テクニカル分析(チャート分析)における「トレンド転換の指針となるシグナル」の1つに「ダブルトップ」「ダブルボトム」と呼ばれるサインがあります。
相場が高値更新を続けて上昇していった場合や、相場が安値更新を続けて下降していった場合にこれらのシグナルが現れたタイミングで「トレンド転換の可能性が生じる」と言われています。
では、何故、これらの「ダブルトップ」「ダブルボトム」と呼ばれるシグナルが『トレンドの転換を知らせるサイン』と言われているのか。
この講義では、その背景にある理由や要因(心理要因)を紐解くと共に、これらのシグナルをより有効に実用していくための基準などを考察していきたいと思います。
「ダブルトップ」「ダブルボトム」のシグナルにおける心理的な背景。
この「ダブルトップ」「ダブルボトム」は『ダウ理論』という、相場の値動きにおける原則的な理論に基づくシグナルとなっています。
本来は6つの原則から構成されているダウ理論ですが、最もシンプルで分かり易い相場の原則として、
-トレンドの終わりには転換のシグナル(サイン)が伴う。 |
この原則が「ダブルトップ」「ダブルボトム」のシグナルの根幹にあります。
ダウ理論の「6つの基本原則」については以下の記事でそれぞれの理論を解説していますので、こちらも併せて参考にしてください。
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その上で、トレンドの終わり(転換)と継続(進行)の判断は『価格更新の有無』が基本原則であり、
・高値更新 → 上昇トレンドの継続 ・安値更新 → 下降トレンドの継続 |
これが相場の「トレンド」を捉えていく視点の「根底」となっています。
高値更新、安値更新がある限り、その方向へのトレンドは「継続している」と見るのがダウ理論に沿ったトレンド判断の基本原則になっているという事です。
よって、トレンドの「転換」は、それとは逆の視点が基本となるため「高値更新、安値更新が阻まれた状況をトレンド転換のシグナル(サイン)」と判断します。
つまり、値動きの動向として「高値更新」「安値更新」が阻まれた状況にあたるのが「ダブルトップ」「ダブルボトム」のシグナルが現れた状況に他ならないという事です。
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相場の高値更新、安値更新が阻まれた = トレンドの継続が阻まれた
よって、上記の図で言うと「安値2」「高値2」のポイントで相場が折り返す形となった時点で「ひとまずは安値更新、高値更新が阻まれた状況が成立」という事になります。
その時点で、第一段階の「ダブルトップ」「ダブルボトム」の形状(エントリーポイント1)が成立するという事です。
ただ「シグナルの成立判断」や、それに伴う「エントリー」は、そこから『高値間の安値』『安値間の高値』まで相場が進行した時点(エントリーポイント2)を狙うトレーダーも多い傾向にあります。
これは「トレンド反転方向の高値、安値の更新」も併せて伴ったタイミングで、
・高値、安値の更新が阻まれた → トレンド転換のシグナル ・反転方向の高値、安値の更新があった → 反転方向へのトレンド確定シグナル |
この2つのシグナルから、より高い確実性を求める視点でトレンドの転換と反転方向への進行を判断しているわけです。
その上で、実際の「確率」と「傾向」の上でも「安値2」の『エントリーポイント1』の段階では、また更に相場がトレンドを継続して安値更新、高値更新となる事も多い傾向にあります。
よって「高値間の安値」「安値間の高値」を相場が抜けた時点の『エントリーポイント2』を狙ってポジションを建てていく方が「勝率は高くなる」という事です。
ですが『エントリーポイント2』のポイントから相場が逆方向に戻ってくる事も当然、ありえるため、必ずしも『エントリーポイント2』のポイントが安全というわけではありません。
仮に安値、高値更新のレートを『損切り』のレートとするなら、いわゆる「リスクリワード(リスクの範囲に対するリターンの大きさ)」は『エントリーポイント1』の方が明らかに好条件となります。
つまり、勝率を重視するのであれば『エントリーポイント2』のポイントからのトレードが有利ですがリスクリワードを重視するのであれば『エントリーポイント1』の方に優位性があるという事です。 |
「ダブルトップ」「ダブルボトム」のチャート事例。
以下は、ビットコイン(BTC/JPY)のチャート上に「ダブルトップ」のシグナルが実際に現れた場面と、その後の値動き(トレンド)の経過状況を示したチャート画像になります。
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ビットコインの2017年末頃の、この当時の最高値レートで綺麗なダブルトップが形成されている事が分かります。
今(2021年3月中旬)でこそ、ビットコインは600万円台を超えていますが、この2017年頃は200万円台を超えた時点で「仮想通貨バブル」「億り人」という言葉が飛び交っていました。
ただ、このダブルトップのシグナル以降、BTCレートは急落して100万円台を割り込んでいく形となったため、あくまでも結果論ですが「これがトレンド転換のシグナルとなった可能性」は否定できません。
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ただ、このような高値、安値の「更新の有無」を捉えるシグナル(サイン)は、
・ローソク足のヒゲでシグナルを判断するのか ・ローソク足の実体でシグナルを判断するのか ・何時間、何分足のローソク足でシグナルを見るのか |
といった違いで、実際の「シグナル」やそれに伴う「判断」も変わってきます。
実際に上記のチャート事例でも、
このようにシビアに見ると、ローソク足の「実体」の判断ではダブルトップが成立していますが、ローソク足の「ヒゲ」の判断では、ギリギリのところで「ダブルトップ」は成立していません。
つまり「ローソク足のヒゲによるダブルトップを狙う」というシグナル(サイン)を対象にしているトレーダーであれば、売りポジションを建てられないまま、相場を見送っていた事になるわけです。
また、これは「1日足」のチャートとなっていますが、同じ相場でも「主軸としている時間足」が異なれば、当然、ローソク足の形状も変わります。
以下、上記と同じポイントを「4時間足」で見た場合のチャートです。
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こちらの通り「4時間足」でシグナル(サイン)を判断していた場合、
・ローソク足のヒゲによる判断であればダブルトップに届いていない ・ローソク足の実体による判断であれば高値更新の「継続シグナル」が出ている |
という事になるため、仮に4時間足を主体に「トレンドの継続」と判断していたトレーダーであれば、ここから買いポジションを建てていたかもしれません。
このような「高値」「安値」とその「更新の有無」を捉えるシグナルは、ローソク足のヒゲと実体、また、見ているチャートの時間足によって、その判断は全く違ったものになります。
故に、多くのトレーダーは、このようなシグナルのみで売り買いの判断を下すのではなく、
・複数の時間足のシグナルを踏まえて複合的な裁量判断で売り買いを決める ・他のテクニカル指標を交えた複合的な判断で売り買いを決める |
このような形で、独自にプラスαの判断基準を作っている場合がほとんどです。
そのようなプラスαの判断基準の優位性が、実際のトレードにおける「勝ち負け」や「損益」を大きく左右していくという事です。
ちなみに私の場合は、このようなシグナルを強いて意識したトレードを行っているわけではなく、基本的には1つの指標を用いた形のトレンド判断やトレード判断を主軸としています。 ただ、その上でのトレンド判断、トレード判断の結果が、このようなシグナルに沿ってトレードになっているケースは珍しくありません。 私独自の1つの指標を用いたテクニカル判断が結果的に、ダウ理論における、このようなシグナルと一致する事も珍しくはないという事です。 |
「ダブルトップ」「ダブルボトム」の不成立・ダマしのチャート事例。
続いて、このシグナルの不成立パターンやダマしパターンのチャート事例を示していきます。
以下はビットコインの2021年2月序順の日足チャートで、先ほど例に挙げた2017年12月頃のチャートと同じように「最高値の更新レート」でダブルトップが形成された状況にある事が分かります。
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ただ、この時のダブルトップのシグナルは2017年12月のような「トレンド転換のシグナル」には至らず、その2日後のローソク足で、大きく高値更新され、上昇トレンドが継続する形となっています。
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ただ、再び3月の序順で2度目のダブルトップの形状が成立したものの・・・
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同じく2度目のダブルトップでも、ビットコインの相場は高値更新となり、上昇トレンドが継続する形となっている事がお分かり頂けると思います。
このように2017年12月のダブルトップのシグナルは、見事にトレンド転換のシグナルとなっていたものの、2021年の相場では1度2度とその形状を崩して高値更新を続けていく相場となっているわけです。
ただ、ここで例に挙げた2つのダブルトップの不成立チャートは、以下の画像で言うところの『エントリーポイント1』の段階に視点を向けたものになっています。
少なくとも、2021年2月と3月のダブルトップは、どちらもダブルトップ高値間の安値を更新する『エントリーポイント2』のポイントに至る前の段階で「高値更新」となっている事が分かります。
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仮に、2021年2月と3月のダブルトップを『エントリーポイント2』の段階に至るまで見送る判断を下していれば、どちらのケースも「売りポジション」を建てる事自体を避けられているという事です。
ただ、このような「ダブルトップ高値間の安値」「ダブルボトム安値間の高値」をレートが安値更新、高値更新していても、それがトレンド転換のシグナルにならないケースもあります。
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同じく、ビットコインのチャート画像になりますが、この時の相場は84万円台のレートでダブルボトムが形成され、その安値間の高値の更新にも至っている事がお分かり頂けると思います。
以下、このダブルボトム形成後の実際の値動きを示すBTCチャートです。
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ダブルボトムの形成と、その安値間の高値更新が伴って以降、そこからほぼレートが上昇する事なく、相場が下降傾向となった上で「安値更新」に至っている事がお分かり頂けると思います。
この時のダブルボトムのシグナルは、その安値間の更新まで伴ったにも関わらず、レートが安値更新となっているため、いわゆる「ダマし」と言えるような値動きが伴ったという事です。
シグナル「成立」のダマし。シグナル「不成立」のダマし。
ただ、相場の値動きにおける「ダマし」には、
・シグナル「成立」に伴うダマし相場 ・シグナル「不成立」に伴うダマし相場 |
があり、先ほど例に挙げた「ダマし」はまさに『シグナル成立に伴うダマし相場』に該当します。
ただ、先ほどの「ダマし相場」の後の値動きを更に追いかけてみると・・
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このように「安値更新」があり、一見、再び下降トレンドを継続するかのように見せかけた矢先で、大きく相場が上昇方向にブレイクしています。
まさに、この時の相場は『シグナル不成立に伴うダマし相場も伴った』という事であり、
・ダブルボトム成立時点で上昇トレンドへの反転を見越して「買う」 ・ダブルボトム不成立時点で下降トレンド継続を見越して「売る」 |
このようなトレードを行っていた場合は2つのダマし相場で、まさに往復ビンタの2度の負けトレードに伴う損失を伴っていた事になります。
とくに、この時の相場は「ダブルボトム」というシグナルを意識しているようなトレーダーを作為的に翻弄するかのような値動きが伴っているように見えなくもありません。
これはビットコインの相場に限らず、相場においては「有名どころのシグナルに頼るトレーダーをあえて陥れるような値動き」が実際に『ある』わけです。
▼「ダマし」を見越して損切りを「しない」という判断はアリなのか。この記事では、あえて「分かり易いダマし相場の事例」を挙げているため、このような相場が、そこまで頻繁にあるのかと言えば、実際はそうではありません。むしろ傾向と確率で言えば、このようなのシグナルは、少なくとも50%以上のアドバンテージは伴うものであり、高値更新、安値更新が続く相場のトレンドが継続する可能性が高いのも事実です。
故に「ダブルボトム」「ダブルトップ」のシグナルに沿ってポジションを建てる場合、これらのシグナルを崩してレートが高値、安値更新となる場合は、やはり『トレンドの継続』という判断を下すのが賢明と言えます。 「高値、安値更新があったとしても、相場が反転する可能性が高い」 という確信があるなら別ですが、そうはない限りは、高値、安値の更新時点で「損切り」を行うのが無難という事です。 |
トレンド転換は「全体像」と「段階」を踏まえた「シグナル」で捉える
ここで解説した「ダブルトップ」「ダブルボトム」に限らず、このようなシグナルを実用していく際においては『トレンドの全体像や段階の把握』が極めて重要になります。
そもそも、これらのシグナルの根幹にあるダウ理論そのものが「日足チャート」のような、ある程度の長時間足を対象とした理論となっていた点からも、ここで解説したようなシグナルは全般的に、
・長時間足のチャートで実用するほど有効性が高い ・短時間足のチャートで実用するほどダマしが多くなる |
とされているものであり、これは事実として、そのような傾向にあります。
例えば以下は「5分足」のチャート上に見られたダブルトップのポイントに印をつけていったものですが、ことどとく、シグナルを無視する形で相場が高値更新を続けている事がお分かり頂けるはずです。
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つまり、このようなシグナルは、多くのFXトレーダーが主軸にしている1時間足、5分足といった短時間足のチャートで実用する場合は尚の事、トレンドの全体や段階を踏まえて利用する必要があるという事です。
ダウ理論における「トレンドの全体像」や「トレンドの段階」については別途、以下のようなブログ講座がありますので、こちらも併せて参考にしてください。
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また、このようなチャートの形状やローソク足によるトレンド転換のシグナルは、
・シグナルそのものがトレンド転換の引き金になっている ・トレンド転換が生じている相場において統計上、シグナルが発生しやすくなる |
このような2つの捉え方があり、これが「どちらなのか」は『卵と鶏のパラドックス(卵が先か、鶏が先か)』のように、厳密には分からない部分でもあります。
ただ、仮に前者の「シグナルそのものが引き金になっている」という前提が成り立つとしても、それが引き金になっていないケースもある以上、合理的な考え方はやはり、後者の「統計的な傾向」に他なりません。
とは言え、多くのトレーダーがこのようなシグナルを指針としている傾向上、シグナルが現れた事が偏った売買の引き金や追い風になっているケースが無いとは言い切れない側面もあります。
いずれにしても「これらのシグナルは決して確定的なものではない」という事です。
その上で、これらのシグナルはいずれも値動きに準じたローソク足の形状によって成立していくサインである以上は「偶然の結果」として値動きの推移がシグナルの形状を作り出してしまう事もありえます。
そのような場合に、
・シグナルそのものがトレンドの引き金にはならない場合もある ・シグナルが現れるのは、あくまでも統計上の傾向でしかない |
このような前提においては、当然、偶然の結果として確定しただけのシグナルに沿ったトレードには、ほぼ優位性が無い事になります。
まさに短時間足のチャートを主軸とする場合には、このような「偶然の結果として確定したサイン」が頻発する事になるため、これらのシグナルを短時間足で利用する場合ほど「ダマし」が多くなるわけです。
▼ トレンドに基づく値動きの動向を「99%の精度」で見極める。テクニカル分析やトレードの手法は、多種多様、色々なノウハウがありますが、少なくとも私が以下のツイッターを介して行っている「公開トレード」で、
このような「常勝」に近い勝率を実現できているのは、まさにトレンドの「始まり」と「終わり」を押さえて『まず負けようがないところだけを狙ってトレードを行っているから』に他なりません。 ↓↓↓ テクニカルトレードと統計心理学、管理人Yのトレード公開用ツイッター >Twitterによる公開トレードの勝率、パフォーマンス一覧 |
以上、この講義では「ダブルトップ」「ダブルボトム」のトレンド転換の指針となるシグナルについて解説させて頂きました。
ただ「ダブルトップ」「ダブルボトム」のようなトレンド転換のシグナルの多くは「ダウ理論」に基づくものになっているのが実情です。
ダウ理論については、それを担う原則的理論に基づく個別の講義をご用意していますので、こちらも併せて参考にしてみてください。
>ダウ理論基礎講習:テクニカル分析における6つの基本原則 >ダウ理論実践講習:主要トレンドに内在する二次トレンド・三次トレンドの攻略 |
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。