テクニカル分析には「だまし」が付き物と言われています。
この「だまし」というのは、テクニカル分析において一般的に言われている『傾向(セオリー)に反する値動き』の事を言いますが、このような値動きに翻弄されているトレーダーは決して少なくありません。
むしろ、多くのトレーダーは「テクニカル分析のセオリーに沿った売買を行おうとする傾向」にあるため、そのようなトレーダーが実際に負けているのは、この「だまし」に遭遇した時に他ならないわけです。
ただ、相場における値動きを
・テクニカル分析のセオリーに沿った値動き ・テクニカル分析のセオリーに反した値動き |
に大別するなら、ここで言う「だまし」に該当する相場を事前に察知し、回避していくことが出来れば「トレードで勝ち続ける事」が十分に可能となります。
もちろん「テクニカル分析のセオリー」に該当するものは1つではありませんが「相場がそのセオリーに沿って動くか否か」が、二者択一である事に変わりはありません。
つまり「特定のセオリー」に目星をつけた上で、
・その「テクニカル分析のセオリー」の対象条件を満たした相場
・その条件を満たしたものの「だまし」となる可能性が高い相場
これらを高い精度で事前に判別する事ができれば、トレードで「負ける事」はなくなり、そして「勝ち続ける事が可能になる」という事です。
その上で、テクニカル分析におけるセオリーを無視した「だまし」に該当するような相場を回避していくには、どうすればいいのか。
ここでは、そんな「テクニカル分析におけるダマシ相場を回避する方法」を言及していきたいと思います。
テクニカル分析における「だまし相場」の回避に有効な方法。
テクニカル分析で用いる「テクニカル指標」においては、
「この指標がこのような条件を満たした時、相場はこのように動く可能性が高くなる」
このような「セオリー」にあたる『値動きの法則』や『傾向』が提唱されています。
有名どころで言えば「移動平均線」による、
・ゴールデンクロスとデッドクロス ・グランヒルの法則 |
などであり、これらがまさにテクニカル分析で言うところの「セオリー」に該当するものです。
ですが、相場が常にテクニカル分析のセオリー通りに動くはずはなく、それこそ「常に相場がセオリー通りに動く」というなら、この世界で「負ける人」などいなくなるはずです。
よって「テクニカル分析のセオリーに反した値動きがある事」については、多くのトレーダーがその事を認識した上で、その「対策」を前提にテクニカル分析を行っています。
その中で、そのようなトレーダーの多くが行っている「だまし相場の回避策」は『別のテクニカル指標を組み合わせる(併用する)』という方法であり、
・自らが拠り所にしているセオリーに沿った値動きとなっていく相場 → セオリーに沿った売買を行っても良い時 ・そのセオリーに反した値動きとなっていく可能性が高いだまし相場 → セオリーに沿った売買を行うべきではない時 |
これらを、その「セオリー」とは無関係なテクニカル指標によって判断している傾向にあります。
一般的には「単一の指標のみに頼る形では、だましに遭う事が多くなる」と言われているため、指標を組み合わせて使う事が多くのトレーダーにとっての「当たり前の対策」になっているわけです。
ここで言う「だまし相場」を除外するための『フィルター』となる基準を、別のテクニカル指標によって作り出し、トレードの精度や勝率を高めるという方法が、一般的な対策になっているという事です。
テクニカル指標のフィルタリング対策における弊害。
ただ、実際に多くのトレーダーが行っている「セオリーとは無関係なテクニカル指標を用いるフィルタリング対策」は、上手くいかないトレーダーの方が多い傾向にあります。
その理由は、その「フィルタリング条件」を、過去の相場の値動きに対して強引にこじつけてしまっているトレーダーが多い傾向にあるからです。
そもそも「テクニカル指標」と呼ばれるものは、ありとあらゆる指標が多岐に渡って存在するため、
「このような条件に該当する相場をトレード対象から除外したい」
と考えた場合、その「フィルタリング条件を満たすテクニカル指標」を見つけ出す事は何ら難しい事ではありません。
そのような流れで、テクニカル指標を次々と組み合わせていけば「フィルタリングの対象にしたい相場」は、実質的にいくらでも除外できてしまいます。
要するに「過去の相場を対象とする前提」であれば、その中で生じた『セオリーに反するだまし相場』を、次々とフィルタリングの対象にして除外していく事ができるわけです。
そのようにして、次々とフィルタリングの条件を付けくわえていけば、当然、過去の相場に対しては申し分のない勝率とパフォーマンスを実現できるトレードルールが出来上がります。
ですが、そのような形で作り出したトレードルールは「過去の値動きに対して強引なトレードルールをこじつけているだけ」に過ぎないものです。
結果として、過去の値動きの中で生じていた『セオリーに反するだまし相場』を全面的に回避できるトレードルールを作り出せているとしても、それがただの「こじつけ」では何の意味もありません。
そのような「フィルタリングルール」は、結局のところ『過去の相場』の中で生じた「だまし相場」における氷山の一角、言わば、その「断片」のみを『強引なルール』で除外したに過ぎないからです。
氷山の一角、その断片のみを強引に除外しても「勝ち続ける事」はできない。
そもそも「テクニカル分析」の本質は、値動きに対する投資家達、トレーダー達の「買いの心理」「売りの心理」の偏りを分析していく事にあります。
そして、そのような投資家心理の傾向から生じる売り買いの偏りや規則性を統計的な視点などから数値化および指標化しているものが「テクニカル指標」にあたるわけです。
つまり、テクニカル指標において提唱されている「セオリー」にあたるものは、その指標における「理論」や「統計」に基づく相場傾向に他なりません。
対して、そのセオリーに反するような「だまし相場」にも、やはり何らかの「背景的要因」があるはずであり、その要因は以下の2つに大別できると思います。
・テクニカルとは無関係なファンダメンタル要因に基づく売買によって生じたもの
・別のテクニカル要因に基づく売買によって生じたもの
相場内における売買の全てが、必ずしもテクニカル分析に紐付けられるわけではなく、相場内にはテクニカルとは無関係な「ファンダメンタル要因に基づく売買」も常に行われています。
状況によっては、そのようなファンダメンタルに基づく売買の比重が高い場合もあり、そのような相場では、実質的にテクニカル分析の有効性は薄れてしまうわけです。
よって、このような「ファンダメンタル要因に基づく売買の傾向」や「それに基づく値動き」をテクニカル分析で的確に捉える事は「難しい」と思います。
それこそ、「テクニカル分析におけるあらゆるセオリーが完全に無視されているような相場」が、まさに「ファンダメンタルに基づく売買で動いている相場」と言るかもしれません。 |
対して、その「だまし相場」が『何らかのテクニカル要因に基づくる売買によって生じたもの』であれば、それは当然、テクニカル分析によって予測し、そして、回避する事ができると考えられます。
つまり、その「だまし相場」が何らかのテクニカル分析に基づくものである場合に限り「テクニカル指標によるフィルタリング対策」によって回避する事が可能と考えられるわけです。
そして、そのような『テクニカル分析に基づくダマシ相場』は、一定の条件を満たす相場状況において「度々、再現され続ける可能性が高いもの」と考えられます。
そのダマシ相場においても「理論」や「統計」に基づく何らかの傾向が「存在する」という事です。
よって、ここで言う「フィルタリング対策」によって行うべき事は『ダマシ相場の傾向や規則性を導き出し、その条件を満たす相場をフィルタリングしていく事』に他なりません。
ですが、多くのトレーダーは「だまし」に該当するような相場を、単発的に捉え、それを何らかのテクニカル指標のフィルタリング(条件付け)によって強引に除外していくような事を平然と行っています。
そのような「こじつけ行為」では、まず『然るべきフィルタリング対策は行えない』という事です。
だまし相場の「セオリー(傾向)」を導き出す。
よって「だまし」に該当する相場を本当の意味で「回避」していくには、そのような「だまし相場」を『俯瞰』で捉え、そこに共通する傾向や規則性を見つけ出していく必要があります。
その際、何らかの「テクニカル指標」を用いて、その傾向を的確に分析し、予測できれば「そのフィルタリング対策は万全」という事になるわけです。
ですが、そのような「だまし相場の傾向」は、必ずしも主となるテクニカル指標とは異なる別の指標を用いる形でなければ導き出せないものではありません。
そもそも「特定のテクニカル指標」に対しての『だまし相場の傾向』は、その指標によるチャート分析をあらゆる角度から突き詰めて追及する事でも十分に導き出せるものだからです。
むしろ、別のテクニカル指標を用いる事で行えるフィルタリング対策では、そのテクニカル指標に基づく値動き(だまし相場)をフィルタリングする事しかできません。
そのため、より有効なフィルタリング対策を講じていくためには、次から次へとまた別のテクニカル指標を組み合わせて、フィルタリングを重ねていく必要があります。
ですが、そのようなフィルタリング対策を前提に複数のテクニカル指標を組み合わせていくほど、
・トレードにおける判断基準がどんどん複雑化してしまう。
・セオリー通りに動く相場もフィルタリングの対象にしてしまう。
といった弊害が生じてしまうのが実情です。
そのような点も含めて、特定のテクニカル指標における「セオリーに沿わないダマシ相場の傾向分析」は、下手に複数のテクニカル指標を組み合わせていくよりも、
「特定の指標のみによるチャート分析をあらゆる角度から徹底的に追及する方が合理的」 というのが私の考えです。 |
また、ここで言うような「指標のセオリーに沿わないだまし相場」は、必ずしも、それを事前に察知しなければ「勝てない」というわけでもありません。
いざ、そのような相場でポジションを建ててしまっても、早い段階で「今後の値動きがセオリーに沿わないものになる可能性が高い」と判断する事が出来れば、それで十分な対策を建てられるからです。
少なくとも、その時点ですぐにポジションを解消してしまえば、その売買における損失は最小限に押さえる事ができます。
あとは、それ以上のリターンを生み出す事が出来れば問題はないわけですから、いわゆる「損切りのルール(基準)」による対策でも、十分に『稼げるトレードルール』は確立できるという事です。
テクニカル分析の「だまし対策」まとめ
以上の通り、テクニカル分析における「だまし相場」への対策は実質的に、
・フィルタリングルールの確立(だまし相場を事前に察知する分析基準の確立)
・ロスカットルールの確立(エントリー後の早期判断に伴う損切り基準の確立)
この2つの方法があり、理想は、この両方によってエントリー時点の回避率を高める対策と共に、エントリー後の損失を押さえる対策も取っていく事ではないかと思います。
その上で、多くのトレーダーは、それぞれの基準の確立において「複数のテクニカル指標を組み合わせていく」という方法を用いています。
ですが、先立って言及した通り、テクニカル指標によるフィルタリングは、そのテクニカル指標に基づくダマシ相場しかフィルタリングする事ができません。 よって、より高い有効性を追求する限り、幾つかの指標を組み合わせていく必要があり、その1つ1つにおいて有効なフィルタリング基準を追求し、検証を重ねていく必要性も生じてきます。 そこで、多くのトレーダーは「こじつけ」に近い安易な組み合わせ方をしてしまい、結果的に「有効性の薄いトレードルール」を作り上げてしまっているわけです。
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以上、今回は『テクニカル分析における「だまし相場」を回避するための対策』について、言及させて頂きました。
今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、併せて参考にして頂ければと思います。
>有効なテクニカル分析と無意味なテクニカル分析の決定的な違い
>テクニカル指標の使い方と「理論」「計算式」の関係性について
>テクニカル指標の「有効な組み合わせ」を導き出す原則について
>テクニカル分析に基づく有効なエントリーポイント(ルール)の考察。
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。