ビットコインを始めとする多くの仮想通貨(暗号通貨)はレートの変動が激しい傾向にあるため、そのような仮想通貨を保有し続ける事自体に「リスク」が伴います。

そんな仮想通貨の保有リスクをクリアするべく、その取引レートが安定するように設計された仮想通貨を「ステープルコイン」というのですが、その代表格が言わずと知れた「USDT(テザー)」です。

USDT(ドルテザー)とは。ステーブルコインの仕組みとリスク

ただ、2021年の中旬あたりからUSDTの時価総額に明らかな「伸び悩み」が垣間見える一方、それとは対照的に急激にシェア(時価総額)を伸ばしているのが「USD Coin(USDC)」です。

この記事では、そんなUSDC(USD Coin)とUSDT(テザー)の違い、USDCがシェア(時価総額)を伸ばしている理由などを解説していきます。
 

USDT(テザー)とUSD Coinの違いと比較、テザー衰退の予兆。

USD Coin(USDC)はUSDTと同様に『米ドルとの等価レートを維持する』という事を前提とした上で発行元が「価値の安定(ステーブル)」を図っている仮想通貨の1つです。

実際にレート(価値)を安定させるロジックはUSDTと同じであり、

・その発行元が常に『1USDC = 1USD』の等価レートによる交換(払い戻し)に応じている
・その交換(払い戻し)に応じられる米ドルを準備金として常に発行元が保有する

このような条件を前提とする形で「発行元への信用」によって、その価値(レート)を保っています。

その上で、USDTの発行元は、イギリス領ヴァージン諸島に本部を置くテザー・ホールディングス(Tether Holdings、以下テザー社)。

対するUSDCは『centre(センター)』という名称の複数企業の共同組織(コンソーシアム)から発行されています。

そこに名を連ねているのは実質的にUSDCの運営管理を行っているCIRCLE(サークル社)、大手仮想通貨取引所のcoinbase(コインベース)、大手金融企業の「ゴールドマンサックス」など。

以下は2021年11月時点の「ステーブルコイン」の時価総額のランキングですがUSDCの時価総額は、USDTの50%を超える規模に急成長しています。

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USDTの時価総額は800億ドル(約9兆円)を超えていますが、USDCの時価総額は、その50%ほどに相当する400億ドル(約4兆5000億円)となっています。

ただ、2020年の時点におけるUSDTの時価総額は200億円を超えていたのに対して、USD Coin(USDC)の時価総額はその20分の1に相当する10億ドルほどのでした。

その「成長率」という点では、USDCは明らかにUSDTの上をいっているという事です。

以下、2021年以降のUSDTとUSDCの時価総額の成長率を比較したグラフ(Coin desk引用)ですが、6月以降は、USDTの成長が止まった状況下で「USDCのみが時価総額を伸ばしている」という事が分かります。

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尚、2021年の「仮想通貨市場」は4月頃まで、ビットコインの過去最高値レートの更新相場が続き、5月に大きくレートが下落する相場となっていました。

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ステーブルコインは、ビットコインなどの仮想通貨における相場の高騰や暴落に準じて、一時的に暗号資産を「退避」させるような用途に使われる事が多い傾向にあります。

故に、仮想通貨の中心核であるビットコインの相場が乱高下する相場などでは、とくにその需要や取引量が多くなる傾向にあります。

上記のチャートを見て頂いてもお分かり頂ける通り2021年の6月、7月は、明らかに値動きそのものが停滞していましたから、この間、ステーブルコインの取引も当然の理屈として沈静化する形となっていました。

ですが、それでもUSDCは6月、7月と時価総額を着実に伸ばしていたのに対して、USDTは、ほぼ横ばいの状況となっている事がお分かり頂けると思います。

現時点では、USDTが時価総額、取引量、共にステーブルコインの代表格である状況に変わりはありませんが「その勢いは明らかに失速状況にある中でUSDCがそのシェアを拡大しつつある」という事です。
 

USDT(テザー)の失速、USD Coin急成長の背景。

USDT、USDCのようなステーブルコインは、そもそも価値の上昇などを期待して保有するものではないため、利用者側の「用途目線」で言えば、実際のところ、どちらを利用しても大差はありません。

利用者側のニーズはあくまでも「価値(レート)の安定」であり、そのニーズさえ満たしてくれているのであれば、それで十分なわけです。

そんな中で、これまでUSDTがステーブルコインの代表格となっていたのは、USDCが発行に至った2018年よりも3年ほど早い2015年に発行されていた事と、それに伴う圧倒的な知名度がある事。

また、何より大きい要因は、USDTの方が実際の取引に利用できる仮想通貨の取引所が圧倒的に多い事が挙げられます。

現時点における仮想通貨は、ステーブルコインに限らず、仮想通貨の取引所を介しての取引が主流であり、USDCはUSDTに比べて、現在でもまだ、利用できる取引所は少ない傾向にあるのが実情です。

ただ、そのような状況下で着実にUSDCがその時価総額(シェア)を伸ばしているのは、ステーブルコインの根幹となる「価値(レート)の安定を裏付ける信用」の部分で、

・USDTおよび発行元であるテザー社に対する不信、疑惑の声が高まっている
・対するUSDCの価値の裏付けには透明性、信用性が備わっている

このような二極化された状況が生じているため、まさに「USDTからUSDCへの乗り換えが始まっていても全くもっておかしくはない状況」と言えます。

USDTの発行元であるテザー社に対しては、もともと、発行したUSDTの価値を裏付ける準備金(米ドル)の所在や透明性に疑問の声が挙がっている中で、

・関連会社への資金流用疑惑
・裏付けのないUSDTの過剰発行疑惑

これらの疑惑に基づく集団訴訟や米ニューヨーク司法当局による提訴、訴訟に至っている経緯があり、今現在も、これらの疑いは完全には晴れていません。

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テザー問題、BITFINEXへのUSDT準備資金流用疑惑とその顛末。

対して、USDCは公式サイトを介して「グラントソントン・インターナショナル」という国際的な会計事務所の監査を受けて、月に一度のペースで準備資金の保有状況を公開しています。

▼ グラントソントン・インターナショナルによる監査報告の信頼性

グラントソントン・インターナショナル(Grant Thornton International Ltd)は、100年以上の歴史がある英国ロンドンに本部を構える国際的な監査業務を行っている大手の会計事務所です。

その権威、信頼性がどれほどかは私は詳しくは分かりませんが、仮にUSDCの実情に沿わない監査結果を公開し、それが明るみになった場合には、その会計事務所の信頼も地に落ちます。

そういった点では、100年以上の歴史があり、国際的にそれなりの信頼を得ている会計事務所の監査結果が「白」であれば「十分な信頼に値する」というのが世間一般的な見方なのではないかと思います。

USDTの発行元であるテザー社も監査報告のレポートのようなもの?を公式サイト内で公開していますが、監査を行ったのは本拠地を置くヴァージン諸島の民間の会計事務所となっています。

また、その内容についても「透明性に欠ける」という声が非常に多いため、USDTとUSDCは、このような監査を行った会計事務所や監査結果の信憑性にも差が付いているようです。

このような「発行元に対する不信と信頼」や「準備資金の透明性」といった点で、USDTへの風当たりは強くなる一方で「USDCがそのシェア(時価総額)を大きく伸ばしている」という事です。
 

「USDT」「USDC」におけるカウンターパーティリスク。

USTD、USDCなどのステーブルコインが米ドルと等価レートを維持できる理由、仕組みは既に解説した通りですが、これは実質的に「発行元への信用に依存した仕組み」と言えます。

少なくとも、実際にUSDTやUSDCを保有している人の多くは、その仕組みがどういうものかを認識していない人以外は、テザー社やサークル社が各通貨の時価総額と同等の米ドルを保持している事を「信用」しています。

つまり、USDTの価値(レート)は、その「信頼(信用)」によって成り立っているという事です。

よって、何らかの理由で、その「信用」が揺らぐような状況となった場合、USDTやUSDCは、どちらもその価値(レート)を維持できなくなるカウンターパーティリスク(発行元に依存した信用リスク)があるという事です。

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私自身、本年(2021年)の10月あたりまでは、ある程度の「楽観視」を自覚した上で、USDTを一定数量、保有していましたが、現在は保有していた全てのUSDTをBTCに交換しています。

それこそ現在のUSDTは、その「暴落」を狙って、ほぼノーリスクでありながらハイリターンな「空売り」を行える状況にあるため、今後はヘッジファンドなどの格好の標的となる可能性もあるからです。

この事は、bitFlyerの代表取締役である加納裕三氏も指摘していたため、USDTを保有している状況にあるようなら、こちらの記事にも是非、目を通しておいてください。

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bitFlyer加納裕三氏によるテザー暴落を狙った空売り投機予見

私がビットコインのFX(証拠金取引)で実際に利用している海外取引所「bybit」は、BTCを原資とする取引(インバース無期限)と、USDTを原資とする取引(USDT無期限)を選択の上、利用できるようになっています。

一時は「USDT無期限契約」で取引をしていましたが、今はBTCによる「インバース無期限契約」に切り替えているという事です。

>bybit「USDT無期限」と「インバース無期限」の違いと比較>

以上、この記事ではテザー社が発行するUSDT(ドルテザー)と、サークル社が発行するUSDCについて、その違いなどを解説させて頂きました。

ブログ内には今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、併せて参考にしてください。
 

>USDT(ドルテザー)の仕組み、ステーブルコインのリスクとは

>テザー社によるビットフィネックスへのUSDT準備資金流用疑惑の顛末

>bitFlyer加納裕三氏による「テザー暴落」を狙った空売り投機の予見

>通貨の歴史から読み解くテザー問題。ドルペッグ通貨の暴落要因

>bybit、USDT無期限とインバース無期限契約の違いと比較
 

本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。