トレードにおいて、世間一般的に言われる「トレードスタイル(手法)」の分類としては、
・スキャルピングトレード : 数秒~数分サイクルの売買を主とするトレード ・デイトレード : 一日以内、数時間サイクルの売買を主とするトレード ・スイングトレード : 日をまたぐ数日サイクルの売買を主とするトレード |
このように大別された上で、これ以上の長いサイクルに及ぶ数カ月、数年単位の売買は、いわゆる「長期投資」の範囲に含まれるのではないかと思います。
ただ、ここで言う「長期投資」は、投資対象となるものの将来性や将来的な価値を分析した上で行われる傾向にあるため、これはいわゆる『ファンダメンタル分析』が主な投資判断の対象となるものです。
対する「スキャルピング」「デイトレ」「スイング」と呼ばれるものは、その売買の間に生じていく「短期的な値動き」を対象とした『テクニカル分析』によって行われるものという捉え方が一般的かと思います。
そんな『テクニカル分析』を主体とした「スキャルピング」「デイトレ」「スイング」の各トレードスタイルで、どれが最も初心者にとって稼ぎやすいのか。
今回の講義では、そんなテーマを前提とした上で、それぞれのトレードスタイルを考察していきたいと思います。
よって今回のテーマは「これらのトレードスタイルのどれが最も稼ぎやすいか」というテーマではなく、あくまでも『初心者にとって、どのトレードスタイルか稼ぎやすいのか』を考察するものです。 よって「これから自らのトレードスタイルを確立していく段階にある」という段階にある場合などは、非常に参考になる講義内容になっていると思います。 |
初心者が最も稼ぎやすい「トレードスタイル」とは
まず、私なりの見解を前提とする結論を先に述べておくと、いわゆる「トレード」は、基本的には『売買の回数』や『頻度』が少なければ少ないほど、その「行為」そのものは容易になります。
これは当然と言えば当然の理屈で、売買の頻度が多くなれば、その分だけ「エントリーの判断」「決済の判断」などが必要となりますから、この回数は、当然、少ないに越した事はありません。
よって、このような『売買の頻度』という点のみで言えば、スキャルピングトレードが最も「初心者向けではない」という事になり、対するスイングトレードが最も「初心者向け」という事になります。
ですが、これとは全く異なる視点として『値動きの予測』という点で言えば、その範囲が短期間、短時間になるほど、その予測も容易となります。
それこそ「ファンダメンタル分析」を前提とするなら、その将来性や将来的な価値を分析して数カ月先、数年先の、その投資対象の価値を判断する事も出来るかもしれません。
ですが「テクニカル分析」は、あくまでも、それまでの値動きの動向から、その後に生じる売り買いの偏りなどを分析するものですから「値動きを予測する期間が長くなるほど、実際の予想も困難」となります。
つまり『値動きの予測』という点で言えば、売買のサイクルが短いスキャルピングトレードに最も優位性があり、売買のサイクルが長いスイングトレードの難易度が最も高いという事になるわけです。
ただ、実際の「トレード」における『売買の頻度』における弊害と『値動きの予測』における弊害とでは『値動きの予測における弊害の方が、圧倒的に乗り越える事が困難な障壁』と言えます。
結局のところ、トレードで稼ぐ事ができていない人の「敗因」にあたるものは、十分なレベルの値動きの予測基準を確立できていない事にあるのが実情だからです。
まずは「有効な値動きの予測基準の確立」が必要不可欠。
結局のところ、トレードの「勝ち負け」は『有効な値動きの予測基準を確立できるかどうかが全て』と言っていいと思います。
そして、そのような「有効な基準の確立」こそが何よりも重要で難解な障壁となるわけです。
故に、完全に1から「テクニカル分析」を追求して『有効な値動きの予測基準の確立』を目指すのであれば、まずは「短時間の値動き」を対象としていく方が遥かに合理的だと思います。
値動きの予測範囲が短時間であるほど、予測するべき「値動きの幅」も必然的に小さくなりますから、たとえどの指標をどう利用していくにしても、大きな値動きの予測より、小さな値動きの予測の方が容易である事は、まず間違いありません。
テクニカル分析、およびテクニカルの指標にあたるものが『これまでの値動きの動向から分析できる売り買いの強弱、偏りなどから先々の値動きを予測するもの』である以上、その時点の判断材料は、時間的にも、動向的にも「近い範囲の予測」であるほど有利なものになるはずだからです。
もちろん、テクニカルの分析方法は多様ですから、そのアプローチ方法によっては数秒先、数分先の値動きよりも、数時間先、数日先の値動きを予測する方に有効性が見られるケースもあるかもしれません。
ですが、相場の値動きは原則として「一方向に大きく動き続ける」という状況よりも「一定の範囲で上下を繰り返す」という状況が、その大半を占める傾向にあるのが実情です。
↓↓↓
※一方向に大きく動き続ける相場(赤丸部分)
※一定の範囲で上下を繰り返す相場(赤枠部分)
上記のようなチャート画像を見てもお分かり頂けるように「相場の値動き」は『一定の範囲で上下を繰り返す相場が大半を占める中、時折、どちらかに大きく動いていくようなサイクル』が主となっています。
つまり、大半の相場では、その多くを占めている「一定範囲の値動きを対象とする上げ幅と下げ幅の予測を前提とするトレード」で、十分な勝率とパフォーマンスを実現できるという事です。
単純な「確率」の視点においても『稀な値動き』を予測するより『相場の大半を占めている値動き』を予測の範疇としていく方が、その有効な判断基準を確立する事が容易である事は明らかかと思います。 |
「値動きの範囲」を前提とした『頻度』と『確率』を捉える視点。
よって相場の値動きに見られる「頻度」と「確率」で言えば『一定の範囲で上下を繰り返す相場』が大半であり、対する『一方向に大きく動いていく相場』は、その合間で時折、生じる範囲(頻度)なのが実情です。
その上で、売買のサイクルが短い「スキャルピングトレード」であれば、その「売買」が必然的、値動きの大半を占める『一定範囲の上下幅』に納まる事になります。
つまり、スキャルピングトレードにおいては、
・短時間の間に生じる範囲の値動きを予測できる基準 ・それに基づく有効な売買のルール |
これらを確立する事ができれば、十分に『勝てる』という事です。
対して、数時間、数日といった売買サイクルとなる「デイトレード」や「スイングトレード」では、その売買時間が長くなってしまう関係上、必然的に『一方向に大きく動いていく相場が、その売買の範囲に含まれる可能性』が高くなります。
そのような大きな値動きを十分に予測できればターンも大きくなりますが、この場合は、ただその『方向(上か下か)』を予測するだけでは勝てないのが実情です。
その『方向(上か下か)』を的中させた上で、更に『相場がどこまで動き続けるか』までを予測できなければならないため、
・相場がどちらの方向に大きく動くかを予測できる基準 ・その上で、その相場がどこまで動き続けるかを予測できる基準 ・それに基づく有効な売買のルール |
これらを確立できなければならないわけです。
それこそ「スキャルピングトレード」であれば、数秒から数分ほどの値動きの範囲を予測できれば十分なため、それ以上の範囲で『相場がどこまで動き続けるか』といったところは度外視できます。
ですが、売買のサイクルが数時間、数日に及ぶ場合は、必然的に『大きな値動きが生じた際の手仕舞いの基準を確立する必要がある』という事です。
▼ 値動きを予測する「難易度」は売買サイクルに比例する。相場がポジション方向に大きく動き始めた際、また、その逆にポジションとは逆方向に大きく動き始めた際、どの時点そのポジションを解消するか。 ・短期的な視点で相場が「どちらに動く」か。 これらを予想していくための「テクニカル分析」においては、実質的に『全く異なる分析基準』が必要となるのが実情です。 |
トレードスタイルの分類基準は売買の「サイクル」と「基準」次第。
ここまでの視点を踏まえた1つの結論として「スキャルピングトレード」「デイトレード」「スイングトレード」は『その売買サイクルの範囲によって分類されるもの』と言えます。
その上で、その「売買のサイクル」は、自らが確立している(確立していく)売買の基準やルールによって、結果的に定まっていくものに過ぎません。
つまり「相場がどこまで動き続けるか」の予測を度外視した上で『一定範囲の値動きの範囲で売買(トレード)を行っていくもの』が、いわゆる「スキャルピングトレード」に分類される事になります。 その予測範囲を広げるほど売買時間の範囲も広くなり、その売買時間が一日以内に収まれば「デイトレ」に分類され、日をまたいでいく場合は「スイングトレード」に分類されるという事です。 |
ただ、ここで言う『相場がどこまで動き続けるかの予測範囲』を広げていくほど、実際のトレードにおいては「エントリーポイントから決済(利確)ポイントまでの範囲」も広くなる事になります。
その範囲が広くなるほど、一時的に生じていった「含み益」が、その後の値動きによって無くなってしまう可能性や、それがそのまま「含み損」に変わってしまう可能性を高めてしまう事になるわけです。
そうなれば、当然ですが、一時的にでも「含み益」が生じた時点でポジションを解消しておけば勝てていたはずのトレードが「負けトレード」になってしまうケース。
更には、手に出来ていたはずの利益が「損失」に変わってしまうケースも生じてきます。
それこそ、投資業界、トレード界隈では、
『含み益はとにかく伸ばせるだけ伸ばすもの(伸ばさなければならないもの)』
というような「風潮」がありますが、そのような「含み益を出来るだけ伸ばす」という思考や、それに基づく投資判断こそが、多くのトレーダーの「損失」や「破綻」の要因になっているのが実情です。
いざ「含み益」を伸ばそうとする以上、そのトレーダーは『その相場がどこまで動き続けるか』を予測する必要があり、そのような予想こそが極めて「難しい事」だからです。
稼ぎやすい = 有効な値動きの予測基準を確立しやすい
結論として相場の値動きの大半は「一定範囲の上下を繰り返していく傾向」にあるため、その範囲が対象となる「スキャルピングトレード」における数秒や数分の値動きの予測は、そこまで難しいものにはなりません。
言ってしまえば「一定範囲の上下幅」さえ予測できれば十分なものであり、そこから「相場がどこまで動き続けるか」を『広い範囲』で予測する必要は全くないからです。
ですが『その相場がどこまで継続的に動き続けるか』の予測は「上下の有無」の予測ではなく、そこからの「継続的な値動きの予測」となるため、そのような予測基準の確立は各段に難しいものになります。
故に、有効なテクニカル分析に基づく売買の基準を確立していく場合において「相場がどちらに大きく動いていくか」や「どこまで動き続けるか」といった予測基準の確立はどうしてもハードルが高くなるため、
・デイトレード : 一日以内、数時間サイクルの売買を主とするトレード ・スイングトレード : 日をまたぐ数日サイクルの売買を主とするトレード |
これらを前提とする有効な売買の基準(トレードルール)の確立は、少なくとも私は、初心者が最初に手をつけるテクニカル分析としては適切ではないように思います。
現に私も「テクニカル分析」に着手して以降、最初に確立した有効なトレードルールは、数秒から数分ほどの「一定範囲の値動きの予測」を前提とするものでした。 故に、当初はそれに基づく「スキャルピングトレード」がメインだったわけですが、そこから更なるテクニカル分析に基づく研究と検証を繰り返していく事で、その「予測範囲」を広げていったわけです。 |
そんな私自身の経験則の上でも「まず確立しやすい有効な売買の基準(ルール)」は、短時間、一定範囲の値動きのみを対象とする分析基準ではないかと思います。
つまり、トレードスタイルの分類で言えば『スキャルピングトレードが最も初心者向けなのではないか』と思うわけです。
▼既に確立されている有効な基準(ルール)を対象とするなら尚、ここで考察してきたものは、あくまでも「1から有効なテクニカル分析の基準を確立する」という事を前提とする『初心者に適したトレードスタイル』にあたるものです。 ・自分自身が1から有効なテクニカル分析の基準を確立する このどちらの方向性でトレード(テクニカル分析)を行っていくのかによって、その「答え」も変わってくるわけです。
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以上、本講義では『初心者が最も稼ぎやすいトレードスタイル』を私なりの経験則も含めた形で考察させて頂きました。
今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、よろしければ併せて参照してみてください。
>投資とトレード(投機)の違いとメリット、デメリット。
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。