テクニカル分析を前提とするトレードにおいては、私は以下、3つのルールを「有効な形」で確立する必要があると考えています。

エントリーのルール:相場にお金を投じるタイミング(エントリーポイント)を定める基準
利確(決済)ルール:相場の変動によって生じていった含み益を確定(決済)する基準
損切りルール   :相場の変動によって生じてしまった含み損を確定する基準

これら3つのルールが何故、重要なのか、という点については、以下の講義で詳しく言及していますので、併せて参考にしてください。

>投資、トレードで成功するため、失敗しないために重要な3つのルール

その上で、ここでは相場の「含み益」を実際に確定させていく『利益確定のルール』について言及してみたいと思います。
 

含み益は伸ばすべきなのか。有効な「利確(決済)ポイント」の考察。

トレード界隈では一般的に「含み益は伸ばしてナンボ」という事が当然のように囁かれている傾向にあります。

実際にトレードの世界では「小さく勝って、大きく負ける(コツコツ勝って、ドカンと負ける)」というトレーダーが多い傾向にあるため、その逆の状況を作り出すために、

『損切りを早くして含み益は出来るだけ伸ばさなければならない』

という風潮が生まれているのだと思います。

ですが、ここで言う「小さく勝って、大きく負けるトレーダー」が多い反面、実際は「小さく負けながら、大きくも勝てないトレーダー」も非常に多いのが実情です。

その上で、トレードにおける「勝ち負け」は、あくまでも長期的なトータルベースで考えるべきですから、実際に小さく負けようと、大きく負けようと、最終的(長期的)にその「損失」を上回る「利益」が上がっていれば、そのトレーダーは紛れもなく勝てているんです。

その際の「勝ち方(利益の上げ方)」は、必ずしも「大きく勝つ」という事を実現していなければならないわけではなく「小さく勝つ」の頻度、比率が極めて高ければ、時に大きく負ける事があっても、トータル的に損益がプラスになっていくなら何の問題もありません。

要するに実際のトレードの成果においては「勝ち方(大きく勝つか、小さく勝つか)」や「負け方(大きく負けるか小さく負けるか)」は何ら重要ではなく『その上で最終的(長期的)に損益をプラスに持っていけるかどうか』が重要なんです。

よって「どれくらいの勝ち(勝ち方)を見込んでいく必要があるか」は、それに対する「どれくらいの負け(負け方)を見込んでいくのか」によっても変わってきます。

仮に先立つ「エントリーポイントを定めるルール」の精度が高ければ、そのエントリーポイントから意図する方向へ相場が動き、ここで言う「含み益」のみが生じていく形になりますが、その「精度」を100%、完璧なものにする事はまず不可能だと思います。

相場はそう思い通りには動いてくれませんので、どんなに先立つエントリーポイントを定めるルールの「精度」を高めても、相場が意図する方向と逆側に動く事はまず避けられません。

故にトレードにおいては常に「負ける可能性」を視野に入れ、その際に生じる「損失」に対して、自らの手法における「リターン(利益)」を対比する視点を持つ必要があるという事です。

 
つまり、エントリーポイントを定めるルールの精度を可能な限り高めるのは当然として、そこからの長期的な勝ち負け(損益)は、

利確(決済)ルール:相場の変動によって生じていった含み益を確定(決済)する基準
損切りルール   :相場の変動によって生じてしまった含み損を確定する基準

この2つのルールの「対比(バランス)」によって決まっていくと言っても過言ではないわけです。
 

利益確定(利確)のルールと損切りのルールを「対比」する視点を持つ。

もちろん、ここで言う『利益確定(利確)のルール』と『損切りのルール』によって生じていく「利益」と「損失」の対比バランスは「利益」の方に偏っていれば偏っているほど、大きなリターンを生み出せる事になります。

だからこそ『損切りのルール』は可能な限り、損失を最小限にできるルールを追求するべきであり、対する『利益確定(利確)のルール』は、可能な限り、利益を最大限にできるルールを追求するべきなんです。

ですが、ここで言う『利益を最大限にできるルール』は、必ずしも一般的に言われる『含み益を可能な限り伸ばせるルール』と「イコール」になるわけではありません。

仮にそのルールが『小さな利益をコツコツと積み上げていくルール』であるとしても、長期的にその方がより大きなリターン(利益)を生み出せるなら、利益確定のルールとしては、十分にそれが「有効」という事になるからです。

もちろん「確実に含み益を伸ばす事ができる状況」なら、可能なだけ利益を伸ばせるに越した事はありません。

ですが、相場には常に上下(上昇と下降)を繰り返していく特性がある以上、相場が逆側に折り返してくる可能性は常にあるものだと思います。

故に「含み益」にあたるものは、それを確定しない限りは実際の「利益」にはなりませんので、それが「含み益」であるうちは『常にそれが幻の利益に終わる可能性がある』という事です。

 
少なくとも「含み益を伸ばす」という事を前提とするのであれば『含み益を伸ばせる可能性を判断できるだけの「根拠」と「基準」を定めるべき』というのが私の考えです。

逆に、相応の「根拠」も「基準」も無しにただ漠然と『含み益は伸ばすものだ』と、楽観的に相場を見ているようなやり方では、まず高い確率で、その含み益は「幻の利益」となって消えていく事が常になるはずだからです。

更に言えば「含み益を伸ばせる可能性」を的確に判断できる根拠や基準を作り出せないなら、それは『その先の相場がどうなるのかが全く分からない状況』に他なりません。

仮にそのような状況に至っているなら、その「未知の領域」に入る時点(手前)で利益を確定してしまうべきだと思います。

結局のところ「どうなるのか分からない相場」でポジションを保つ事は、言ってみれば「ただのギャンブル」と変わらないからです。

目の前に「確実な利益」が転がっている状況で、あえて「運」にその後の損益を任せるというのは、少なくとも私は「勝つべくして勝ち続けなければならないトレーダー」における、在るべき賢明な判断とは思えません。

先が読めない、よく分からない状況に至った際に「確実な利益」がそこにあるなら、まずはそれを確定しておくべき、という事です。
 

含み益は本当に伸ばすべきなのか。有効な「利確(決済)ポイント」の考察。まとめ

こうして考察してきた通り、一般的に言われている『含み益は伸ばしてナンボ』という風潮は、ただ漠然とこの事を真に受けるべきではなく、いざ「含み益を伸ばす」のであれば、

『どこまで含み益を伸ばせる可能性があるのかを判断できる相応の基準』

を確立する必要があります。

ただ楽観的に「まだまだ含み益が伸びるだろう(伸びるかもしれない)」と、希望的観測で相場を静観するのは賢明とは言えず、もちろん、それでうまくいく事もあるかもしれませんが、それはただ単に「運がよかっただけ」に過ぎません。

少なくとも「トレード」は運に任せて行うべきものではありませんので、それは「エントリー」の際も「損切り」の際も、そして「利益確定」の際も全く同じです。

全てのルールにおいて、確固たる根拠を前提に相応の「基準(ルール)」を定めなければならないという事です。

そして、その上での『利益確定のルール』と『損切りのルール』は、それぞれのルールに伴う「利益」と「損失」を対比して考える必要があり、この対比バランスが「利益」に偏っているほど、そのトレードルールは多くの利益を生み出せる事になります。

エントリーポイントを定めるルールの精度を可能な限り高めるのは当然として、そこからの長期的な「勝ち負け(損益)」は『利益確定のルール』と『損切りのルール』から生じていく損失と利益の「対比(バランス)」によって決まっていくという事です。

ここで併せて言及する形となった『損切りのルール』については、別途、以下のような記事がありますので、こちらも併せて参考にして頂ければと思います。

>含み損に対する「損切り」の重要性と有効な損切ルールの考察

以上、ここでは含み益に対する有効な「利益確定(利確)のポイント」について言及させて頂きました。

今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、こちらも是非、参考にして頂ければと思います。

>テクニカル分析の本質に基づく「本当に有効なトレードルール」の条件とは。

>テクニカル分析に基づく有効なエントリーポイント(ルール)の考察

>含み損に対する「損切り」の重要性と有効な損切ルールの考察


本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。