テクニカル分析を前提とするトレードにおいては、私は以下、3つのルールを「有効な形」で確立する必要があると考えています。
・エントリーのルール:相場にお金を投じるタイミング(エントリーポイント)を定める基準
・利確(決済)ルール:相場の変動によって生じていった含み益を確定(決済)する基準
・損切りルール :相場の変動によって生じてしまった含み損を確定する基準
これら3つのルールが何故、重要なのか、という点については、以下の講義で詳しく言及していますので、併せて参考にしてください。 |
その上で、ここでは相場の変動によって生じてしまった含み損を確定させる『損切りルール』について言及してみたいと思います。
含み損に対する「損切り」の重要性と有効な損切ルールの考察。
トレードにおいて「エントリー」を行い、ポジションが決まると、そこからの相場の変動によって「含み益」か「含み損」が生じていく事になります。
その際に「含み益」が生じていくように多くのトレーダーは『有効なエントリーポイントを定めるルール』を追求し、そのルールに沿ってトレードを開始しているわけですが、やはり相場はそう思い通りに動いてくれるとは限りません。
そこで意図する方向と「逆側」に相場が動いていった場合に「含み損」が生じていくわけですが、実際にトレードを行っていく際は、時にこの「含み損」を自ら「損失」に確定させる判断が必要となります。
これを『損切り』というわけですが、これを行う判断の基準を定めた『損切りルール』の良し悪しが、トレードにおける長期的な結果、勝ち負けを大きく左右していく事になるんです。
故に、この『損切り』が重要という事を提唱しているトレーダーも多く、私も先ほど挙げた3つの中で、1つだけ最重要なものを選ぶなら、やはり『損切りのルールこそが最も、重要』という答えになると思います。
この『損切りのルール』が適切なものになっていなければ、どんどん損失ばかりを重ねてしまう可能性はもとより、最悪は、資金の全てを失ってしまう事にもなりかねないからです。
相場の世界では「負けない事」が重要であり、長期的に見て「資金を失わない事」こそが何よりも重要であるため、そこをヘッジするためのルールが、この『損切りのルール』に他ならないわけです。
▼ 情報商材等に多く見られる「損切りルール」の傾向実際に多くのトレーダーが口々に「損切りが重要」という事を主張していながら、巷に出回っている「情報商材」などで提唱されているトレード手法の『損切りのルール』は、全般的に不十分なものや曖昧なものが多い傾向にあります。 ・相場が○%逆方向に動いた時点で損切り このような条件を設定しているものが多く「何故、そこで損切りを判断するのか」というような基準をとくに定めていないような、私からすると「手抜きなルール」が非常に多い傾向にあるんです。 |
故に、私は『損切りのルール』は「そこで実際に損切りを行う理由」や「その必要性」また逆の視点で「そこまでは損切りを行うべきではない理由や理論」などを十分に突き詰めて確立するべきだと考えています。
もちろん、エントリーのルールも、利益確定のルールも、それを実行するポイントには「然るべき理由」と「必要性」が伴うべきですが『損切りのルールは、とくにそこを徹底的に追及して定める必要がある』と考えているわけです。
少なくとも私が現時点で確立しているトレードルールにおいては、この『損切りのルール』こそ、そのポイントを定める上での「基準」を徹底的に追求しています。 その上で定めた『損切りのルール』こそが長期的な損益や勝ち負けを大きく左右しているという自負もあるくらいです。 やはりトレードは「攻める事(利益を伸ばす事)」よりも「守る事(損失を避け、最小限にする事)」に重きを置くべきだと思いますので、私はとにかくそこを徹底して『損切りのルール』に拘り、自らのトレードルールを確立しているという事です。 |
「損切りは、とにかく早いほど良い」という風潮の真偽。
その上で、世間的には『損切りはとにかく早く行い、含み益をどんどん伸ばす(伸ばせる)』というようなトレードルールこそが有効で、そのようなトレードルールを作る事が「正攻法」とされている風潮にあります。
確かにそのようなトレードルールを実際に確立できて、そのルールで長期的に「勝ち続けられる」なら理想的かもしれません。
ですが、まさにこれは「理想」でしかないもので、少なくとも私は『損切りをとにかく早くして、含み益をできるだけ伸ばす』という考えが必ずしも「正解」とは言い切れないと考えています。
これが本当に「正解」であり「正攻法」であるなら、例えば『損切りのルール』を
『1円でも逆側に相場が動いたら即座に損切り』
というルールに定め、相場が意図する方向に動いた時は限界まで含み益を伸ばすというルールが、その「極み」という事になります。
もちろん、これは「極論」かもしれませんが『損切りはをとにかく早くして、含み益をできるだけ伸ばす』という考え方が本当に「正解」であるなら、その「極論」を突き詰めたルールが「勝てるルール」となっていなければ理屈に合わないと思います。 |
ただ、実際にそのようなルールでトレードを行っていったとしても、まず「利益」を上げていく事は出来ないと思います。
原則として相場が常に「上下(上昇と下降)」を繰り返しながら動き続けるものである以上、エントリーしたポイントから「一瞬たりとも1円の含み損も出ない」というような状況は、そうそう無い事だからです。
つまり、このようなトレードルールでは「1円」という単位の損切りを100回、1000回、強いては10000回と繰り返していく事になり、小さな損失ながらも、それがどんどん積み重なっていく事になります。
結果として「勝率が極端に悪いトレード状況に至っていく」という事です。
もちろん、そのまま幾度とトレードを繰り返していけばエントリーと同時に相場が思う方向にどんどん動いていく事もあるかもしれません。
ですが、その時には、それまでの100回、1000回、強いてはそれ以上の負け分が積み上げられていますので、それまでの負け分以上の利益が生じるまでは利益を確定せず「含み益」を伸ばしていく必要があります。
そもそも「含み益は限界まで伸ばす(その「限界」の定義をどうするかは検討の余地がありますが)」というルールなのですから、利益確定は、相応の利益が生じるまで、行えません。 |
ただ、やはりこの場合も相場は高い確率でどこかで折り返してきますので、そうそう都合よく「それまで積み上げた含み損以上の利益」を生んでくれるとは限らないのが相場の世界の現実だと思います。
よって、このような場合も高い確率で、相場はどこかで折り返してくる事になり、やがてエントリーポイントを抜けて「1円の含み損」を作り出し『損切り』となる可能性が極めて高くなります。
つまり、このようなトレードルールでは、トレードを行う度にどんどん小さな損失が積み上げられていく事となり、逆の意味での「チリも積もれば」でいつかは資金が底をつく可能性が極めて高いという事です。
▼ この「極端なトレードルール」を逆手に取れば勝てるのか。ここで言及した内容はあくまでも「想定上の話」でしかありませんが、それでも「相場」というものの現実的な特性上、このようになる可能性は極めて高いと思います。 『1円でも含み益が出たら利益を確定し、損切りは限界まで行わない』 というルールで勝てるのかという事ですが、これは想定するまでもなく「勝てない」というのが率直な結論になってしまうと思います。 ・1円でも含み益が出たら利益を確定し、損切りは限界まで行わないルール この2つのルールをあえて「比較」をするなら、前者の「損切りをいち早く行うルール」の方が、まだ勝ち目(勝てる可能性)があるという事になります。 |
損切りを行うべきポイント、行うべきではないポイントの分岐点。
こうして『損切りの判断を早くして、含み益を伸ばす』という論理の正否を考察した通り、損切りの判断は必ずしも「早ければ良い」というわけではありません。
とは言え、その判断があまりに遅すぎても「致命的な損失を生んでしまう可能性がある」というのも揺るぎない現実です。
だからこそ『損切りのルール』を定める際は、実際に損切りを実行するべきポイントと、まだ、実行するべきではないポイントを「明確な基準」によって分岐する必要があります。
ここで既に述べた相場の特性として、多くの局面において相場は上下(上昇と下降)を繰り返す傾向にあるため、仮に「含み損」が生じても、相場がそのエントリーポイントに「戻ってくる」のであれば、原則として損切りは行うべきではありません。
これは本来であれば「損失」として残らないはずの「解消されるはずだった含み損」を損切りによって「損失」にしてしまう事になるからです。
ただ、時に相場は「特定の方向へ大きく動き続ける」という事もありえるため、どうあがいてもエントリーのポイントまで相場が戻ってこない時(その可能性が高い時)や、レバレッジ取引を前提とする場合は、その動きによって資金がショートしてしまう時(その可能性が高い時)は、いち早い「損切り」の判断が必要となります。
要するに、エントリーポイントから逆方向に相場が動いた際に、
・後に戻ってくる相場(その可能性が高い相場)なのか。
・そのまま戻ってこない相場(その可能性が高い相場)なのか
この判断が『損切りのルール』においては極めて重要であり、その判断に関して言えば「早いほど良い」という事です。
実際にこれをいち早く、高い精度で判断できるようになれば、常に「大きな負け(損失)」を避け、そこから利益転換を図っていく事が可能となります。 この『損切りのルールの精度』こそが、トレードの長期的な成果を分ける事になると言っても、決して大袈裟な話ではないという事です。 |
意図する方向と逆側に進んでしまった相場がその後、戻ってくる可能性が高いのか、どんどん進んでしまう可能性が高いのか。
これを可能な限り「早い段階」で見極められる基準を確立する事こそが、有効な損切りルールを確立する上での「命題」に他なりません。
その上で、基本的に「トレード」はポジションを建てていない状態であれば、いつ、どこで、どのような方向(売り、買い)でもエントリーが可能です。
ただ、どこかで一度、ポジションを建ててしまったなら、そこからは利益(含み益)が生じるか、損失(含み損)が生じるかであり、それを「いつ確定するか」を判断していくしかなくなります。
エントリーポイントはそれこそ腰を据えて
「高い確率で意図する方向に相場が動く可能性の高いポイントを定められれば良い」
という事になりますが、少なくとも、ここで言及してきた「損切り」は、状況によって、いち早い判断が必要になるものです。
故に『損切りのルール』は、そのような状況や可能性を織り込んだ上で確立していく必要があります。
エントリーポイントの判断には原則として「早さ」は求められませんが、損切りの判断は、その「早さ」こそが長期的な損益を大きく左右していく事になるからです。
どちらも「精度」こそが重要なのは言うまでもありませんが「損切りの判断における基準(ルール)」は、そこに「判断の早さ」も求められるという点で大きな違いがあるという事です。
▼ 損切り判断のポイントからエントリーポイントを逆算する考え方の1つとして『エントリー後の相場の動きを早い段階で判断できるポイント(早い段階で見切りを付けられるポイント)をエントリーポイントにしていく』というのも有効なトレードルールを確立する合理的な視点になると思います。 「運用資金に対して一日あたり4~6%」 という数字なので、これはまさに「損失を最小限に押さえているからこそ実現できているパフォーマンス」に他ならないと思います。 |
以上、ここでは含み損に対する「損切りの重要性」や「有効な損切ルール」について言及させて頂きました。
今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、こちらも是非、参考にして頂ければと思います。
>テクニカル分析の本質に基づく「本当に有効なトレードルール」の条件とは。
>テクニカル分析に基づく有効なエントリーポイント(ルール)の考察
>含み益は伸ばすべきなのか。有効な「利確(決済)ポイント」の考察。
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。