インターネット上では「AI(人工知能)搭載」と銘打つ株式投資やFXなどの自動売買ツール(いわゆるEA)にあたるものをよく目にします。

ただ、それらで提唱されている「AI(人工知能)」とされるものの定義や実情は不透明なものが多く、それを目にする側の解釈も人それぞれなのが実情です。

とは言え、一般的なAI(人工知能)のイメージは『自ら学習し進化していくプログラム』といったものかと思いますが、そのようなものが実際に搭載されているのかは微妙なところです。

むしろ、実際のプログラムのソースコードなどを確認しても、それらしいものは全く見当たらないというケースも珍しくありません。

また、仮に「イメージ通りの人工知能」が実際に搭載されている自動売買のプログラムがあったとしても、それで本当に株やFX、仮想通貨などで稼げるのかは、また『別問題』なのが実情だと思います。

今回は、そんなAI(人工知能)とされるものの「幻想」と、株式投資やFX、仮想通貨運用の自動売買プログラムの「現実」について、言及していきたいと思います。
 

AI(人工知能)の幻想と株式投資、FX、仮想通貨運用の現実。

マーケット(市場)において行われている「売買」は、常に売り手側と買い手側の「合意」によって成り立っています。

そして、その「売買」における思惑や判断の対象となるものは、

・ファンダメンタル分析に基づくもの:対象の現在価値、将来価値を捉えた投資判断
・テクニカル分析に基づくもの:値動きの推移を捉えた上での投資判断

この2つに分類され、市場では常に、このいずれの判断に基づく売買が行われ続けているわけです。

ただ、その「売買」の前提となる「買い注文」「売り注文」などは、その全てが投資家やトレーダー自身によって行われているわけではありません。

その中にはコンピュータープログラムを介して実行されているものもあり、米国の株式市場、為替市場では、そのような注文が大半を占めていると言われています。

また、それは個人トレーダーによるものだけでなく、金融機関、投資機関もそのようなプログラムを採用しているため『市場の流動性はそれらによって作り出されている』という見方もあるようです。

ただ、そのようなプログラムが行っている「自動売買」は、先ほどの2つの投資判断で言えば、ほぼ例外なく後者の「テクニカル分析によるもの」が前提となっています。

そこにAI(人工知能)のようなものを搭載しているとしても、コンピュータが行える処理の基本は「インプット」「データ分析」「アウトプット」が基本です。

その視点において、値動きの推移に関する情報や数値として幾らでもインプットできますが、ファンダメンタルに関連する情報は、そうはいきません。

AIが発達しているとは言え、世の中のあらゆる情報やニュースにおいて、どれがファンダメンタルの要因となるかの線引きさえ難しい以上、これをコンピュータに処理させるのは、不可能に近い事だからです。

▼ 人工知能によるファンダメンタル分析の考察

ネットニュースなどのあらゆる情報を自主的に収集し、投資判断に必要な情報とそうではない情報を分けて最善の投資判断を下す。

そんなレベルの人工知能までは、まだ作り出されていないと思いますし、そんなAIは、もはや「投資の神様」と言われるウォーレン・バフェットの頭脳そのものか、それ以上という事になります。

ですが、ウォーレン・バフェットが投資の世界でダントツの実績を実現し続けている以上、ウォーレン・バフェットと同等の投資判断を下せるAIは、やはりまだ作り出されていないという事です。

また、仮にそのレベルのAIを作り出されたとしても、それは私達のような一般人のところには、その情報さえ届かないまま秘密裡にこっそりと使われていくのではないかと思います。

チャート情報のインプット → 統計分析 → 売買注文のアウトプット

よって、システムトレードに用いる自動売買のプログラムが行っている事は、上記のような『チャート情報の統計分析に基づく売買注文のアウトプット』という事になります。

その上で、そこの「人工知能」を搭載するメリットは『新たに取り入れた情報をもとに人工知能が常にプログラムの更新して精度の向上を図っていく事』にあります。

逆に人工知能が搭載されていない自動売買のプログラムは『構築段階にセッティングされた基準や条件を前提とする統計分析、売買のみを行う形』になります。

確かに、これらを表面的に比較すれば、新たに取り入れた情報を元に常にプログラムを更新させながら、精度を向上させていく人工知能搭載のプログラムに魅力を感じるかもしれません。

ですが、これは、その「新たな情報を取り入れた上での更新プログラム」が、実際にその精度を向上させられる事が大前提のメリットでしかありません。

しかし、実際にテクニカル分析を日々、研究し、検証を重ねている私の視点で言えば、それは決して容易な事ではありません。

確かに、その「プログラム更新」によって、確実に精度が上がっていくのであれば問題はないと思います。

ですが、その人工知能そのものの精度や、更新プログラムそのものの精度が低ければ、無用なロジックの更新のみが繰り返されてしまい、

・ある程度は勝てていたプログラムが勝てなくなる
・また勝てるようになったと思ったら負け始める
・いつまでたっても勝てない

といった状況に陥ってしまう可能性も否定できません。

それならば、下手に売買のプログラムそのものを更新していくような人工知能よりも、まずはしっかりと「勝てる自動売買のプログラム」を普通に作って欲しいのが率直なところです。

そもそも、株式投資やFX、ビットコイン運用などにおける自動売買ツール、EAなどは普通に勝てる(稼げる)もの自体が皆無に等しいため、まずはその段階をクリアできていなければ話になりません。

その「勝てる(稼げる)」という大前提のハードルをクリアできているものさえ皆無に等しく、そこさえ「怪しい」のが、この手の自動売買ツールの現実です。

そこへ更に「AI(人工知能)搭載」といった謳い文句は、私としては、更に怪しさが増している印象しか持てません。

よって、まずはAI云々というところは度外視した上で『そもそも、その自動売買のロジックが本当に有効なものなのかを見極めるべき』という事です。

本当に有効な自動売買のツールやEAを見極める基準、そこを見極める具体的な方法などについては以下の記事を併せて参考にしてください。

>投資・トレード関連の自動売買ツールが詐欺か本物かの見極め方

▼ 金融機関、投資機関が実用している自動売買プログラムの実情

ちなみに、大手の金融機関、投資機関などが実用している自動売買のプログラムは、その根本がネット上で出回っているような自動売買ツール、EAなどと異なります。

そのような大手機関が実用しているプログラムは、人の手では到底行えないようなコンマ何秒単位の売買を繰り返し行うようなものも少なくないと言われているからです。

そもそも、そのような大手機関の取引環境や取引条件は、

・コンマ何秒の売買注文さえほぼ誤差なく処理できる
・そのような高速売買でさえ利益を出せる

といった点で、私達のような個人トレーダーと全く異なりますす。

当然、私達のような個人トレーダーが、仮にそんな自動売買のプログラムを手にしても、そのような売買を処理し、そして、そのような売買で利益を出せる取引環境が無ければ実用さえできません。

大手の金融機関や投資機関が、いわゆる「自動売買」で大きなリターンを上げている事は事実ですが、それは根本として私達のような個人トレーダーとは異なる環境下で実現しているものに他ならないという事です。

ただ、そのような投資機関に勤めていた経歴のある知人に、私の短期売買のトレードロジックを話した際、そのロジックが投資会社の多くが自動で行っている売買と近かった事に驚いていました。

私のトレードノウハウは、投資会社などがプログラムを使ってコンマ何秒単位で行っているような売買を、人の手で数秒単位で行えるように改良したようなロジックなのだそうです。

彼曰く、そのような投資機関に勤めた経歴などを何も持っていない私が、言わば「独学」で、そのようなロジックに行き着いていた事が、何よりも驚きだったようです。

以上、本講義ではAI(人工知能)とされるものの「幻想」と、株式投資やFX、仮想通貨運用における自動売買プログラムの「現実」について言及させて頂きました。

今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、よろしければ併せて参照してみてください。


>投資・トレード関連の自動売買ツールが詐欺か本物かの見極め方

>有効な裁量トレードの条件とシステムトレードでは勝てない理由。

>相場の世界に「聖杯(必勝法)」は存在するのか。


本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。