、大抵、どちらかを追求した上で、その分析結果に基づく売買(トレード)のみを行っています。
では、この「順張り」と「逆張り」は、どちらが稼ぎやすい手法であり、どちらにどのような優位性があるのか。
今回の講義では、その辺りをそれぞれの手法の特徴と併せて考察していきたいと思います。
「順張り」と「逆張り」はどちらが稼ぎやすいのか。
ここで言う「稼ぎやすい」の解釈、定義はある程度、多様なものになってしまう余地がありますが、ここでは以下の4つの視点から総合的な観点で考察していきます。
・相場比率(エントリーポイントの頻度) ・エントリー判断の難易度(対象となる相場の明確性) ・決済判断の難易度(利確および損切の判断ポイントの明確性) ・リスク&リターン(想定されるリスクとリターンの比率) |
相場比率(エントリーポイントの頻度)
まず、この「順張り」と「逆張り」における『エントリーポイントの頻度』は、どれくらいの時間軸、売買のスパン(期間)を前提に考えるかで大きく変わってきます。
売買における時間軸やスパン(期間)の前提次第で、相場そのものはもとより「トレンド」というものの捉え方も大きく変わってくるからです。
例えば、以下はドル円(USD/JPY)相場の約1年分(2018.4-2019.4)の値動きを示した「日足チャート(ローソク足1本が1日の値動きを表しているチャート)」ですが、このチャートで言う『トレンドが転換(反転)しているポイント』は、丸で囲っているような部分にあたると思います。
実際に日足チャートを見て「逆張り」を狙うようなトレーダーであれば、これより大まかに「相場(トレンド)の転換点」を捉えているくらいだと思いますが、比較的、細かくトレンドの転換しているポイントを押さえても、その「反転」を狙えるタイミングは上記の通り、約1年間で10回程度です。
つまりチャートの時間軸を「日足ベース」で見て、数日からそれ以上のスパンで売買(トレード)を行うトレーダーにとっての「相場(トレンド)の転換点」は、月に一度、あるかないかの範囲だという事です。
対して、以下は同じくドル円(USD/JPY)相場で、2019年の3月から4月先あたりまでの「約1カ月分の値動き」を示した1時間足のチャート(ローソク足1本が1時間の値動きを表しているチャート)になります。
先程の「日足のチャート」の方で見受けられた、この3~4月間の「相場(トレンド)の反転ポイント」は2つほどでしたが、この1時間足では、同じ期間内に10箇所くらいの反転ポイントが確認できるのがお分かり頂けると思います。
このように、相場をどれくらいの時間軸で捉え、どれくらいのスパン(期間)を前提に売買(トレード)を行うかで、相場(トレンド)の反転ポイントの見方、捉え方も大きく変わってくるという事です。
ただ、どちらのチャートを見ても一目瞭然な点として、基本的に『逆張り』は相場(トレンド)の反転を狙う事が前提となるため、相場を「長期間」で見ても「短期間」で見ても、やはりその「反転ポイント」にあたるものは、相場の流れの中の「限られた局面(タイミング)」でしかありません。
言い方を変えれば、この反転のタイミング以外のポイントは全て『順張りの対象になりえる相場』という事になります。
つまり『逆張り』と『順張り』における、その前提となる相場比率(エントリーポイントの頻度)は、どうあっても「順張り」を前提とする相場の方が多くなるという事です。
もちろん、順張りの手法、エントリータイミングの基準として、
・相場の反転を見て、そこからの「初動」を狙う手法
・相場の高値更新のタイミングを狙う手法
このような限定されたタイミングのみを狙う「順張り」の手法であれば、必然的に、そのエントリーポイントも限られます。
ただ「継続するトレンドに沿ったトレード」という定義を前提とするのであれば、どうあっても『順張り』の対象となる相場が大半を占める事となり、相場(トレンド)の反転のタイミングのみを狙う『逆張り』の対象となる局面は、必然的に限られてしまうわけです。
▼ 長期目線、短期目線、各トレーダーの順張りと逆張りが重なる可能性ここで示した論理から、短期的な視点で相場を捉えているトレーダーから見た『逆張り』の対象となる相場(トレンドの反転ポイント)は、長期的な視点で相場を捉えているトレーダーにとって『順張り』の対象となる相場(トレンドが継続する相場)にあたるケースなどが想定される事になります。 |
エントリー判断の難易度(対象となる相場の明確性)
続いてエントリー判断の難易度(=対象となる相場の明確性)についてですが、これはどちらが「容易」で、どちらが「困難」という事を断定するのは難しいポイントです。
ですが、多くのテクニカル指標の傾向として、
・トレンド(値動き)が継続する可能性を分析する指標(相場の持続力を計る指標)
・トレンド(値動き)が反転する可能性を分岐する指標(相場の抵抗力を計る指標)
このどちらが多いかと言えば、おそらく後者の「抵抗力を計る指標の方がやや、多くを占める傾向」にあります。
ただ、この「抵抗力を計る指標」は、逆の視点で見れば、その指標が「安全域」を示している状況を『トレンドが継続する可能性が高い局面』と見る事もできるものです。
よって、この「難易度」やそれを判断していく「精度」にあたるものは、どのような指標、指数を用いるかで変わってきます。
自分自身が拠り所にしている指標が相場の「持続力」を計る事に適しているのか、または「抵抗力」を計る事に適しているのか、また、場合によっては、その「持続力」「抵抗力」の判断を逆の視点で見る事も有効となります。
それらを検証、分析していった上で『その「精度」に準じた手法を確立する必要がある』という事です。
▼ そのエントリー基準を確立する難易度を強いて比較するなら
|
決済判断の難易度(利確および損切の判断ポイントの明確性)
続いて「決済判断の難易度」を比較しますが、これはエントリー後の「決済」における判断であり、状況としては、意図する方向に相場が動いていった場合の「利益確定」の判断と、意図する方向とは逆側に相場が動いていった場合の「損切り」の判断の両方を対象とします。
ただ、いずれの手法も『トレンドが継続によって利益を伸ばす』か『反転した相場の継続によって利益を伸ばす』という点で、思惑通りに相場が動いていった場合の状況判断には、さほど大きな違いはありません。
順張りの場合はトレンドがどこまで継続するのかを判断していく事になり、逆張りの場合は反転した相場がどこまでその動きを継続するのかを判断していきます。
つまり、どちらも相場の「持続力」を判断していくものであり、それがトレンドの継続局面か、その反転後の局面かの違いでしかないという事です。
ただ、仮に意図する方向とは逆側に相場が動いていった場合は『順張り』と『逆張り』とで、その状況を見据える視点が、それぞれ以下のように分かれる形になります。
(順張り時に「逆相場」を捉える2つの視点) 「これは一時的な押し目に違いない。」(楽観的視点) 「既に相場(トレンド)が反転したのではないか。」(悲観的視点) (逆張り時に「逆相場」を捉える2つの視点) |
いずれも、その相場を捉える視点がそれぞれ真逆のものになりますが『順張り』の際も『逆張り』の際も「どちらの視点で相場を捉えるか」が、その後の明暗を分ける事になります。
そして、実際にどちらの視点が正しい結果を招くかは、その後の相場次第であり、これはどちらが正しい結果にもなりえるのが実情です。
故に重要なのは、このような「どちらにも捉える事ができる状況」を、いかに的確に判断できるかであり、その「的確な判断」を下しやすい方に、この部分での優位性があると言えるわけです。
ただ、これは結局のところ、
『その状況が「チャンス」なのか「ピンチ」なのかを、いち早く判断できるかどうか』
という事であり、やはりこの部分も自らが拠り所にしている「テクニカル分析」の指標次第という事になります。
その「判断」をより早く、高い精度で下せる方に、その優位性がある事は間違いありませんので、これも自らが拠り所とする指標を用いて「分析」と「検証」を繰り返した上で判断していく必要があるという事です。
▼ それが「ピンチ」か「チャンス」かの判断における私個人の私見この部分に関して、あえて私の私見を述べるのであれば、私は『逆張り』の方にその優位性があると考えています。 「その相場が押し目なのか」 これらの判断は、それを即座に判断するのが難しい傾向にあり、それが難しいが故に、どうしても「ある程度の含み損」を覚悟しない事には、その判断を的確には下せないのが実情だからです。 「より強い反転が期待できる過剰な動きなのか」 これらの判断は『ここだけは超えてはならない一線』のようなものを予め引ける傾向にあります。
|
リスク&リターン(想定されるリスクとリターンの比率)
これは実質的にここまでで言及した内容によって、ほぼ答えに近いものが出ている部分ですが、基本的に相場は『逆張り』を前提とするトレンド(相場)が転換する局面よりも、トレンドを継続している局面の方が多い(長い)ため、
・エントリーの頻度
・勝率
この2つを単純に考えるなら、これは『順張り』の方に軍配が上がる事になると思います。
多く場合において、相場がトレンドを継続する傾向にあるなら、その反転を狙う逆張りは、チャンスも限られる上に、その反転ポイントを見誤る可能性も高いという事になるからです。
ただ、それに対する「リターン」という点では『逆張り』は実質的に相場の転換点を狙える形になるため『順張り』で言うところの「トレンドの初動」か、それ以前の段階でポジションを作る事が出来る形になります。
よって『順張り』を前提とする手法が必ずしも、トレンドの初動でポジションを作る事ができるわけではない事を前提とするなら、エントリー後の「リターン」は『逆張り』の方が、それを大きくできる可能性が高いと言えるかもしれません。
つまり、端的に言えば『逆張り』は「ハイリスクハイリターンな手法」と言える側面があり『順張り』は、やり方によっては、そのリターンも大きくなりますが、総体的に捉えるなら『逆張り』と比較した上で言えば「ローリスクローリターンな手法」と言っていいと思います。
相場業界の一般論としては、どちらかと言うと『順張り』こそが王道的なものであり、こちらが「正攻法」と言われている傾向にあります。 ただ、これはまさに相場における多くの局面が「トレンド(流れ)を継続する傾向にある」という点から、単純な確率論(勝率)の面で『順張り』を行っていく方が「無難」という点に起因していると考えられます。 もちろん、この考え方自体はとくに間違っていませんが、そのような単純な確率論だけで勝てるほど相場の世界は甘くはありません。 故に、そのような見地にのみ捉われるのではなく、相場やテクニカルを広い視野で捉えた上での分析と検証を重ね、しっかりと「有効な基準(ルール)」を確立していく必要があるんです。 |
「順張り」と「逆張り」はどちらが稼ぎやすいのか。総括
以上の通り、ここでは『順張り』と『逆張り』の「稼ぎやすさ」にあたるものを以下の4つの視点を前提に考察してみました。
・相場比率 (エントリーポイントの頻度) ・エントリー判断の難易度 (対象となる相場の明確性) ・決済判断の難易度 (利確および損切の判断ポイントの明確性) ・リスク&リターン (想定されるリスクとリターンの比率) |
上記、それぞれの結論としては「相場比率(エントリーポイントの頻度)」や単純な「勝率」では『順張り』の方に優位性があるものの、エントリー判断、決済判断等においては、私の私見で言えば『逆張り』の方に優位性があると考えています。
つまり、どちらも「一長一短(長所もあれば短所もある)」という事であり、結局のところ、自分自身らが「拠り所」とするテクニカル分析における指標、相場の分析基準との「適応性」が、その有効性(稼ぎやすさ)を左右するという事です。
▼ 私が確立しているトレード手法についてちなみに私が確立しているトレードルールは、基本的には『順張り』を前提に「相場の流れに沿って利益を上げていくいく手法」です。 |
以上、ここでは「順張り」と「逆張り」のそれぞれの特徴、優位性を比較する形で言及させて頂きました。
今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、こちらも是非、参考にして頂ければと思います。
>テクニカル分析の本質に基づく「本当に有効なトレードルール」の条件とは。
>投資、トレードで成功するため、失敗しないために重要な3つのルールとは。
>テクニカル分析に基づく有効なエントリーポイント(ルール)の考察
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。