FX、トレードなどで過去の相場の値動き(チャート)を分析していく「テクニカル分析」においては『カーブフィッティング』に注意を払う必要があります。

カーブフィッティングは「曲線あてはめ」「曲線回帰」とも呼ばれるもので、すでに収集できているデータを対象に、そのデータが再現されるルールやロジックを逆算的に導き出す事を言います。

つまり、テクニカル分析における『カーブフィッティング』は、過去から現在に至るまでの値動きのデータ(チャート)から、

・相場の上昇を判断できる条件(パターン)
・相場の下降を判断できる条件(パターン)

などをテクニカル指標、インジケーターなどから「後付け」で導き出し、その条件(パターン)に基づくトレードルールなどを作り出していく事を言います。

ただ、実際のFXで『カーブフィッティング』によって導き出したテクニカル分析の条件や、それに基づくトレードルールで取引(売買)を行っていったとしても、まず勝つ事(稼ぐ事)は出来ません。

どんなに「過去の相場(チャート)」に対して「必勝」に近いトレードルールを導き出していたとしても、まず「現実の相場では通用しない」という事です。
 

カーブフィッティングによる「後付けのロジック」では勝てない理由。

過去の値動きに対して、多様なテクニカル指標やインジケーターを用いて強引なルールをこじつけていけば、過去の相場においては「必勝に近いルール」を作り出す事も決して不可能ではありません。

すでに定まっている「過去の値動き」に対して、完全な「後付け」で、売買の条件を定めていくのですから、その「勝率」や「パフォーマンス」は、いくらでも向上させる事が出来ます。

つまり『バックテスト』と呼ばれるような、過去の値動きに対する勝率、パフォーマンスなどの検証結果は『カーブフィッティング』によって、幾らでも向上できるという事です。

ですが、これは「過去の値動きをなぞる形」で売買の条件を強引に「こじつけている」に過ぎず、そのような行為は、そもそもの「テクニカル分析の本質とは明らかにズレた行為」になってしまっています。

どんなに多くのテクニカル指標やインジケーターを多用しようとも、ただ「過去の値動きをなぞっていくような行為」は、実質的に『テクニカル分析には該当しない』という事です。

そもそも「テクニカル分析」は、値動きの動向を目にしている投資家達、トレーダー達の心理的な「傾向」や、そこから生じる売買の「偏り」などを分析していく事。

そして、その心理傾向から生じる売買の偏りなどから生じる値動きのパターンを統計的な視点で捉えていく事に、その「本質」があります。

そのような「本質」に対して、ただ過去の値動きをなぞる形で売買の条件をこじつけていく『カーブフィッティング』に該当する行為は、明らかにその根底的な部分を「度外視」しています。

投資家心理とそれに伴う売買傾向の統計分析こそが、テクニカル分析の本質に他ならないため、この本質を度外視した形では、当然、そのような「心理傾向」を捉える事もできないという事です。
 

テクニカル分析 = 投資家心理とそれに伴う売買傾向の統計分析

相場の値動きを単純に予測すれば、相場が「上がるか」「下がるか」の二者択一のため、そのような『上げ下げの予測』は、偶然の範囲でも『そこに偏りが生じていく可能性』も十分にありえます。

よって、テクニカル指標やインジケーターに対する値動きの上げ下げは、そのような「偶然の偏り」の範疇でも、一定確率の偏りや規則性(に見えるもの)を導き出せてしまうのが実情です。

『この指標がこうなっていれば、高い確率で相場は上がる(下がる)』

仮にこのような傾向や規則性を過去の相場から導き出せたとしても、それはただの「偶然の結果(偶発的な確率の偏り)」に過ぎない可能性もあるという事です。

むしろ、多種多様なテクニカル指標やインジケーターに対して、相場の値動きを照らし合わせたなら、そこには「偶然の偏り」や「偶然の規則性」が幾らでも見つかるはずです。

よって「過去の値動き(チャート)に対するカーブフィッティング」によって、

『このような条件でトレードをしていれば勝てていた』

というルールを導き出していった場合、それは極めて高い確率で「偶然の値動きをなぞっただけのルール」になってしまいます。

ですが、そのような「偶然の傾向」や「偶然の規則性」は、あくまでも「偶然」の産物でしかないため、その偶然が続かない限りは、それらが実際の相場で再現され続ける事はありません。

現実の相場において、実際に再現され続けるような値動きは、投資家心理の統計的な傾向に基づく売買から生じるような「テクニカル分析の本質に沿った値動きに限られる」という事です。
 

「偶然の傾向」ではなく「心理統計に基づく傾向」を導き出す。

テクニカル分析では、あくまでも「過去の値動き」を分析していく形になるものの、

・投資家心理の動向に基づく売買の偏り
・その売買の偏り伴う形で生じていく値動きの傾向

これらを統計的な視点で分析していく事がテクニカル分析の本質に他ならないため、これは漠然と過去の値動きをなぞっていくような行為とは全くもって異なります。

よって、実際に「テクニカル分析」を行っていく場合には、その分析基準や、それに基づく形で定めた売買の条件やルールなどが、

・その在るべき本質に沿ったものになっているか
 ⇒ 投資家心理に伴う売買の傾向を捉えるものになっているか
・その在るべき本質からズレたものになっていないか
 ⇒ 投資家心理の統計分析を度外視したカーブフィッティングになっていないか

これらを1つの「基準」とした上で、あくまでも、その「本質」に沿った視点で過去の相場を分析し、それに基づく売買の条件やルールを導き出していく必要があります。

ただ、世の中の多くのトレーダーが行っているテクニカル分析は、自覚があるかどうかは別として、その大半が、然るべき「本質」には沿っていないのが実情です。

大半のトレーダーが、ただ過去の値動きをなぞっていくだけの『カーブフィッティング』によって、売買の条件やトレードルールを定めている傾向にあるという事です。

そして、その主な要因は、テクニカル指標やインジケーターの「使い方」にあります。

そもそも、テクニカル分析における「指標」や「インジケーター」は、その1つ1つが在るべき「本質」に沿った統計分析を行っていくための「理論」や「ロジック」を有しています。

よって、それらを用いて然るべき本質に沿ったテクニカル分析を行っていくには、当然、その理論やロジックに沿った「使い方」をしなければなりません。

ですが、実際にテクニカル分析を行っているトレーダーの多くは、自らが利用している指標やインジケーターの然るべき理論やロジックをほとんど把握していない傾向にあります。

つまり、テクニカル分析の本質に沿った統計分析を行うための理論やロジックをほぼ無視した上で『ただのカーブフィッティング(値動きのあてはめ)にそれらを利用している』という事です。

▼ 投資系の情報商材、トレードツールの大半は「カーブフィッティング」の産物

過去の相場を対象に「カーブフィッティング」を行っていけば、それこそ、過去の相場に対しては非常に高い勝率とパフォーマンスを実現できるようなトレードルールを「後付け」で作り出せます。

つまり、カーブフィッティングを行っていけば、

『過去の相場に対してこれくらい有効だった。』

と言えるようなノウハウやトレードツールを実質的に幾らでも「量産」できるという事です。

よって、ネット上で販売されている、いわゆる「情報商材」と呼ばれる投資関連、FX関連のノウハウやトレードツ―ルなどは、その大半がカーブフィッティングによって作り出されています。

そのような「情報商材」は、これまでの相場でどれくらい有効だったのか(勝てているのか)のアピールが基本的な「売り文句」となるため、

・過去の相場を対象とする勝率やパフォーマンス
・過去の相場を対象としたバックテストの結果

これらを上々なものにする上では、カーブフィッティングはこの上なく「好都合」なわけです。

ですが、その販売ページの売り文句となっていた勝率やパフォーマンスを現実の相場で実現できるような情報商材は皆無に等しく、それらのほとんどは、まず実際の相場では通用しません。

これはまさに、その情報商材を介して提供されているノウハウやツールのロジックが『カーブフィッティングによって作り出されている事に起因している』ということです。

テクニカル指標、インジケーターの「本質」に沿って使いこなす。

よって、テクニカル分析における「指標」や「インジケーター」は、あくまでも「投資家心理の統計分析」を前提とする形で利用していく必要があります。

そのような統計分析を前提に『然るべき理論やロジックに沿った使い方をする必要がある』という事です。

そして、これは複数のテクニカル指標やインジケーターを組み合わせて併用する場合も同じであり、それらをやみくもに併用する行為もカーブフィッティングの原因となってしまいます。

テクニカル指標やインジケーターを然るべき理論やロジックを無視する形で、過去の値動きにただ当てはめていく行為は、まさにテクニカル分析の本質を無視したカーブフィッティングに他ならないという事です。

ただ、世の中のトレーダーの多くが行っているテクニカル分析やそれに基づくトレードは、全くもって、その「本質」に沿ったものにはなっていません。

だからこそ、現実に大多数のトレーダーが実際のトレードで「勝てていない」わけです。

▼ バックテストの結果はアテにならない?

有効なトレードルールを追及していく上で、過去の相場(チャート)を対象とする「バックテスト」の結果が上々である事は「必須条件」ではありますが「十分条件」ではありません。

過去の相場の値動きに対しても、その売買のルールが「有効」である事は必要不可欠であるものの、それだけでは、決してその有効性を断定する事は出来ないという事です。

それこそ「カーブフィッティング」を施していけば、過去の相場を対象とする勝率やパフォーマンスは、実質的にいくらでも良好なものにしていく事ができるからです。

そして、これはFX関連の情報商材を介して提供されるノウハウやトレードツールなどを対象とする形でも同じ事が言えます。

よって、そのような情報商材の販売ページなどに公開されているような「バックテストの結果」は、実際のところ、そのノウハウやツールの有効性を裏付けるものにはなりません。

自ら追及し、確立していったトレードルールなども含めて、そのロジックの有効性は、

・フォワードテスト(実際の相場を対象とした検証テスト)
・デモトレードまたはリアルトレード(実際の相場を対象とした売買)

これらの結果こそが最も重要であり、その上で『これらの長期的な結果やパフォーマンスこそが確固たる有効性の裏付けになる』という事です。

***

故に私は、常に実際の相場を対象とした「リアル検証(リアルトレード)」を継続的に行い、その経過や結果なども併せて、以下のツイッターを介してリアルタイムな形で公開し続けているわけです。

↓↓↓

テクニカルトレードと統計心理学、管理人Yのトレード公開用ツイッター

2019年:勝ちトレード/ 29件 負けトレード/1件(勝率:96.6%)※7月より開始
2020年:勝ちトレード/102件 負けトレード/1件(勝率:99.02%)
2021年:勝ちトレード/ 72件 負けトレード/0件(勝率:100%)※6月時点

>Twitterによる公開トレードの勝率、パフォーマンス一覧

ここで言及した「バックテスト」と、その結果に伴うトレードルールの有効性判断については、以下の記事でも詳しく言及していますので、併せて参考にしてください。

↓↓↓

バックテストの検証結果とトレードルールの有効性判断の考察。

 
以上、本講義では、テクニカル分析における『カーブフィッティング』について言及させて頂きました。

本講義で言及したテクニカル分析の本質に沿った「テクニカル指標」や「インジケーター」の使い方、組み合わせ方については、以下の講義でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

↓↓↓

有効なテクニカル分析と無意味なテクニカル分析の決定的な違い。

テクニカル指標の使い方と「理論」「計算式」の関係性について

テクニカル指標の「有効な組み合わせ」を導き出す原則について

 
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。