為替相場を対象とするFXトレードなどにおいては、いわゆる『レバレッジ』をかけた取引を行う事が、当たり前になっている傾向にあります。

例えば「株の売買」を主としているような人であれば、いわゆる「現物取引」が行っている人が大半なのに対して「為替(外貨)」を対象とする形で「現物」の売買を行っているような人は、あまりいません。

その上で、実際に「レバレッジ取引」を行っているような人は、その「理屈の上」では「レバレッジのリスク」を、しっかりと理解しているつもりでいます。

『レバレッジをかけた分だけ、リターン(利益)も大きくなる半面、リスク(損失)も大きくなる。』

これくらいの理解は当然の範囲として、レバレッジをかける事で、場合によっては資金がショート(いわゆるロスカット)する可能性がある事も重々、分かっていると思います。

ですが、これはあくまでも「表面的なリスクを表面的に認識している」というのが実情で、実際にレバレッジ取引を行っているトレーダーの大多数は、その「本当のリスク」を認識できていません。

そこで今回は、FXトレードにおける『レバレッジ』について、その「本当のリスク」を具体的に言及してみたいと思います。

多くのFXトレーダーが負けてしまう要因、勝てない要因には、ここで言及する『レバレッジの本当のリスクを認識できていない事』が、大きな要因の1つになっていると考えられます。

よって、これは『FXにおける大きな敗因の1つを取り除ける講義』になっているはずです。

レバレッジを用いたトレードで負けた事がある場合や、現在進行形でレバレッジを用いたトレードを行っているようなら、是非、最後までお付き合いください。

レバレッジの真実と、その「本当のリスク」について。

相場(投資、トレード)においては『大多数の人が負けている(勝てていない)』と言われています。

ただ、実際に負けている人(損をしている人)の絶対数を比較した場合、為替相場のFXトレードで損をしている人の金額や人数は、株の売買で損をしている人の金額、人数の比ではありません。

言うまでもなく、これは圧倒的に「為替相場を対象とするFXトレードで損をしている人」の方が、金額の上でも、人数の上でも、圧倒的に多いと考えられます。

そして、その要因は他でもなく、今回の題材である「レバレッジ(レバレッジを用いた取引)」に起因するものです。

例えば、実際にFXで損をした事がある人、FXで実際に負けている人に対して、このような質問を投げかけてみたとします。

『もしもレバレッジを一切使わずに取引をしていたら、あなたの資金、損益はどうなっていますか?』

この「問い」に対する「答え」は、大多数の人が『今よりも間違いなく、多くの資金を手元に残す事が出来ていた』というものになるはずです。

過去に、強制決済(ロスカットルール)によって、過去に一度でもポジションを強制的に解消され、多くの資金を失った事がある。

このような人が仮に「レバレッジ」を使わずに取引をしていたなら、その「大負け」は『無かった事』になるはずです。

為替相場は各国の通貨価値が長期的に見ても「数十円単位の幅」で変動している範囲のため、レバレッジでポジションを建てる事をしていなければ、ポジションを強制的に清算されるような事はまずありえないからです。

この事からも、FXトレードで大きな損失を被った人や、大きく負けてしまった人の大多数は「レバレッジを用いた取引を行っていた事が大きな敗因の1つになっている可能性が高い」という事です。
 

何故、レバレッジを用いた取引そのものが「敗因」となるのか。

そもそも『レバレッジ』は、リスクとリターンを同じだけ引き上げるものであり、一見は、それ自体が勝ち負けそのものの要因になっているとは思えないものかもしれません。

ですが、これが結局のところ「決定的な敗因になっている」のが実情であり、実際にレバレッジが要因で負けている人ほど、その事に気付いていない傾向にあります。

以下、その具体例として「勝率」と「リターン率」を水準化したトレードルールを前提に、そこにレバレッジを用いた場合の結果(勝ち負け)を考察してみます。

↓↓↓

60%の確率で資金が10%増える
40%の確率で資金を10%失う

例えば、このような勝率とリターン率を実現できるトレードルールを確立していた場合、同じリターン率に対して勝率の方が高い以上、これが「有効なトレードルールである事」は一目瞭然かと思います。

よって、このトレードルールを用いて長期的にトレードを行っていけば「理論上」は、着実に資金が増えていく事になるはずです。

その上で、このトレードルールに対してレバレッジを用いて売買を行っていく場合の「リスク」と「リターン」は、以下のような計算式で算出できる事になります。

↓↓↓

60%の確率で資金が【10% × レバレッジ倍率分】増える
40%の確率で資金を【10% × レバレッジ倍率分】失う

この計算式を踏まえて、実際のトレードに用いるレバレッジ倍率に応じた、その「リスク」と「リターン」の比率は以下のようになっていきます。

↓↓↓

(レバレッジ2倍)
60%の確率で資金が20%増える
40%の確率で資金の20%を失う

(レバレッジ5倍)
60%の確率で資金が50%増える
40%の確率で資金の50%を失う

(レバレッジ10倍)
60%の確率で資金が100%増える
40%の確率で資金の100%を失う

上記におけるレバレッジ10倍の領域は『60%の確率で資金が2倍になるが、40%の確率で資金の全てを失う』という事を意味しています。

その勝率、リターン率がどんなに高くても「資金の全てを失うリスクが4割」という時点で、もはや、そのトレードルールは『破綻している』と言わざるを得ません。

投資、トレードの世界では、どんなに大きなリターンを実現できていても、資金の全てを失うような状況に陥った時点で、それまでのリターンは全て「水の泡」となってしまうものだからです。
 

▼ 実際のトレードにおける「確率(勝率)の偏り」について

また、ここで挙げた「勝率」や「リターン率」はあくまでも水準的な数字を統計的に算出できるものであって、実際の10回分のトレード、100回分のトレードで、これらがそのままの数字で再現されるとは限りません。

このような数字は、あくまでも「トレードの回数を数千回、数万回と重ねていくほど、その水準に近づく」というものであって、その母数が少なければ、勝ち負けが「偏る時」も当然、ありえます。

よって、ここで例に挙げたような「60%の勝率で資金が10%増えるトレードルール」であれば、

・10個のうちの6つがあたりクジ、4つがはずれクジ
・当たりが出れば資金が10%増えて、はずれが出れば同じ比率で掛け金が減る
 ※引いたクジは次のクジを引く前にもとに戻す

このようなクジを引き続ける事と理論上は同じであり、このような「クジ引き」の理論上の確率(勝率)は、どう転んでも揺るぎようが無いものです。

ですが、このような条件のクジ引きであっても10連続、100連続と「はずれクジ」を引く可能性は決して「ゼロ」ではありません。

クジを引く箱の中には間違いなく「6つの当たりクジ」と「4つの外れクジ」が常に入っているような状況にあったとしても『実際の勝率は運に左右されてしまう余地がある』という事です。

また、ここで言及した事は『より有効性の高いトレードルール』においても、同じ理屈が成り立ちます。

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90%の確率で資金が20%増える
10%の確率で資金の10%を失う

ここまでの「9割の勝率」で「リスクに対して2倍のリターン」を実現できるような『圧倒的に有効なトレードルール』であっても、レバレッジの倍率を「10倍」にすると、

↓↓↓

90%の確率で資金が200%増える(資金が4倍になる)
10%の確率で資金の100%を失う(資金の全てを失う)

このように、やはり10回に1回の確率で資金の全てを失ってしまうリスクが生じてしまう事になります。

仮にこのトレードルールで資金をどんなに増やす事が出来たとしても『一度でも負けの目が出た時点で稼いできた資金の全てを失ってしまう』という事です。

実際に「負けている人」ほど、この『リスク』を認識できていません。

レバレッジはリスクとリターンを相乗させますから、利益比率が上がる分『損失比率』もそのまま引き上げてしまう事になります。

故に、勝率とリターン率の条件的には、間違いなく「有効なトレードルール」であっても、レバレッジのかけ方によっては「資金の全てを失うリスク」を平然と背負ってしまう可能性があるわけです。

投資、トレードにおいて「運用資金の全てを失う事」は、もはや完全な「負け」を意味しますので、そのような状況はどうあっても避けなければなりません。

ですが、ここで具体例を挙げた通り「レバレッジの利用」は、実質的に「リスク(資金の全てを失う可能性)」の方を各段に高めてしまう事になります。

表面的に見れば、同じ倍率でリスクとリターンを引き上げているようでも、実質的な「勝ち負け」の観点で見れば、明らかな形で「負ける確率だけを高めてしまっている」わけです。

よって、少なくともここで例に挙げた勝率、リターン率を遥かに超えるレベルの『圧倒的に有効なトレードルール』でもなければ、レバレッジを有効に活用する事など、到底できる事ではありません。

にも拘わらず、大多数の人は、ろくに有効なトレードルールを確立する事も出来ていない状況で「レバレッジ」を用いた無謀なトレードを平然と行っている傾向にあるという事です。

▼ レバレッジの利用、その倍率の「決め手」となるもの

とくに「レバレッジ」を有効利用していく上では「勝率」や「リターン率」よりも『リスクの範囲が極めて重要なポイント』となります。

まず何を差し置いてでも重要となるのは「資金をショートさせない事」である以上は『そのトレードルールがどこまでのリスク(損失比率)を前提とするものなのか』を把握する必要があるという事です。

その「リスクの前提(範囲)」が分かれば、どれくらいのレバレッジ倍率がセーフティゾーンであり、また、どれくらいのレバレッジ倍率が危険ゾーンなのかが分かります。

そのセーフティゾーンと危険ゾーンの分岐点を把握できて初めて、自らのトレードルールに適したレバレッジ倍率を算出できるわけです。

また、実際にトレードを行っていく上では、先ほど「クジ引き」を例に挙げて言及した「確率(勝率)の偏り」も、併せて視野に入れなければなりません。

その「確率の偏り」が、どんなに最悪の形で現れたとしても、決して資金をショートさせる事なく、長期的な視点でプラス収支を生み出し続ける事が出来るのかどうか。

そこまでの算段をしっかりと建てた上で、レバレッジの利用、および、その倍率を判断する必要があるという事です。

少なくとも、先ほど「具体例」として挙げていった、

60%の確率で資金が10%増える
40%の確率で資金を10%失う
90%の確率で資金が20%増える
10%の確率で資金の10%失う

このような有効なトレードルールであれば、下手にレバレッジを利用せず、いわゆる「現物取引」の範囲で売買(トレード)を行っていけば、着実に資金を増やしていく事が出来るはずです。

逆に、このような有効なトレードルールを確立している人が「負ける(資金の全てを失う)」とすれば、それはやはり『レバレッジを使っていた事』が決定的な敗因となっているわけです。
 

レバレッジの真実と、その「本当のリスク」について。総括

結論として、投資、トレードにおける『レバレッジ』は、勝率、及びリスクに対するリターン率が格段に高い「極めて有効なトレードルール」を確立できていない限り、そもそも利用するべきではありません。

勝率、リターン率、共に「ある程度は有効」と言えるトレードルールであっても、先ほどの事例の通り、レバレッジの利用は致命的なリスクのみを増幅させてしまうのが現実だからです。

もちろん、その使い方次第という側面が無いわけではありませんが、いずれにしても「十分に有効性の高いトレードルール」が前提となっていなければ『レバレッジこそが致命的な敗因になってしまいかねない』という事です。

▼ 成功者ほど「レバレッジ取引」を避けている?

そもそも「レバレッジを利用できるほど有効性の高いトレードルールの確立」は決して容易な事ではありません。

それこそ「投資」で最も成功している投資家は、アメリカの投資家、ウォーレン・バフェットなどがその筆頭に挙げられると思いますが、ウォーレン・バフェットは『米国株の現物売買によって財を成した』と言われています。


つまり、投資の世界で最も成功している投資家はレバレッジを用いた売買を全く行っていないという事です。

また、日本国内では「BNF」というハンドルネームで知られる有名なトレーダーがいますが、彼の「150万円ほどの自己資金を5年ほどで200憶円以上にした実績」も『株式投資の現物売買のみによるもの』と当の本人が明言しています。


そんな彼等の「売買の基準」が極めて有効なものである事は、あえて言及するまでもありません。

その上で『レバレッジを使っていない』という現実は、彼等のようなトップクラスの投資家、トレーダーでも「レバレッジ取引はリスクの方が高い」と判断している事を物語っていると思います。

そして、ここで名前を挙げた両名は、いずれも投資、トレードを始めた当初の資金は100万~200万円ほどと言われているため、そこまでの「多額の資金」を元手にしていたわけでもありません。

つまり、世界的な投資家も国内の有名トレーダーも『レバレッジを一切用いる事なく圧倒的なパフォーマンスを実現している』という事です。

投資、トレードの世界の鉄則は「とにかく負けない事」と言われている通り、成功している投資家、トレーダーほど、それを徹底している傾向にあります。

そして「とにかく負けない事」を徹底する上では、レバレッジを用いた売買は「避ける事」が賢明であり、まさに彼等はこの事を圧倒的な実績と共に「実証している」という事です。

現に多額の損失を生んでしまったトレーダーの多くが「レバレッジをかけていなければ・・・」という状況にある以上、レバレッジこそがFXトレーダーを破綻に導いている大きな要因の1つに他なりません。

ただ、これは当然と言えば当然であり、世の中の多くトレーダーが、ここで例に挙げたような数学的な確率論から「負けて当然のトレード(破綻して当然のトレード)を行っている」のが実情です。

故に「レバレッジ」は十分に有効なトレードルールを確立した上で、その勝率、リターン率はもとより、大前提となる「リスクの範囲」を把握した上で、その利用、及び倍率を判断する必要があるという事です。

私自身、自らが確立しているトレードルールにおいては「レバレッジの利用」を前提としていますが、そのレバレッジ倍率などは、まさにここで言及してきた「資金ショートのリスク」と「確率の偏り」を十分に配慮した上で設定しています。

少なくとも、私がそれだけの「十分な勝率」と「リターン率」を実現できる、有効なトレードルールを確立できている事は、ツイッターなどを介して行っている「公開トレードの実績」などでご確認いただけるはずです。

>Twitterによる公開トレードの勝率、パフォーマンス一覧

以上、本講義では『レバレッジにおける本当のリスク』について言及させて頂きました。

ちなみに今回のテーマは、冒頭でも言及した通り、多くの人がFXトレードで負けている要因、勝てない要因の1つを言及したものであり、私はこれ以外にも「多くの人がトレードで勝てない要因」となっているものが大きく分けて2つあると考えています。

この「レバレッジのリスク」を、いわゆる『数学的な要因(敗因)』とするなら、これとは別の敗因は、

・精神的要因
・技術的要因

この2つに分類できると考えていますので、よろしければ、以下の講義も併せて参照してください。

>多くの人が投資、トレードで負けてしまう3つの理由


本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。