インターネット上には、FX(外国為替証拠金取引)で自動売買を行えるソフトウェアが「有料販売」もしくは「無料配布」などの提供体制で、多数のものが出回っています。
ただ、そのようなソフトウェアで自動売買を行っていく行為は、そのプログラムに自分自身の資金を委ねる事になるため、これはある意味、見ず知らずの第3者に資金の運用を委託している行為と変わりません。
そうであるにも関わらず、その自動売買の「仕組み」や「リスク」などをあまり把握しないまま、そのようなソフトウェアを利用して自動売買を行っているトレーダーが非常に多い傾向にあります。
そのような現実を踏まえて、この記事では、FXなどの自動売買を行えるソフトウェアの仕組みや、それを踏まえた優良なものとそうではないものを見極める方法や基準などを解説していきたい思います。
FXにおける「自動売買」の仕組みについて。
FXで「自動売買」を行えるソフトウェアの多くは「MT4(メタトレーダー4)」というトレード用のソフトウェアを対象とした「エキスパートアドバイザ(EA)」と呼ばれるプログラムによって構成されています。
MT4は、国内、海外、問わず数多くのFX会社のトレードで利用できるようになっているため、その普及率も非常に高く、FXにおける自動売買は、大抵、MT4のプラットフォーム上で行われています。
MT4(メタトレーダー4)
MT4で稼働できる自動売買システムを総じて「エキスパートアドバイザ(EA)」と呼ぶため、自動売買のシステムそのものを「EA」と称して販売、提供している業者やトレーダーも多いです。
実際にMT4を利用しているトレーダーからすれば当たり前過ぎる話なのですが、そもそもMT4は「チャート分析を行える機能を豊富に揃えたソフトウェア」であり、その利用目的は以下の2つに集約されます。
・FXにおける「売買注文」を目的とした利用 ・FXにおける「テクニカル分析」を目的とした利用 |
要するに、任意の売買注文の実行を行うために利用しているか、チャートを対象とするテクニカル分析を行うために利用している、またはその両方であり、MT4はこれらを行うためのソフトウェアに他なりません。
よって、このMT4で稼働するプログラムがシステム化する事ができるのは、あくまでも「テクニカル分析に基づくトレード」という事になります。
あくまでも「チャートを対象とする何らかの基準(条件)に沿って自動売買が行われる」という事です。
MT4による自動売買は「チャート」を対象とするテクニカル分析に基づく。
そもそも「相場」を対象とする上で、実際の「売買」の基準となる『値動きの予測手段』は、実質的に2つしかありません。
1つは世の中の何らかの情報ソースをもとに、投資対象となるものの将来性や価値を予測していくファンダメンタルズ分析。
そしてもう1つが、過去から現在までの相場の値動き(チャート)を分析して、今後の値動きを予測していくテクニカル分析です。
このような2つの手段のうち、MT4を対象に稼働している「EA(エキスパートアドバイザ)」と呼ばれる自動売買のプログラムでは、後者のテクニカル分析のみが行われています。
少なくとも、MT4をプラットフォームとする自動売買のプログラムでは、基本的に「ファンダメンタルズ分析」をシステム化する事はできません。
つまり、MT4を対象とするプログラムで「自動売買」を行っていく場合には、
・EA(エキスパートアドバイザ)による自動売買はテクニカル分析のみに基づく ・ファンダメンタルズ分析に基づく売買は原則としてシステム化する事はできない |
このような仕組みが、その大前提である事はしっかりと認識しておくべきであり、この前提を踏まえて上で、その「良し悪し」や「利用の是非」を判断する必要があるという事です。
▼ ファンダメンタルズ分析の「プログラム化」は可能なのか。現在はAI(人工知能)なども発達しているため、そういったAIを用いればファンダメンタルズ分析を「プログラム(コンピュータ)」が行っていく事も不可能ではないと思います。
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テクニカル分析だけで相場を「攻略」する事は可能なのか。
ここまでの話を踏まえて『テクニカル分析しか行う事ができない自動売買のプログラムで、現実の「相場」を攻略する事ができるのか』という根本的な課題が浮上してきます。
これは投資家、トレーダーによっても見解は分かれる部分だと思いますが、少なくとも、それが「不可能」だと考えているようなトレーダーは、そのような自動売買のシステム(EA)に手を出す事もありません。
もしくは必要最低限のファンダメンタルズ分析を自分自身で行いながら、ファンダメンタルズの影響が強い相場を避けつつ、自動売買の「オン」と「オフ」を裁量で切り替えて利用しているはずです。
どちらにしても「テクニカル分析による自動売買」に自らの資金の全てを完全に委ねるような事はしていないということです。
ただ、私のブログで追及しているメインテーマは「テクニカル分析の有効性」に他ならないため、少なくとも私は『テクニカル分析で相場を攻略する事は可能』と考えています。
ですが、その市場(マーケット)にファンダメンタルズ分析に基づく売買を後押しするような要因が介入しているような場合には、やはり、テクニカル分析の有効性は薄れてしまう現実があります。
また、時と場合によっては、そこに「決定的」とも言える要因が介入する場合もあるため、そのような相場では、テクニカル分析は全くと言っていいほど通用しなくなります。
ですから、一定のテクニカル基準に沿った売買のみを自動で行っていく場合には、そのような相場への対策をどう講じているかがポイントになってきます。
それこそが、自動売買を前提とするソフトウェア(EA)の「長期的な有効性」や「良し悪し」を判断する上での、極めて重要なポイントになるという事です。
テクニカル分析を主体とするトレードを行っていく上で、ファンダメンタルズの影響下にある相場を攻略する視点については、以下の記事で言及していますので、こちらも併せて参考にしてください。
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▼ テクニカル分析が有利な市場とそうではない市場そもそも「テクニカル分析」は、テクニカル分析に基づいた相場の予測が有利な市場とそうではない市場があります。 |
以上、この記事では自動売買システム(EA)の仕組みについてや、優良なEAとそうではないEAを見極める方法や基準について言及させて頂きました。
今回のテーマに関連する講義も幾つかございますので、こちらも是非、参考にして頂ければと思います。
>有効な裁量トレードの条件とシステムトレードでは勝てない理由
>投資系情報商材、自動売買システム(EA)が本物かどうかの見極め方
>自動売買システム(EA)のバックテスト上のパフォーマンスがアテにならない理由
>ファンダメンタルによる暴落が明かな相場で「テクニカル分析」は通用するのか
>ファンダメンタルズ分析を無視するテクニカルトレードのリスクと対応策
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。