FXやトレードにおける「テクニカル分析」の勉強をしていくと、まず間違いなく一度は目にする事になる『ダウ理論』という、相場の値動きにおける「理論」があります。
あくまでも「理論」の1つですから、しっかりと理解しているトレーダー、名前くらいしか知らないというトレーダー、その理解度は人それぞれかもしれません。
ですが、1つ確実に言える事は「テクニカル分析」を行っているトレーダーはの多くは「実質的にダウ理論に沿った値動きの予測や売買を行っている」と考えられます。
例えば、多くのトレーダーが「テクニカル分析」に用いている、
・移動平均線などを始めとする「平均」の値を用いるインジケーター ・高値、安値を捉える水平線や相場の方向や傾向を捉えるトレンドライン |
これらの指標は、全般的に『ダウ理論がその根底にある』と言っても過言ではないからです。
よって、実際に「平均の値を用いるインジケーター」「高値・安値ライン」「トレンドライン」などを用いたトレードを行っているなら、その根底にある理論(ダウ理論)を理解しておくに越した事はありません。
また、まだその段階にまでは至っていないという人でも、おのずと上記のようなものを用いたテクニカル分析やトレードを行っていく事になる可能性は非常に高いと思います。
つまり、テクニカル分析を行っていくのであれば『ダウ理論』は理解しておくに越したことはない重要度の高い理論に他ならないため、ここでは『ダウ理論』について詳しく講義していきたいと思います。
ダウ理論とは~テクニカル分析の6つの原則~
ダウ理論は、もともとは「チャールズ・ダウ」という米国の証券アナリストが株式相場を対象に提唱した理論で、現在は「為替」「仮想通貨」の相場を対象とする形でも、多くのトレーダーに実用されています。
よって、その理論の原文は「英語」であり、それを翻訳したものが、多くの文献を介して日本のトレーダーに広まっています。
故に「ダウ理論」は、その細かい条文や表現、解釈に若干の違いが伴っているようなケースも珍しくないのが実情です。
ただ、相場やテクニカル分析の根本を前提として1つ1つの理論を捉えていけば、どのような表現や解釈が正しく、どのような表現や解釈が適切ではないかの判断は、さほど難しい理論ではありません。
よって「ダウ理論」は、かなり表面的な記述だけを書き並べているようなサイトも多いため、ここでは、相場やテクニカル分析の在るべき6つの原則を踏まえた「正しいダウ理論」を1つ1つ、解説していきます。
原則1:現在レートおよび平均レートの推移はあらゆる事象を織り込んでいる
これがダウ理論の「基本原則」であり、要するに「現在レートの推移」「平均レートの推移」が相場の「全て」で『それが全てである以上、その推移から値動きを予測する事も可能である』という理論です。
端的に言えば「テクニカル分析が有効である」という事の裏付けとして、現在レート、平均レートには、すでにレートを決定付ける、あらゆる要因が既に織り込まれていると「仮定」しているわけです。
よって、この「仮定」の時点で肯定派と否定派が生まれる余地があり、これを否定する側の人は、言わばテクニカル分析を全否定している事になります。 逆に、これを肯定する事はテクニカル分析の有効性を肯定する事に等く、この理論を支持するかどうかは「ダウ理論」と共にテクニカル分析を支持するかどうかと同等の理論に他ならないという事です。 |
原則2:相場には主要となるトレンドに内在する二次的、三次的なトレンドが発生していく
チャールズ・ダウが「ダウ理論」において株式相場を対象に提唱した「トレンド」は、以下の3つとなっています。
主要トレンド:主要となる数日単位の長期サイクルのトレンド 二次トレンド:主要トレンドに内在する数時間単位の中期サイクルのトレンド 三次トレンド:二次トレンドに内在する数分間単位の短期サイクルのトレンド |
相場は常に「主要トレンド」の中にあり、そのトレンド内で「二次トレンド」「三次トレンド」を内在させる形で「値動きの流れ」を作っていく事を提唱したわけです。
要するに「主要トレンド」が上方向へ上昇トレンドだとしても、そこに内在する形で「二次トレンド」や「三次トレンド」が下方向へのトレンドを形成するようなケースもありえるという事です。
この場合、主要なトレンドは「上方向」であっても、二次トレンド、三次トレンドが下方向である以上、リアルタイムな相場の値動きは実質的に「下降傾向」となります。
上昇トレンドの中にありながら、相場がどんどん下がっていく状況に遭遇するというわけです。
ただ、現在の多くのFXトレーダーは、この理論をより短期的な視点で捉えている傾向にありスイングトレード(数日サイクルの売買)を行っているようなトレーダーであれば、
主要トレンド:数カ月単位の長期サイクル 二次トレンド:数週間単位の中期サイクル 三次トレンド:数日間単位の短期サイクル |
このような視点で相場のトレンドとサイクルを捉えている傾向にあります。
また、デイトレードやスキャルピングトレード(数時間~数分サイクルの売買)を行っているようなトレーダーであれば、
主要トレンド:数日単位の長期サイクル 二次トレンド:数時間単位の中期サイクル 三次トレンド:数分間単位の短期サイクル |
このような視点で相場のトレンドとサイクルを捉えている傾向にありますが、上記のような視点で見ても、この理論は十分に「有効性が伴うもの」となっています。
よって、この理論は非常に信憑性のある有効な理論であるものの、この理論に基づく相場の値動きこそが、多くのトレーダーを惑わし、その予測を困難にしている側面もあります。
トレンドにトレンドが内在していく状況や、主要となるトレンド内で相場がその逆方向に動いていくような状況こそが「相場の動きを複雑なものにしている」という事です。
ここで言及した「トレンドにトレンドが内在していく状況」や「主要トレンド」に対して「二次トレンド」「三次トレンド」が発生していく相場をどのように攻略していけば良いのか。 このような視点における「ダウ理論」を踏まえた具体的なトレードの視点などについては、別途、以下のような講義をご用意していますので、こちらを併せてお読みになってみてください。
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原則3:主要となるトレンドを形成していく値動きには段階に応じた上下と強弱が伴う
これは先立って言及した「主要トレンド」において、相場の値動きにはトレンド生成の段階に応じた「上下」および「強弱」が伴うと言う理論です。
ダウ理論においては、この「段階に応じた相場の強弱」を『先行段階』『進行段階』『後退段階』という以下の「3つの段階」で区分しています。
先行段階:相場が高値圏、または安値圏で推移し、一部の先行者のみがポジションを建てる段階 進行段階:相場のトレンドが形成され始め、後続のトレーダーがポジションを建てていく段階 後退段階:相場がトレンドの天井、または底を打ち、トレーダーの利食いが生じていく段階 |
このような3つの段階を前提に相場の値動きは
先行段階の推移(レンジ)→ 進行段階の進行(トレンド)→ 後退段階の推移(レンジ) |
このような流れとなり、そこから同じサイクルを辿っての「トレンドの継続」または「二次トレンド」「三次トレンド」の生成に至っていくとされています。
つまり、一般的に言われる横ばい状態の「レンジ相場」は、この理論に基づく上では、実質的に「トレンドの先行段階」または「トレンドの後退段階」にあたるという事です。
ここで言及した主要となるトレンドの形成に伴う「先行段階」「進行段階」「後退段階」における具体的なトレードの視点などについては、別途、以下のような講義をご用意していますので、こちらを併せてお読みになってみてください。
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原則4:トレンドの終わりには転換の「シグナル(サイン)」が伴う
ダウ理論において、おそらくシンプルで最も分かり易い理論であり、また、ダウ理論の中で、最も多くのトレーダーに「実用」されている理論は、おそらく、この理論ではないかと思います。
これも先立って言及した「主要トレンド」「二次トレンド」「三次トレンド」これら全てに共通する理論であり、いずれのトレンドも「終わり」となるところでは「転換のシグナルが現れる」とされています。
逆説的に言うと、そのような「転換のシグナル」が表れない限り、そのトレンドは「継続する」という事でもあるため、
・明確なシグナルが出るまでトレンドは継続する(=ポジションを持ち続ける) ・明確なシグナルが出た時点でトレンドは転換する(=ポジションを解消する) |
これがトレードにおける1つの鉄則的な考え方にもなっているという事です。
ただ、それがどのようなシグナルなのか、というところまではダウ理論において明確になっているわけではありません。 そんな「トレンド転換を見極めるシグナル」については、別途、以下のような講義をご用意していますので、こちらを併せてお読みになってみてください。
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原則5:トレンド相場では平均値を用いる複数の指標が相互に共通した指針を示す
テクニカル指標には「平均値」を用いる指標が多数、存在するため、相場が明確なトレンド(流れ)を形成した場合には「平均値」を用いる、あらゆる指標が共通した指針を示す、という理論です。
逆に言えば、平均値を用いる特定のテクニカル指標のみが、特定の進行方向やトレンドの指針を示していたとしても、トレンドはまだ発生していない可能性がある、という事になります。
よって「平均値を用いるテクニカル指標」を2つ、3つ、4つと並行して利用しているようなトレーダーは、ある意味、この理論に沿った指標分析を行っていると言えるかもしれません。
ただ、この理論を徹底的に突き詰めてしまうと「複数の平均値を用いるテクニカル指標を多用するほど、より確実なトレンドの発生を察知できる」という理屈になってしまいます。
ですが、実際には統計的な視点で、ほぼ優位性が伴わない指標の組み合わせなども存在するため、あらゆる平均指標を次々と組み合わせていく行為が必ずしも適切とは言えません。
とは言え「平均値」を用いるテクニカル指標は、必然的に、どれくらいの期間の平均値を指針とするかで指標の形状も変わってきますし、それが「平均値」を用いる指標の弱点でもあります。
故に、そのようなテクニカル指標は1つの指標のみをアテにするべきではなく『平均値を用いた指標を複合的な指針としてこそ適切なテクニカル分析を行える』という事です。
このダウ理論に基づく「平均値を用いるテクニカル指標の併用」については、以下のような講義をご用意していますので、こちらを併せてお読みになってみてください。
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原則6:相場のトレンドは出来高でも確認されなければならない
相場の値動きやトレンドはレートの推移だけではなく出来高(取引量)にも、その動向が反映されるという理論です。
これは当然と言えば当然の理論なのですが、もともとのダウ理論は「株式市場」を対象としていた事もあり、極端に出来高(取引量)の少ない銘柄も含めて、この理論を提唱していたと考えられます。
そのような「極端に出来高の薄い銘柄の株」は、一部のトレーダーによる少量の売買で、レートが大きく推移する事になってしまいます。
そのような出来高の薄い取引によって生じたレートの推移(変動)を「その後の値動きの予測に用いるべきではない」という事です。
また、これは普段は取引量の多い市場(相場)でも同じ事が言えますから、極端に出来高が薄いタイミングを狙って、不自然な「買い」や「売り」が入り、急激なレート変動が伴った場合など。 そういった「不自然な値動き」を「テクニカル分析の対象」とするのは、そもそも適切ではない、という理屈を含めた理論がこれにあたるという事です。 |
ダウ理論 = 相場における6つの原則とそれを踏まえた規則的傾向。
端的に言えば、ダウ理論は相場の値動きにおける基本原則と、それを踏まえた規則的な「傾向」を提唱しているものに他なりません。
そして、実際にその1つ1つの理論が「有効なもの」とされているのは、実際に相場の値動きには、このダウ理論に基づくような規則的な傾向が顕著に見られるからです。
その上で、それぞれの理論に基づく実際の値動きやチャートパターンについては、その1つ1つの理論に応じた形で、それぞれ個別の講義にて解説していきます。
>ダウ理論実践講習:主要トレンドに内在する二次トレンド・三次トレンドの攻略 >ダウ理論実践講習:ダウ理路に基づくトレンド相場とレンジ相場の攻略 |
上記の「ダウ理論実践講習」は、おそらく、どの投資関連の文献やサイトなどよりも有意義な「ダウ理論の実践的な講義」になっていると思いますので、こちらも是非、併せて参考にしてください。
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。