為替相場を対象としているFXのトレーダーや、FXトレードの「情報商材」などでは、トレードの結果などを「pips(ピップス)」という単位で表記する傾向にあります。

端的に言うと「pips」は『レートが変動した幅を示す単位』で、日本のトレーダーが「円」をベースに取引をしていく上では、

1pips  = 0.01円の値動き
100pips = 1円の値動き

この単位が一般的なため、これを頭に入れて計算するのが分かり易いと思います。

ですから「100pips獲得」というのは『ポジション方向にレートが1円動いた(そのタイミングでポジションを解消して利確した)』という事を意味します。

ただ、為替相場を対象とするトレードでは「EUR/USD(ユーロドル)」のような通貨ペアでトレードするトレーダーもいるため、このような通貨ペアの値動きの幅は「ドル」で言い表す事になります。

USD/JPY(ドル円)の値動き = (円に対する)ドルのレートが何円分動いたか
EUR/USD(ユーロドル)の値動き = (ドルに対する)ユーロのレートが何ドル分動いたか

このように「値動きの幅」に用いる単位は、トレードに用いる通貨によって変わってくる事になるため、これを一律する際に用いられているのが「pips」という事です。

よって「EUR/USD(ユーロドル)」のような通貨ペアで値動きの幅を「pips」で言い表した場合は、

1pips = 0.0001ドルの値動き
10000pips = 1ドルの値動き

という事になります。

ただ、この「pips」は、あくまでも『値動きの幅(変動幅)』を示しているものであって、必ずしも獲得した「pips」が大きいトレーダーが「稼いでいる」とは限りません。

そこで、この記事では『pips(獲得pips)に対する実際の収益(リターン)』の考え方、その計算方法などを解説していきたいと思います。
 

1pips=0.01円?FXにおける「pips」単位の収益計算について。

すでに解説した通り「pips」は、あくまでも『値動きの幅を示す単位』であって、実際の「損益」を示す数字ではありません。

ポジションを建てた方向にレート(相場)が動けば、その値動きの分だけポジションの解消(利確)と共に「pips」を『獲得』した事になります。

対して、ポジションとは逆方向にレート(相場)が動けば、その分だけポジションの解消(損切)と共に「pips」を『損失』する事になるわけです。

よって、その際の実際の「収益」や「損失」は、その『値動きの幅(pips)』と『ポジションの数量(ロット数)』によって、以下のような計算式で算出する事ができます。

値動きの幅(pips) × ポジションの数量(ロット数) = 実際の損益

つまり、情報商材の販売ページなどでよく見られる「獲得pips」というのは、

『実際にポジションを建てて、どれくらいの値動きをリターンに変える事が出来たのか』

という「レートの変動幅」を示す数字であって、実際の「損益」は、その際に建てたポジションの数量(ロット数)次第で大きく変わってくるという事です。

とんなに獲得している「pips」が大きくても、その際に建てていたポジション数量が少なければ、リターン(利益)は小さい事になります。

逆に、獲得した「pips」が小さくても、ポジションの数量が大きければ、実際のリターン(収益)は大きなものになるわけです。

また、実績として示されている数字が「獲得pips」と「損失pips」のみだった場合などは、獲得pipsの数字の方が大きくても「実際の損益はマイナスになっている」という事も十分にありえます。

例えば、USD/JPY(ドル円)の通貨ペアを対象とする2回のトレードで以下のようなトレード結果となっていた場合、

+100pips(獲得) × ポジション数量1000通貨(10万円)  = +1000円
-50pips(損失)  × ポジション数量10000通貨(100万円) = -5000円

この2回分のトレードにおける損益の合計は「-4000円」となり、このトレーダーは、明かに損失を出している事になります。

ですが、このトレード結果を「pips」のみで示せば、

100pips - 50pips = +50pips

となるため、表面的には「50pips獲得している」という事になるわけです。

確かに「値動きの変動幅の差し引き」で言えば、このトレーダーは50pips分、多くの値動きを獲得できていますので、実際の「損益」はマイナスでも、獲得している「pips」はプラスとなっている事になります。

ですが「このトレーダーが負けている(損をしている)」のは誰の目にも明らかであり、このようなトレード結果を望んでいるトレーダーなど、どこにもいないはずです。

ただ、情報商材の販売ページなどで公開されているトレーダーの実績や、自動売買ツール(EA)のトレード結果などでは「獲得pips」のみが大々的に示されているケースも珍しくありません。

損失を出した際のマイナス分のpips数や、1回1回のトレードにおける数量などを曖昧にする形で、実際の「損益」や「実績」を不透明にし、そして「ごまかしている」わけです。
 

「獲得pips」と「勝ち負け」および「リターン(稼ぎ)」は別モノ

例えば全てのトレード(売買)が、常に一律したポジション数量(ロット数)で行われているのであれば、獲得した「pips」は、そのまま「勝ち負け」や「リターン」の目安になるものです。

ですが、売買時のポジション数量を完全に一律するようなルールやロジックを前提にしているトレーダーや自動売買ツール(EA)は、そう多くはありません。

つまり「獲得pips」にあたる数値は、大半のトレーダー、自動売買ツール(EA)において『実際の勝ち負けやリターン(収益)を示すものにはならない』という事です。

▼ 私があまり「pips」という単位を使わない理由

よって、私のブログやメルマガでは、トレードの実績や結果を示す際に「pips」の単位を用いる事はほとんどありません。

大半のトレード実績が「仮想通貨(ビットコイン)」のトレード結果である事も理由の1つですが、私としては「分かりにくい」というのが一番の理由です。

ここでお伝えした通り、そもそも「獲得pips」は、実際の「リターン(稼ぎ)」を示すものにはならないため、

『今回のトレードで幾ら稼いだ』『資金に対して何%の利益率を実現した』

と、端的にお伝えする方が、明かに「分かり易い」はずですから、私は単純に「分かり易い数字をそのまま示すようにしている」という事です。

それこそ、友人や知人などとトレードの結果などを話すような場面で「今日はどうだった」と聞かれて『今日は○○pips取ったよ。』というような答え方は、まずしないと思いますので。

以上、今回は『pips(獲得pips)に対する実際の収益(リターン)の考え方、その計算方法』について言及させて頂きました。

今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、併せて参考にして頂ければと思います。


>投資、トレードで成功するためにまずやるべき事、学ぶべきこと

>レバレッジの真実と、その「本当のリスク」について。

>取引会社選びに必要不可欠な「手数料」と「スプレッド」の知識。


本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。