為替相場を対象とするFX(証拠金取引)と、ビットコインの相場を対象とするFXでは、勝手が異なる部分も少なくありません。

その中で、とくに為替FXのトレーダーがビットコインのFXで戸惑う傾向にあるのは、ビットコインの「現物」と「FX」の取引レートに『乖離』が生じている点だと思います。

ビットコインの現物レートとFXレートに乖離が生じている理由や、その要因については、こちらの記事で詳しく言及していますので、併せて参考にしてください。

>ビットコインの現物レートとFXレートが乖離する理由について

そこで、ここではビットコインFXにおける実際の「トレード」において『現物レートとFXレートの乖離をどう攻略していくべきなのか』を解説していきたいと思います。
 

ビットコインFXにおいて「現物レートとの乖離」をどう攻略するべきか。

為替相場を対象とするFXを行っていく場合において「現物レート」と「FXレート」および「現物チャート」と「FXチャート」を別モノとして捉えるような事はまずありません。

為替相場における「現物取引(現物相場)」は『直物取引(直別為替相場)』と呼ぶのが一般的かもしれません。

為替相場を対象とするFXを行っているようなトレーダーは、ほぼ例外なく自分自身が実際にトレードを行っているFX会社の取引チャート、および取引レートを注視して取引を行っているはずです。

それこそ、為替相場を対象としているFXトレーダーからしてみれば、

「それが普通であり、至って当たり前の事では?」

と思ってしまうような話なのですが、ビットコインのFXにおいては、その『根底』が大きく異なります。

と言うのも、ビットコインの相場には、為替相場における「インターバンク市場」のような、相場の「基軸」となるようなレートを定める市場が存在しません。

そのため「現物取引市場」と「FX市場(証拠金取引市場)」のそれぞれにおいて、常に異なる取引レートが生まれる事になり、それが「乖離」を生んでいく事になります。

つまり「現物市場における現物取引」と「FX市場における証拠金取引」で、実質的に「異なる取引チャート」がそれぞれ存在している状況となっているわけです。

▼「現物市場(現物取引)」と「FX市場(証拠金取引)」の違い。

ここで言う「現物市場」は、ビットコインの「現物」を取引(売買)している市場であり、実際にビットコインを「保有している人」「保有したい人」が売買を行っています。

数量に「限り」があるとされているビットコインの「現物」が、この「現物市場」で実際に取引(売買)されているという事です。

対して、FX市場は「証拠金取引」が行われている市場であり、証拠金取引はあくまでも「証拠金による仮想売買」で、その決済金額のみがやりとりされています。

つまり、ビットコインのFX(証拠金取引)では『実際のビットコイン(現物)は一切やりとりされていない』という事です。

よって、ビットコインの現物取引をしている人達のお金のやりとりと、FX(証拠金取引)を行っている人達のお金のやりとりは、根本的に「別モノ」という事になります。

ビットコインの現物市場 = 実際にビットコインの現物売買を行っている人達の市場
ビットコインのFX市場 = ビットコインの証拠金取引による仮想売買を行っている人達の市場

この2つの市場は「値動き」は連動する形になるものの『市場そのもの』や『お金の流れ』は根本的に「別モノ」という事です。

「現物チャート」を見るべきか「FXチャート」を見るべきか。

例えば以下は国内の大手取引所「bitFlyer」における、

・2021年1月26日のBTC/JPY(現物取引)チャート
・2021年1月26日のBTC-FX/JPY(証拠金取引)チャート

であり、それぞれの同日、同時刻の取引価格(レート)は以下のようになっていました。

BTC/JPY(ビットコイン現物取引レート):3,493,040円

BTC-FX/JPY(ビットコインFX取引レート):3,609,971円

これらの通り、同じ取引所内のビットコインの現物レートとFXレートが、すでに10万円以上、乖離しているのが分かると思います。

また、チャート上に表示されている「高値レート」および、その後の「安値レート」においても、それぞれのレートが大きく乖離している事は一目瞭然です。

・BTC/JPY 高値レート(1月9日頃)  :4,350,000円
・BTC-FX/JPY 高値レート(1月9日頃):4,535,060円
・BTC/JPY 安値レート(1月22日頃)  :2,971,111円
・BTC-FX/JPY 安値レート(1月22日頃):3,074,657円

このように、ビットコインの現物チャートとFXチャートは、高値を付ける金額も違えば、安値を付ける金額も異なるため「値動きが連動している」とは言え、これはもはや「別モノのチャート」という事です。

では、実際の「チャート分析(テクニカル分析)」や「取引(トレード)」において、どちらのチャートを注視していくべきなのか。

結論から言えば、チャート分析(テクニカル分析)においては「現物チャート」を注視するべきであり、実際の取引(トレード)は「FXレート」を注視するべきだと思います。

要するに、ビットコインFXにおける「チャート分析に基づくトレード」は、

1:現物チャートを分析してエントリー&クローズの判断を下す
2:その判断に基づく形で、その時点のFXレートで取引を行う

このような形で行うべきであり、ビットコインFXで成果を上げているトレーダーの大半は、まず間違いなく、この形でトレードを行っているはずです。

つまり、テクニカル分析の対象とするべきは「現物チャート」であり、FXの取引チャートをテクニカルの対象にする事はなく、取引時点のレートのみを売買の際に注視していけば良いという事です。
 

ビットコイン相場のテクニカル分析をFXチャートで行うべきではない理由。

ビットコインのFX市場における証拠金取引は、原則的には「現物取引に連動する形」で行われているものであって、FXの相場がビットコインそのものの相場を先導する事は基本的にありません。

状況によっては、FXの相場が先に動く事や、相場を先導したように見える場合もありますが、FXの値動きに現物が付いてこなければ、必ず「現物の値動き」にFXの相場が付いていく形になります。

つまり、FXの値動きに現物の値動きが付いていかない事はあっても、現物の値動きにFXの値動きが付いていかない事は原則として、ありえないわけです。

故に、ビットコインの相場において、その値動きを分析するべきなのは「現物」の方であり、テクニカル分析の対象は常に「現物チャート」でなければなりません。

加えて、FX市場における取引チャートは、

・FX(証拠金取引)特有のレバレッジを用いた過剰な売買に伴う値動き
・FX(証拠金取引)特有の強制決済に伴う過剰な注文に伴う値動き

などが随所に介入していく事になるため「テクニカル分析」を行う上では、明らかに不適切な値動きの変動がチャート上に表れてしまっていると考えられます。

このような「テクニカル分析」の観点においても『FXチャートのテクニカル分析は合理性に欠ける行為』と言わざるを得ません。

よって、ビットコインのFXを前提とする場合においても、そのトレード判断を委ねるテクニカル分析は、あくまでも現物チャートを対象に行う必要があるという事です。

▼「分析レート」と「取引レート」が異なる事の弊害。

よって、テクニカル分析を「現物チャート」を対象に行い、実際のトレードを「FXレート」で行っていく場合、

・テクニカル分析の対象となる現物チャートの現在レート
・実際にトレードを行うFXチャートの取引レート

これらのレートは、必然的に異なる金額となります。

為替相場を対象とするFXの場合、取引を行うFX会社のチャートを見て、その取引レートでそのままトレードを行えるため、それが「当たり前」になっているトレーダーにとっては弊害に感じる部分かもしれません。

ですが、これは結局のところ、テクニカル分析に基づく判断に沿って、その時点のFXレートでトレード(売買)を行っていけば良い話であって、それ以上でもそれ以下でもありません。

また、仮にそれが「弊害」であるとしても、それ以上の「恩恵」と「優位性」がビットコインのFXには数多く存在します。

そんな「ビットコインFXが為替相場を対象とするFXよりも圧倒的に稼ぎやすい理由」については、以下の記事で詳しく言及していますので、併せて参考にしてください。

ビットコインの相場が投機(トレード)において有利な理由。

以上、本講義では、ビットコインのFXにおいて、現物レートとFXレートの乖離をどう攻略していくべきなのかを言及させて頂きました。

今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、よろしければ併せて参照してみてください。


>ビットコインの現物レートとFXレートが乖離する理由

>為替FXとビットコインFXの違い。リスクと値動きの比較

>株、為替(FX)、仮想通貨、どの相場(市場)が最も稼ぎ易いのか。


本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。