FXやトレードにおける「テクニカル分析」は、相場の値動きにおける「統計分析」でもあるため、そこには統計学の基本定理でもある『大数の法則』も深く関係してきます。

大数の法則というのは、確率の偏りが試行の繰り返しによって『在るべき確率に限りなく近づいていく』という法則で、

・コインを投げて表が出る2分の1の確率
・サイコロを振って1の目が出る6分の1の確率

これらは「数回の試行」では結果(確率)が偏る事があっても、数百回、数千回、数万回と試行を繰り返せば、限りなく、上記の確率に近づいていきます。

ただ、相場の値動きは「コイン」や「サイコロ」などとは異なるため、相場が上がる確率と下がる確率は、必ずしも「大数の法則」によって50%になっていくとは限りません。

例えば以下は「2017年から2021年までのビットコインの相場(値動き)」を表すチャート画像です。

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このチャートを見て分かる通り、2017年に数十万円台だった相場が2021年には一時、700万円台を超えている現実を踏まえても、

・一定時間の間に相場が上がった場合と下がった場合の統計確率
・一定の範囲で相場が上がった場合と下がった場合の統計確率

このような「確率」を単純に統計した場合、この間のビットコインの相場であれば、相場が上がった場合の確率の方が確実に高くなるはずです。

つまり、相場の値動きにおいて言えば、少なくとも「コイントス」のような2分の1の確率論は成り立たないため「その確率論を前提とする大数の法則も成り立たない」という事です。
 

相場の値動きに「大数の法則」は成り立たない?

ただ、これは「相場が上がる確率と下がる確率」において、2分の1の確率を前提とする大数の法則は成り立たないという話であって、テクニカル分析に大数の法則を持ち込める余地は無いという話ではありません。

例えば、過去10年、20年といった過去の相場(値動き)を対象に、

・特定のチャートパターンが形成された後の一定時間の値動き
・特定のテクニカル指標に対する一定範囲の値動き

これらを統計していった際に、その試行回数が数千回、数万回と十分なデータ量でありながら50%または、それ以上の確率を導き出せるような「パターン(値動き」を見つけられた場合。

今後の相場を対象に同じ試行を繰り返しても「過去の相場を対象とした確率に近い結果(確率)が再現されていく可能性は大いにある」と考えられます。

そもそもテクニカル分析に基づく売買(トレード)は、そのような考え方で、過去の相場に対して実現した結果(確率)が、今後の相場においても再現されるという「仮定」の上で行うものに他なりません。

つまり、その根底にあるものは、大数の法則を拠り所にする行為(売買)に他ならないという事です。

そのような視点で「大数の法則」を拠り所とするのであれば、

・損益比率(リスクリワード)が「1:1」
・勝率が51%以上

このような条件を十分な試行回数でクリアできているロジックは、理論上、そのロジックに基づく長期的に売買を繰り返していく事で「利益を上げられる統計計算」が成り立ちます。

故に、上記のような損益比率と勝率が『有効なトレードロジックの最低限の合格ライン」と言われている傾向にあり、損益比率がイーブンなら、勝率が55%や60%ほどでも十分という意見も少なくはありません。

ですが、実際の相場を対象とする「現実のトレード」において言えば、大数の法則を拠り所にできるようなロジックである事が「重要」になってきます。

つまり、過去の統計確率でそれなりの「勝率」を実現できている「理論上は十分な有効性が伴っているロジック」でも『大数の法則を拠り所にできないケースがある』という事です。
 

「大数の法則」を拠り所にできるか否か。

そもそもトレードにおける「勝率」の考え方は『常に一律した当たりクジ、外れクジの中から当たりクジを引ける確率』という考え方が分かり易いと思います。

例えば「勝率が60%のトレードロジック」であれば、

・当たりクジが6つ、外れクジが4つ、計10本のクジを何度も引き続ける
・当たりクジが60、外れクジが40、計100本のクジを何度も引き続ける

このようなイメージで、実際に当たりクジの方が多く入っているクジ引きである事は間違いなくとも、そこから「外れクジを引く可能性」は常にあります。

また、場合によっては、

・外れクジを引く頻度、確率が大きく偏ってしまう
・外れクジを2回、3回、4回と連続して引き続けてしまう

このような状況となる可能性も、常に「ある」のが現実だと思います。

故に、勝率が60%のトレードロジックでも、負けトレードの頻度が多くなる事もあれば、相当数の連敗を重ねる事も「現実的な可能性」として、十分にありえるという事です。

ただ、そのような「確率の偏り(運の偏り)」を、試行回数(トレード回数)を増やす事で最終的にカバーできるのが「大数の法則」に他なりません。

よって「統計」の基本定理である『大数の法則』を後ろ盾に出来るような合理的なトレードを行っていくには、以下の2つの要素が併せて「必要不可欠」となります。

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・大数の法則を拠り所にできるだけの「トレード」を十分に行えるロジック
・大数の法則を拠り所にできるだけの「トレード」を十分に行えるルール

1つ目の「ロジック」は、いわゆる『テクニカル分析に基づく売買の基準』を意味するもの。

そして2つ目の「ルール」は、先立つ「ロジック」を前提に、どのように資金を投じてトレードを行っていくのか、という『資金配分のルール』を意味します。

この「ロジック」と「ルール」が、十分な試行(トレード)を繰り返せるものになっていなければ、統計の基本定理である「大数の法則」を後ろ盾にする事も出来ないという事です。
 

十分な試行(トレード)を行える「ロジック」と「ルール」が不可欠。

実質的な「運(ツキ)の良し悪し」も含めて、実際のトレードでは勝率(確率)が大きく偏る事も十分にありえます。

とくに勝率が5割台、6割台といったレベルのロジックで長くトレードを続けていれば、以下のような状況に陥る事も「現実的な可能性」として、十分にありえるわけです。

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・勝ち負けの偏りから勝率が3~4割、それ以下になってしまう
・5回、10回、20回と連続して負けトレードが続いてしまう

故に、その「ロジック」が、同比率のリスクリワードで年に数回、月に数回といったサイクルでしかトレード(試行)を行えないロジックだった場合。

相当、長い目で見れば「大数の法則」を拠り所にする事も可能かと思いますが、それこそ「勝率の偏り」で月単位や年単位で、大きくマイナスになってしまう事になります。

少なくとも、個人レベルのトレーダーにおいて、月間単位、年間単位でマイナスになってしまう事や、そのような可能性があるトレードは避けたいと思うはずですし、避けなければなりません。

また、現実的な範囲で勝率が偏れば、一定数の「連敗」などもありえるわけですから、

・先立つ運用資金の10%に相当する資金を投じていくルール
 ⇒ 10連敗で資金の全てを売りなってしまう
・常に運用資金の50%に相当する資金を投じていくルール
 ⇒ 数回の連敗で資金の9割近くを失ってしまう

このようなルールでは、それこそ勝率が大きく偏った時点で資金の全額を失ってしまう可能性や、資金の大半をロスしてしまう可能性が生じてしまう事になります。

そもそもトレードにおける「試行」は、少なくとも、一律した資金によるトレードを繰り返す事ができなければ「大数の法則」の意味も無くなってしまいます。

大数の法則によってトレード全体の「勝率」が一定範囲を維持できても、1回1回のトレードにおける資金が一律されていなければ「トータル的な損益がプラスにならない可能性」が生じてくるからです。

よって、トレードにおける「試行」は、常に一律した条件の資金で行っていく必要があり、それを行えるような「ルール」を定める必要があるという事です。
 

テクニカル分析に基づくトレード = 統計分析に基づくトレード

テクニカル分析がも過去の相場(値動き)における「統計分析」である以上、その「統計」を拠り所とするトレード(売買)は実質的には「大数の法則」こそが重要な後ろ盾になります。

過去の相場に対する統計的なアドバンテージがある事を前提に、その統計的な確率が「再現」される事を期待する以上、その拠り所は「大数の法則」に他ならないわけです。

故に実際のトレードにおいては「大数の法則」をしっかりと拠り所にできるように十分な試行(トレード)を行えるようなロジックとルールを定める必要があります。

少なくとも、現実的にありえるレベルの勝率(確率)の偏りで一律した資金による試行(トレード)が出来なくなるような状況は避けなければなりません。

その範囲の「確率」で資金の大半を失ってしまうような可能性があるロジックやルールは『その時点で破綻しているに等しい』という事です。

むしろ、どんなに勝率(確率)が偏るような状況に陥っても、試行(トレード)を継続的に行えるようなロジックとルールを定めるべき、というのが私の考えです。

それこそ、

・損益比率(リスクリワード)が「1:1」
・勝率が50~60%

このレベルのトレードロジックは、理論上は試行(トレード)を重ねる事で収支がプラスになるとは言え、いざ長期的にトレードを行っていけば、

・勝率(確率)の偏りで一時的に勝率が3~4割、それ以下になってしまう可能性
・5回、10回、20回と連続して負けトレードが続いてしまう可能性

このような可能性が十分に現実的な範囲で「ありえる」ため、十分なリスクヘッジを徹底しなければ「勝つべくして勝ち続けられるトレード」を継続的に行っていく事はできません。

一見、上記のような数字を実現できるロジックは「合格点」に見えますが、実際のトレードで稼いでいく上では、現実的にありえるレベルの「最悪の可能性」は想定する必要があります。

そのくらいの考え方で「勝つべくして勝ち続けられるトレードロジック」「勝つべくして勝ち続けられるトレードル―ル」を追及していかなければならない、という事です。

▼ 私自身が追及し、実現している損益比率と勝率。

故に私は過去の相場に対する統計確率では「90%以上の勝率」を最低限の水準とした上で、それくらいの精度を実現できるテクニカル分析を追及しています。

また、それくらいの勝率を実現しながら、リスクリワード(損益比率)の方も「負けトレードの損失」に対して「勝ちトレードのリターン」が10倍、100倍というロジックが「理想」と考えています。

私自身、実際にそれくらいのロジックを確立した上で「勝率のみを重視したトレード」では、以下のツイッターを介して「年間99%以上(本年度は現在100%)という勝率を実証している」という事です。

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テクニカルトレードと統計心理学、管理人Yのトレード公開用ツイッター

2020年:勝ちトレード/102件 負けトレード/1件(勝率:99.02%)
2021年:勝ちトレード/ 61件 負けトレード/0件(勝率:100%)※4月時点

>Twitterによる公開トレードの勝率、パフォーマンス一覧

以上、本講義では「FXおよびテクニカル分析における大数の法則」について解説させて頂きました。

今回のテーマに関連する講義が幾つかございますので、こちらも是非、参考にして頂ければと思います。
 

 
>チャートパターンの「統計」と「確率」は行動分析と心理学に基づく

>損切り、利食いの基準に伴う「リスクリワード」と「勝率」の関係

>勝率とリスクリワードから捉える有効なトレードルールの条件

 
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。