テクニカル分析に基づく有効な売買の基準やトレードルール、それに基づくトレードツールを作成していく際などは、必ず『バックテスト』と呼ばれる過去の相場(値動き)に対する有効性の検証を行います。

そもそもテクニカル分析が「過去の値動きの動向から今後の値動きを分析(予測)する事」である以上、これに基づく売買の基準、ルールなどは、過去の値動きから導き出していくしかありません。

そして、いざ導き出した基準やルールを、実際に過去の相場(値動き)を遡る形で検証し、その勝率や収益率などのパフォーマンスを「バックテスト」していくわけです。

ただ、その「バックテスト」におけるパフォーマンス(結果)が上々である事は「必須条件」ではありますが、それは決して「十分条件」ではありません。

仮にバックテストの時点で十分なパフォーマンスを実現できているとしても、それだけでは、その基準やルールが「本当に有効かどうかまでは断定できない」という事です。

事実、バックテスト(=過去の相場を対象とする検証)の結果が上々であったにも関わらず、実際の相場では全くその有効性を発揮できず、大きな損失を出してしまう、といったような状況は、相場の世界では全くもって珍しい話ではありません。

では、何故、バックテストの結果(パフォーマンス)と、実際の相場を対象とする結果(パフォーマンス)が一致しないような状況が生まれてしまうのか。

この講義では、その「要因」を追求していくと共に「バックテストの有効性」および「その検証結果と、それに伴うトレードルールの有効性判断」などについて、考察していきたいと思います。
 

バックテストの検証結果とトレードルールの有効性判断についての考察。

特定の売買基準やトレードルール、それに基づくトレードツールの「バックテスト」を行った際、その時点で十分なパフォーマンスを発揮できないのであれば、それはまず「有効ではない」と考えられます。

つまり、有効性に乏しいトレードルールやトレードツールの判断において言えば「バックテストの結果」は、それのみでも十分な判断材料となるものです。

よって「バックテストの結果が良好である事」が、有効なトレードルール、トレードツールの『必須条件』である事は間違いありません。

ですが、どんなにバックテストの結果が良好でも、実際の相場に対しては、その有効性を発揮できないケースが考えられる以上、それは決して『十分条件』とは言えません。

なぜなら、過去の値動きを対象とする統計的な結果には「偶発的に生じているだけの傾向」が多用な形で入り混じっているからです。

そのような「偶然の結果」を「規則性」と判別した上で確立したようなトレードルールやツールなどでは、まず勝ち続ける事はできません。

本来、テクニカル分析は『心理的な偏りから生じる値動きの傾向や規則性を分析していくもの』であって、それは決して「偶然の傾向」を対象とするものであってはならないものだからです。

ですが、過去の値動きを統計していけば、必然として、そこには「偶発的に生じていく傾向」のようなものが生じていく事になり、それこそが「テクニカル分析の正否」を困難にしています。

つまり、それが「在るべき統計心理的な要因から生じている傾向」なのか、また、とくにそうではない「偶然の傾向」でしかないものなのか。

それによって「その有効性も大きく左右されてしまう」という事になります。

いざ見つけ出した規則性や法則が「それまでの値動きの中で生じていた偶然の傾向」でしかなかった場合、当然、それに基づくルールなどで「勝ち続ける事は出来ない」ということです。

▼ 投資系の情報商材、トレードツールが次々と量産される理由。

とくにネット上で「情報商材」として販売されている投資ノウハウやトレードツールなどは、

「バックテストの結果(=過去の相場に対しての結果)のみで、その有効性を判断するのは危険」

と言わざるを得ません。

そもそもテクニカル分析に基づく売買の基準や、トレードルールは多様なテクニカル指標を組み合わせ、そこに強引な基準やルールを次々と付け加えていけば「過去の値動き」に対しては、いかようにも有効(だった)とされるロジックを作り出せてしまうものだからです。

ですが、過去の値動きに対して「帳尻合わせ」のレベルで強引に作り上げたようなロジックは、極めて高い確率で「偶然」の範囲でしかない値動きの傾向をなぞるものにしかなりません。

だからこそ「情報商材」の大半は、販売ページに掲げているパフォーマンス(過去の相場に対しての結果)と実際の相場を対象とするパフォーマンスが大きく乖離していく傾向にあるわけです。

それこそ新たな情報商材が世に出た時点では、多くのアフィリエイターがそれを取り上げ、多くの購入者がそれを手を出していきますが、その後、月日が経過していくにつれて「実際の相場を対象とする実践結果(検証結果)」にボロが出始めます。

この事は、まさに「過去の値動き」に対する強引な帳尻合わせで、見せかけのロジックを作り上げている事に起因しているということです。

 
何より「情報商材」を売る側(販売者側)は、情報商材の販売行為そのものが「稼ぐための手段」であり、実際に投資やトレードで稼いでいる販売者はほんの一握りに過ぎません。

それこそ「新たなノウハウ」や「新たなツール」を次々と販売していく上では、その時点までの有効性を提唱できるものを、過去の値動きに対する帳尻合わせで作り上げていく方が遥かに効率的です。

そして、そのような情報商材を次々と販売しているような投資系情報商材の販売業者は、ほぼ例外なく、そのノウハウやツールを販売する時点までのパフォーマンスのみを、その販売ページなどで大々的に公開し、それ以降のパフォーマンスにはさほど触れません。

本来であれば「現在進行形のパフォーマンス」を常に公開していく方が、遥かにその信頼性が上がり、販促に結びつくはずなのですが、あえてそのような「公開後(販売後)のパフォーマンスを継続的に公開し続ける事は避ける傾向」にあります。

そのようにして、次から次へと新たなノウハウやツールが量産され、それが「情報商材」という形でインターネット上に出回っているという事です。

テクニカル分析の対象は「偶然の傾向」であってはならない。

よって、テクニカル分析に基づく売買の基準やトレードルールを確立していく際は、少なくとも「強引な帳尻合わせ」のようなやり方で、そういった基準やルールを作り上げるべきではありません。

そのようなやり方で確立できる基準やルール、高い確率で「偶然の傾向」を捉える範囲のものにしかならないからです。

とくに複数のテクニカル指標を併用していく場合などは、多様な指標をあらゆる設定値でいかようにも組み合わせる事が出来るため、おのずとそれは「強引な帳尻合わせに近いロジック」になってしまいます。

ですが、世の中の大多数のトレーダーは、自身が用いるテクニカル指標の理論も理解しないまま、それこそ「バックテストの結果を向上させる事」だけに着目して、ロジックを組み上げているのが実情です。

だからこそ、テクニカル指標を使用する際、そして、それらを併用していく際は、それが「強引な帳尻合わせ」にはならないよう、それぞれの理論に基づく形で合理的な使い方、組み合わせ方を徹底していく必要があるという事です。

テクニカル指標を使用や、それを組み合わせる際の合理性については、別途、以下のようなブログ講座がありますので、是非、こちらも併せて参考にしてください。

>テクニカル指標の組み合わせる事の合理性について。

バックテストとフォワードテスト。

その上で、実際に確立していった売買の基準やトレードルールが「偶発的な傾向」に対する見せかけの有効性を示しているものではない事。

そして、それが「在るべき統計的、心理的な要因から生じていく傾向」を捉える事が出来ている、本当に有効なロジックである事。

その「立証」においては『今後の相場(値動き)においても同様の有効性を確認できるか』を検証した上で判断する必要があります。

いわゆる「フォワードテスト」と呼ばれる『先々の値動きに対する有効性の検証』も十分に行った上で判断する必要があるという事です。

その際の検証期間が長いほど、その有効性の判断も強固なものに出来ますが、バックテストの結果を5年分、10年分と取れている状況において、それに対するフォワードテストの結果が1~2年以上、ほぼ同等であるなら、そのロジックは十分に有効なものと考えられます。

重要なのは『バックテストと同等の結果を実現し続ける事ができるか』であり、それが長期間に渡って再現されていくようなら「在るべき統計的、心理的な傾向を捉えている可能性が高い」と考えて問題ありません。

もちろん、それをほんの数カ月といった短い期間で判断するべきではありませんが、1年以上に渡って同等のパフォーマンスを維持できているなら「偶然の域は十分に超えている」と判断して問題ないはずです。

言い方を変えるなら『例えバックテストでどんなに上々のパフォーマンスを実現できているとしても、そこから1年ほどはフォワードテストを行っていくべき』という事です。

よって、先ほども言及した「情報商材」などにおいては、販売ページなどに公開されている「過去のパフォーマンス」のみを真に受けるのではなく、そのノウハウやツールを提唱している人物や、その販売会社などをしっかりと調査する必要があります。

その上で「そのノウハウやツールを公開した後も継続的なパフォーマンスを公開しているか」を確認した上で、その本当の有効性を判断する必要があるという事です。

バックテストの検証結果とトレードルールの有効性判断についての考察。まとめ。

結論として、バックテストの結果(過去の値動きに対する有効性)は、有効なトレードルールのロジックにおいて『必須条件』ではありますが『十分条件』ではありません。

過去の値動きを対象とする統計的な結果には「偶発的に生じているだけの傾向」が入り混じるため、バックテストの結果のみでは、

・それが統計的な心理傾向から生じている「有効な分析基準」にあたるものか
・偶然の傾向に規則性を見出しただけの「見せかけの分析基準」にあたるものか

これらの的確な判断はできないからです。

ただ、過去から現在にかけての値動きを対象とする形で有効なロジックを作り上げていく関係上、多くのトレーダーは、バックテストの結果が上向くように多様なテクニカル指標を、その帳尻を合わせるように掛け合わせている傾向にあります。

そこへ更に「強引な売買ルール」や「損切り基準」を付け足すなどして「過去の相場に対しては有効だった」とされるトレードルールを言わば無理やり作り上げているわけです。

ですが、そのような帳尻合わせによって作り上げたロジックは「偶然の傾向に帳尻を合わせただけのもの」にしかならないため、当然、そのようなロジックで「勝ち続ける事」はできません。

だからこそ、テクニカル指標を使用する際、そして併用していく際は、それが強引な帳尻合わせにならないよう、それぞれの理論に基づく形で合理的な使い方、組み合わせ方を徹底していく必要があります。

その上で作り上げたロジックに対して、

・バックテスト(過去から現在までの値動きに対する有効性の確認)
・フォワードテスト(現在以降の値動きに対する有効性の確認)

この2つのテストによって、十分な「有効性」そして「再現性」を確認していく必要があるという事です。
 

▼ 有効な投資系情報商材、トレードツールの判断基準。

とくに既に確立されたロジックを有する「情報商材」などを介して手にした投資ノウハウやトレードツールにおいては、

・ロジックの合理性(テクニカル指標の使い方、組み合わせに合理性があるか)
・フォワードテストによる有効性(バックテストと同様の有効性が再現されるか)

この2つを、より徹底して追及するべきであり、ここで挙げた合理性、有効性を有さないものは「バックテストのみに比重を置いて作り上げられたもの」と判断するべきだと思います。

そんな投資関連の情報商材を対象とする「有効性の見極め方」については、別途、以下のようなブログ講座もございますので、是非、併せて参考にしてください。

>有効な投資系情報商材、トレードツールの見極め方

 
以上、本講義ではバックテストの検証結果とトレードルールの有効性判断について考察させて頂きました。

今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、併せて参考にして頂ければと思います。


>テクニカル分析の本質に基づく「本当に有効なトレードルール」の条件とは。

>テクニカル指標の使い方と「理論」「計算式」の関係性について

>テクニカル指標の組み合わせる事の合理性について。

>有効な投資系情報商材、トレードツールの見極め方


本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。