bybitにおけるビットコインのFX(デリバディブ取引)では『USDT無期限』『インバース無期限』といった2つの取引方法(厳密には「インバース型先物」を含めて3つ)があります。
 

 
この記事では、実際にbybitを利用してビットコインのFX(デリバディブ取引)を行っていく際の「USDT無期限とインバース無期限の違い」やそのメリット、デメリットなどを解説していきます。
 

bybit「USDT無期限」と「インバース無期限」の違いと比較。

そもそもデリバディブ取引(FX)は「証拠金(資金)」をもとに「ポジション」を建て、そのポジションに対する相場の変動によって「損益」が生じていきます。

例えば、日本国内のFXの取引会社などを利用する場合、まずは、そのFX会社に「日本円」を送金して、その日本円を「証拠金」として取引を行っていくわけです。

よって、bybitでデリバディブ取引(FX)を行う場合にも、まず、その元手となる「証拠金」をbybitに送金しなければなりません。

ただ、bybitは日本円の送金を受け付けていないため「USDT(ドルテザー)」か「BTC(ビットコイン)」のいずれかの「仮想通貨」を送金する必要があります。

その後、USDT(ドルテザー)を証拠金として取引(FX)を行っていくのがUSDT無期限、BTC(ビットコイン)を証拠金として取引(FX)を行っていくのがインバース無期限というわけです。

その上で「USDT無期限」と「インバース無期限」は、取引画面も別モノになっていますが、取引上の違いは実質的に『原資(証拠金)の違い』くらいで、それ以外の違いほぼありません。

bybitにUSDT(ドルテザー)を送金してデリバディブ取引(FX)を行う場合は「USDT無期限」を選択し、BTC(ビットコイン)を送金して取引を行う場合は「インバース無期限」を選択すれば良いという事です。

日本国内の仮想通貨取引所ですと、BTCはどこの取引所でも売買できると思いますが、USDTを売買できる取引所は少ないため、BTCを送金して利用している人が大半だと思います。

また、bybitでは送金後に仮想通貨を「交換」する事もできるため、USDTを送金してBTCに交換する事もできれば、BTCを送金してUSDTに交換する事もできます。

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その上で「USDT無期限」による取引ではUSDTを証拠金としてポジションを建てる形となり、ポジションを決済すると、その時点の損益分だけUSDTが増減します。

インバース無期限の場合はBTCを証拠金としてポジションを建てる形となり、ポジションを決済すると、その時点の損益分だけBTCが増減するというわけです。
 

「USDT」を証拠金にUSDTを稼ぐか「BTC」を証拠金にBTCを稼ぐか。

USDT無期限とインバース無期限の取引上の違いは「それだけ」と言えばそうなのですが、このどちらを主とするかで『bybitに置いておく仮想通貨(資金)』が変わってきます。

USDT無期限による取引を主とするのであれば、bybitにUSDTを置く事になり、インバース無期限による取引を主とするのであれば、BTCを置いておく事になるからです。

その際、USDTであれば、USDTは米ドルとのペッグレートが前提となっていますので、日本円に対するレートという点でも、BTCほど大きな変動は生じません。

ですが、BTCの場合は日によっては1日に数十万円のレート変動があるため、日本円で換算した場合の資産価値は、その変動によって、日々、増減する事になります。

最終的にビットコインの価値(レート)がどんどん上がっていくのであれば問題ありませんが、その価値(レート)がどんどん下がっていった場合、それが実質的な「損失」になるわけです。

それこそFXで得たリターンを定期的、またはどこかのタイミングで引き出す事を前提とするなら、BTCのレート変動が実質的な損益を大きく左右してしまいます。

つまり、インバース無期限による取引を前提として、bybitにBTCを置いておく状況は「ビットコインの現物をホールド(保持)し続ける事」と同義のため、そこにはレート変動の「リスク」が伴います。

そのような「リスク」を避けたいのであれば、bybitには「BTC」ではなく「USDT」を保有して、USDT無期限の方で取引を行っていけば良いという事です。

▼ インバース型先物とは?

また「USDT無期限」「インバース無期限」とは別にある『インバース型先物』は、BTCを証拠金とした「先物取引」となっています。

ここで言う「先物取引」と「無期限(取引)」の違いは、ポジションにおける「期限」の有無で、先物取引の場合は以下に記載されている表記部分が「(強制)決済」の日付を意味しています。

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BTCUSD1231(12月2021先物)の決済期日は『2021年12月31日』であり、BTCUSD0325(12月2022先物)の決済期日は『2022年3月25日』です。

要するにインバース型先物のポジションは、上記の期日で強制解消(決済)されてしまうという事であり、対するUSDT無期限、インバース無期限には、そのような決済期日は無いという事です。

BTC(ビットコイン)はリスク資産、USDT(ドルテザー)は安全資産?

ただ、現時点では米ドルとの等価レートを維持しているUSDT(ドルテザー)も、今後も、その等価レートを同様に維持し続けられるかどうかは分からない部分があります。

そもそもUSDTが米ドルとの等価レートを維持できているのは、発行元であるテザー・ホールディングス(Tether Holdings、以下テザー社)が米ドルとの等価交換(1USD = 1USDT)に応じているからです。

その上で、USDTは、その発行元であるテザー社が『発行したUSDTと同額の米ドルを保全している』とした上で、その前提こそが「価値(レート)の裏付け」となっています。

USDT(ドルテザー)が米ドルと等価の価値を維持している仕組みやそのリスクなどについては、以下の記事で別途、詳しく解説していますので併せて参考にしてください。

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USDT(ドルテザー)とは。ステーブルコインの仕組みとリスク

ただ、このようなUSDTの仕組みは、その発行元である「テザー社の信用」に依存したものになっているのが実情と言えます。

よって、何らかの理由で、その「信用」が揺らぐような状況となった場合、USDTは、その価値(レート)を維持できなくなるカウンターパーティリスク(発行元の信用リスク)があります。

また、テザー社の方も『USDTが米ドルと等価価値を維持される事』や『米ドルとの等価交換に応じる事』の「保証」は、公式サイト内の「免責事項」で明確に避けています。

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No Representations & Warranties by Tether: Tether makes no representations, warranties, or guarantees to you of any kind.

(翻訳)テザーによる表明および保証の禁止:テザーは、いかなる種類の表明、保証、も行いません。

(引用元:Tether Limited社公式サイト/https://tether.to/legal/)
本来、顧客から資金を「預かる事」を生業としている銀行などは、顧客から受け入れている預金の一定比率を「準備金」として中央銀行などの預ける『準備預金制度』のもとで運営されています。

それに伴い、顧客から受け入れた資金に対する準備金の算出などを含めて、その財務状況などの「透明性」が追従されるようになっているわけです。

ですがテザー社はタックスヘイブン(租税回避地)のイギリス領ヴァージン諸島で設立されている法人であり、米国において銀行業を営む認可を得ているわけでもありません。

そのため、米国における準備金制度などの対象にもならない事から、実質的に顧客から払い込まれた米ドルを含め、その資産状況、準備金の所在などが不透明な形になっています。

故に、本当に発行したUSDTと同額のUSD(米ドル)を保有しているのか、そして、その多額の資金をどのような形で保有しているのか。

その「真偽」や「透明性」に対して『拭いきれない疑惑がある』という事です。

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私自身、本年(2021年)の10月あたりまでは、ある程度の「楽観視」を自覚した上で、USDTを一定数量、保有していましたが、現在は「これ以上の楽観視は危険」と判断した上で、保有していたUSDTは全てBTCに交換しました。

ニューヨーク州司法当局の提訴から始まった「テザー疑惑」の一連の流れ、それと共に一部公表されたテザー社の資産状況。

米ドルとの等価レートを、より透明性の高い形で裏付けている「USD Coin(USDC)」が時価総額を伸ばしている点など「USDTを楽観視できない懸念材料が揃い過ぎた」というのが私の率直な印象です。

USD Coin(USDC)はUSDTと同じステーブルコインの1つですが、その急成長は、USDTへの不信に伴い、既存のUSDTホルダーが「乗り換え」を行っている傾向にあると考えられます。

>USDT(テザー)とUSDCの違いと比較、テザー衰退の予兆。

また、そのような状況を踏まえて、USDTは、その「暴落」を狙って、ほぼノーリスクでありながら「ハイリターン」を狙えるため、今後はヘッジファンドなどの格好の標的にされる可能性もあります。

この事は、bitFlyerの代表取締役である加納裕三氏も指摘した件も含めて、以下の記事で詳しく言及していますので、併せて参考にしてください。

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bitFlyer加納裕三氏によるテザー暴落を狙った空売り投機予見

すでにお伝えした通り、bybitにBTCを置いておく状況は「ビットコインの現物をホールド(保持)し続ける事」と同義のため、そこにはレート変動の「リスク」が伴います。

ですが、そのような「ビットコイン保有時における値下がりのリスク(損失)を実質的に回避する方法」があります。

その方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、bybitの利用を検討している場合は、是非、こちらも併せて参考にしてください。

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仮想通貨、ビットコインの投資リスクを避けて堅実に稼ぐ方法

以上、本記事ではbybitの「USDT無期限」と「インバース無期限」の違いと、そのメリット、デメリットをそれぞれ解説させて頂きました。

ブログ内には今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、併せて参考にしてください。
 

>USDT(ドルテザー)の仕組み、ステーブルコインのリスクとは。

>テザー社によるビットフィネックスへのUSDT準備資金流用疑惑の顛末

>USDT(テザー)とUSDCの違いと比較、テザー衰退の予兆。

>bitFlyer加納裕三氏による「テザー暴落」を狙った空売り投機の予見

>通貨の歴史から読み解くテザー問題。ドルペッグ通貨の暴落要因

 
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。