私自身、ビットコインのFX(ビットコインの証拠金取引)をメインに行っているのは、

・ビットコインの相場が最もテクニカル分析通りに動く傾向にある
・スプレッド、取引手数料、取引時間などの取引条件が有利

といった理由があり、第3者に自らのトレードノウハウを指南する場合も、基本的には『ビットコインのFXを対象とする事』を推奨しています。

結局のところ、ビットコインのFXが最も稼ぎやすいからです。

ビットコインの相場が「テクニカル分析通りに動く理由」や、BTC-FXの株や為替のFXと比較した取引条件の優位性などは以下の記事で詳しく解説しています。

>ビットコインの相場が投機(トレード)において有利な理由

ただ、これまで為替相場を対象とするFXをメインに行っていたようなトレード経験者からすると、ビットコインのFXは、為替のFXと勝手が異なる部分も少なくありません。

その中で、為替FXのトレーダーがとくに戸惑う傾向にあるのは「現物」と「FX」の相場レートに乖離が生じている点です。

そもそも、為替相場を対象とするFXを行っていく上で「現物レート」と「FXレート」を別モノとして捉えるような事はまずありません。

ですが、ビットコインのFXを行っていく上では、現物のレートとFXのレートは「別モノ」と捉えた上でトレードを行っていく必要があります。

そして、そのような「現物」と「FX」の価格レートの乖離現象が、為替FXのトレーダー目線では「戸惑いの原因」となるわけです。

そこで、その「戸惑いの原因」を解消できるように、ここでは『ビットコインにおける現物レートとFXレートに乖離が生じる理由』を考察していきたいと思います。
 

ビットコインの現物レートとFXレートに「乖離」が生じる理由。

例えば以下は国内の大手取引所「bitFlyer」における、

・2021年1月26日のBTC/JPY(現物取引)チャート
・2021年1月26日のBTC-FX/JPY(証拠金取引)チャート

であり、それぞれの同日、同時刻の取引価格(レート)になります。

BTC/JPY(ビットコイン現物取引レート):3,493,040円

BTC-FX/JPY(ビットコインFX取引レート):3,609,971円

これらを見て一目瞭然の通り、同じ取引所内のビットコインの現物レートとFXレートが、すでに10万円以上、乖離しているのが分かると思います。

このように、ビットコインには「現物の取引チャート」における「現物レート」と共に「FX(証拠金取引)の取引チャート」における「FXレート」が存在するという事です。

現物の取引チャートは、文字通り、ビットコインの「現物」を取引(売買)しているチャートで、ここでは、実際にビットコインを「保有している人」「保有したい人」が売買を行っています。

数量に「限り」があるとされているビットコインの「現物」が、この「現物市場」で実際に取引(売買)されているわけです。

対して、FXチャートは「証拠金取引」による取引レートが表示されているチャートであり、証拠金取引はあくまでも「証拠金による仮想売買」で、その決済金額のみがやりとりされています。

つまり、ビットコインのFX(証拠金取引)では『実際のビットコイン(現物)は一切やりとりされていない』という事です。

よって、ビットコインの現物取引をしている人達のお金のやりとりと、FX(証拠金取引)を行っている人達のお金のやりとりは、根本的に「別モノ」という事になります。

ビットコインの現物市場 = 実際にビットコインの現物売買を行っている人達の市場
ビットコインのFX市場 = ビットコインの証拠金取引による仮想売買を行っている人達の市場

この2つの市場は「値動き」は連動する形になるものの『市場そのもの』や『お金の流れ』は根本的に「別モノ」という事です。
 

ビットコインの「現物市場」と「FX市場」は全くの別モノ。

このような「現物取引」と「FX(証拠金取引)」の違いは、為替相場も同様であり、為替相場の「現物取引(現物相場)」は『直物取引(直別為替相場)』と呼ぶのが一般的かもしれません。

ただ、為替相場においては「インターバンク市場」と呼ばれる金融機関、銀行などの取引市場の取引レートが実質的な「為替レート」となるため、言わば「基軸となるレート」が常に存在しています。

故に、現物取引(直物取引)FX(証拠金取引)どちらにおいても、その取引レートは、その「基軸レート」が基準となるため、それぞれの取引レートがそこまで大きく乖離する事もないという事です。

FXの取引会社ごとに取引が行われているため、取引会社ごとにわずかな差が生じる事もありますが、インターバンク市場の基軸レートが存在する以上、そのようなレート差もすぐに調整されるという事です。

対して、ビットコインの市場は、為替相場のような「インターバンク市場」が存在するわけではないため、その「基軸レート」にあたるものも存在しません。

各取引所ごとに行われた最終的な取引レートが「その取引所における現在レート」となるため、ビットコインの取引レート(現在レート)は取引所ごとで常にバラつきが生じる事になります。

そして、それは同じ取引所内の「現物取引」と「証拠金取引」でも同じであり、その市場内で行われた最終的な取引レートが、その時点の「現在レート」となります。

結果として、その取引状況に差が生じていけば、先ほど例に挙げた「bitFlyer」のように『現物レートとFXレートに大きな乖離が生じてしまう形になる』という事です。

▼ ビットコインの取引レートが「ある程度」は一律される理由

例えば、取引所Aのビットコインの取引レートと取引所Bのビットコインの取引レートに大きな差が生じれば「そのレート差を狙った売買」が行われていく事になります。

レートが安い取引所のビットコインは「買われる形」となり、レートが安い取引所ではビットコインが「売られる形」になるという事です。

そのため、ビットコインの各取引所の取引レートは、そこに差が生じても、時間の経過と共に「ある程度」は一定した金額になっていくわけです。

そのような取引所間のレート差を狙った売買を「裁定取引(アービトラージ)」と呼ばれ、それを専門に行っているトレーダーや、その自動売買を行うツールなども存在します。

ただ、ビットコインを始めとする仮想通貨は数秒単位でも大きな値動きの変動があるため、その「裁定取引」にも相応のリスクがあると言われています。

ビットコインの裁定取引で稼ぐには、かなり精密な取引を徹底し続ける必要があるという事です。

2021年現在「現物レート」よりも「FXレート」が高い理由。

とは言え「証拠金取引(FX)の取引(売買)」は、原則的には「現物レートの変動に準じる形」で行われていきます。

市場そのものや、お金の流れは別モノでも、その取引(売買)の前提となっているものは、あくまでも「ビットコインの取引レート」に他ならないからです。

よって、現物レートが下がれば、FXのレートも下がり、また、現物のレートが上げれば、FXのレートも上がり、これが真逆の値動きになってしまう事は、基本的にありえません。

そんな中で、2021年現在の時点で現物のレートとFXのレートで、

・BTC/JPY(ビットコイン現物取引レート):3,493,040円
・BTC-FX/JPY(ビットコインFX取引レート):3,609,971円

上記のような「10万円以上のレート差」があり、FXのレートが高値を付けているのは、

・FX特有のレバレッジ取引が「強気相場」に拍車をかけている
・FX特有の強制決済による過剰な値動きが「高値」を引き上げている

このような2つの要因が関係していると考えられます。

乖離要因1:FX特有のレバレッジ取引が「強気相場」に拍車をかけている

FXの取引では、現物取引では行わない「レバレッジ倍率を乗じた取引」が行えるため、全てのFXトレーダーがその分だけ大きな金額の取引注文を出しています。

例えばビットコイン1枚のレートが400万円の時、400万円の資金で買う事ができるビットコインの現物は「1枚のみ」で、それ以上の売買はできません。

ですが、その400万円を「証拠金」としてFXを行う場合は、そこにレバレッジを用いて、2倍、3倍の金額に相当するビットコインの買い注文、売り注文を出していく事ができます。

結果として、相場が上昇傾向にある状況では「買い注文」が強気傾向になるため、それがレートを押し上げる形になっていくという事です。

乖離要因2:FX特有の強制決済による過剰な値動きが「高値」を引き上げている

また「レバレッジ」を用いた取引を行えるFXにおいては、一定の証拠金維持率を下回った時点で「ポジションの強制決済(強制ロスカット)」が行われる仕組みになっています。

その上で、2020年から2021年にかけてのビットコインの相場は、300万円代、400万円代と、過去の最高値を次々と更新していく相場が続いていました。

このような相場であれば『強制的に解消されたであろう売りポジションが相当数存在する』と考えてまず間違いありません。

ここで言う「売りポジションの強制解消」は、実質的に『強制的な買い注文の発生』となるため、これもレートを押し上げる要因の1つになっているという事です。
 

ビットコインの現物レートとFXレートに「乖離」が生じる理由。総括

つまり、FXの市場には、現物取引の市場には存在しない、

・レバレッジを用いた過剰な強気注文
・相場の方向に準じた強制決済による追い風注文

これらによって「強いトレンドが生じている方向」へ、レートが乖離していく傾向にあります。

現に2018年~2019年あたりのビットコインが大きな下降トレンドに入っていた時期は、やはりFXレートが現物レートを下回り、マイナス方向に乖離が生じていました。

そのような時期の乖離状況も、ここで言及した乖離要因の十分な裏付けになっているという事です。

▼ bitFlyerの「現物レート」と「証拠金レート」の乖離対策

ただ、ビットコインのFXレートが、現物レートとあまりにも掛け離れ過ぎてしまうと、どんなに値動きが連動していても、その「変動幅の予測」などが困難になってしまいます。

そこで「bitFlyer」は『SFD』という「乖離率の調整を担う手数料」を徴収する形で、乖離方向の注文を抑制する仕組みを導入しています。

一定の比率以上、FXレートが現物レートよりも高値となった場合は買い注文の約定に対してのみ手数料を課し、安値となった場合は売り注文の約定に対してのみ手数料が課されるという事です。

以上、本講義では『ビットコインにおける現物レートとFXレートに乖離が生じる理由』について言及させて頂きました。

その上で、ビットコインFXにおける実際の「トレード」において、現物レートとFXレートの乖離をどう攻略していくべきなのか。

その具体的なトレードにおける視点、対策などについては、以下の講義の方で言及していますので、こちらも併せて参考にして頂ければと思います。

ビットコインFXの取引、チャート分析は現物価格との乖離に注意

本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。