オシレーター系のテクニカル指標(インジケーター)には「ダイバージェンス」と呼ばれるシグナル(サイン)があります。
テクニカル分析におけるジグナルとしても有名なサインの1つですし、FXの情報商材などでも、この「ダイバージェンス」を売買のサインとしているものを私自身、幾つか目にした事があります。
ここでは、そんなオシレーター系指標の「ダイバージェンス」について、
・ダイバージェンスとは、そもそもどういう現象なのか ・どのような理論的背景でダイバージェンスが生じるのか ・何故、ダイバージェンスが有効なジグナルと言われているのか |
これらを言及すると共に、そもそも「ダイバージェンス」がテクニカル分析におけるジグナルとして本当に有効なものなのかどうか。
この「最も重要な部分」を、それらの理論的背景や有効と言われている要因などから考察していきたいと思います。
オシレーター系指標のシグナル「ダイバージェンス」の考察。
オシレーター系のテクニカル指標(インジケーター)は「売買の強弱」や「偏り」を判断するための指標と言われています。
よって、オシレーター系の指標は基本的には、レートの進行方向に沿った形で、その指針や数値を示す傾向にあります。
相場が上昇傾向にあれば、オシレーター系指標は「買い注文が強い」という指針や数値を示す傾向に。
そして、相場が下降傾向にあれば、オシレーター指標は「売り注文が強い」という指針や数値を示す傾向にあるという事です。
ですが、これはあくまでも「傾向」であって、絶対的な特性ではないため、
・相場は上昇傾向にあるがオシレーター系指標の指針、数値は「売り方向」に動く ・相場は下降傾向にあるがオシレーター系指標の指針、数値は「買い方向」に動く |
このような形で、レートの動きとオシレーター系指標の動きが「逆行」するケースがあり、これが「ダイバージェンス」と呼ばれるシグナルに該当します。
そして、この「ダイバージェンス(レートとインジケーターの逆行)」が生じた際は『相場が「転換(反転)」する可能性が高い』とされているため、これを1つの売買のサインにしているトレーダーも多いわけです。
ただ、文面のみでの解説ではイメージが掴みにくいところもあると思いますので、ここからは、有名どころのオシレーター系指標として「RSI」を例に挙げて解説していきます。
RSI(Relative Strength Index)
この「RSI」の一般的な見方、使い方としては、RSIの数値が70(70%)を超えると「買い注文が過剰」と言う見方。
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RSIが70(70%)以上(買い注文が過剰)
逆にRSIの数値が30(30%)を下回ると「売り注文が過剰」と言う見方をします。
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RSIが30(30%)以下(売り注文が過剰)
その上で「過剰な買い注文」や「過剰な買い注文」は『それらが納まっていく方向』で指標を捉えるため、
・RSIの数値が70(70%)以上 ⇒ 売り目線 ・RSIの数値が30(30%)以上 ⇒ 買い目線 |
このような見方が一般的とされている傾向にあり、上記のチャート画像で言えば、このRSIの数値と、それに伴う目線の通りに相場が動いているのが分かります。
ですが、これはあくまでも1つの「傾向」であって、RSIの数値が上記で挙げた数値を超えたから、下回ったからと言って、相場がそこですぐに下がり始める、上がり始めるというわけではありません。
それこそ、強い上昇トレンドや、下降トレンドが継続していく場合は、その数値が「100」や「0」に偏り、その数値がそのまま維持され続けるようなケースも普通にありえます。
つまり「RSIの数値が70を超えたから」「30を下回ったから」と言って、その数値に従うようなポジションを建ててしまうと、
・上昇トレンドの始まりや真っただ中に売りポジションを建ててしまう ・下降トレンドの始まりや真っただ中に買いポジションを建ててしまう |
といった状況に陥ってしまうケースも当然、ありえるという事です。
そして、このような「リスク」は、このRSIに限らず、全てのオシレーター系の指標においても同じ事が言えます。
そこで、そのような状況(リスク)を避けるために、オシレーター系指標を利用しているトレーダーの多くが利用している「指針」が、まさに「ダイバージェンス」というシグナルに他ならないわけです。
オシレーター系指標でダイバージェンス(指標の逆行)が生じる理由。
オシレーター系指標において「ダイバージェンス」が生じる理論的な背景は、大多数のオシレーター系指標に用いられている「平均」の値に要因があります。
同じくRSIを例に挙げて解説しますが、RSIの数値は以下のような計算式で求められたものがチャート上に表示されています。
RSI(%) = 値上がり幅の平均/(値上がり幅の平均+値下がり幅の平均)×100 |
この計算式の上で、レートが高値更新、または安値更新をした状況で「ダイバージェンス」が生じる状況は、一定期間の「平均」の値を計算の対象としている関係上、
新たな計算対象となった数値 < 計算対象から除外された数値 |
このような状況において生じる現象という事になります。
計算式に平均の値を用いている以上、平均値の算出に追加された数値が「高値更新」「安値更新」による数値であっても、平均値の算出から外れた値が大きければ、以下のようにRSIの数値は逆行するわけです。
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結論として「ダイバージェンス(指標の逆行)」が生じる理由、要因は「計算式に基づく結果」であり、また、それは「平均」という概念から生じる必然的な現象に他ならないという事です。
このような数学的要因から、ダイバージェンスという現象と、その有効性を考察する場合、値動きの予測という視点で「最も新しいレートの変動幅を計算の対象とする事の合理性は十分にある」と思います。
ですが「どれくらいの範囲を遡って平均値を算出するべきか」という点では、仮にその対象範囲を「10日」とした場合は必然的に「11日前の数値を無視する」という事になるため、
・10日前までの数値を重要視する理由(根拠) ・11日前の数値を無視しても良い理由(根拠) |
これらに何らかの「合理性」が無ければ「10日間の平均値」を対象とした形で算出した指針そのものにも「合理性」が生まれません。
「平均」の概念を用いるインジケーターは非常に多いものの、ここで言及したような「課題」は、そのようなインジケーター全般に共通するものと言えます。 その「平均値の対象とする期間」をどのような根拠によって定めるか、定めているのかが重要であり、そこにこそ「理」を追及する上での合理性があって然るべきという事です。 |
ただ、この「平均値の対象とするべき期間」については「RSI」を提唱したテクニカルアナリストが『14日間』という期間を提示しているため「RSI」に関しては、その設定期間が「一般的」とされています。
その上で、そのテクニカルアナリストが提唱した「論理」は、
『相場には28日間の周期があり、その半期である14日間を重要視した』 |
このようなもので、そのアナリストの「研究の上での結論」として提唱さているものに基づいて「RSI」を利用するトレーダーは、この論理に沿った形でRSIを利用しています。
この論理の時点で私としては「科学的根拠」や「合理性」に欠けるものを感じてしまうのですが、そのアナリストが、どれくらいの統計と研究を重ねて、この結論を出したのかは明確にはなっていません。 |
ですが、実際に「RSI」を利用する場合、その「平均値」を算出する期間の設定(パラメーター)は「日数」ではなく「ローソク足の本数」で設定する形になっています。
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つまり、1時間足、5分足、1分足といった時間足チャートに表示されるRSIは、
・1時間足であればローソク足14本分、14時間の平均値から算出されるRSI ・5分足であればローソク足14本分、70分間の平均値から算出されるRSI ・1分足であればローソク足14本分、14分間の平均値から算出されるRSI |
このように、そのチャートの時間足に応じたローソク足14本分を対象とする平均値から「RSI」の数値を算出し、それをチャート上に表示させているという事です。
「平均値」を用いるインジケーターに共通して見られる「論理」の破綻。
この「RSI」に限らず、テクニカル分析における指標、インジケーターの多くは「株式相場」を対象とした数日サイクルの値上がり、値下がりの予測を基本前提として作られています。
つまり大多数のインジケーターは、数時間、まして、数十分、数分といったデイトレード、スキャルピングトレードなどを前提として提唱されたものではないという事です。
とくに「平均」の値を取り入れているインジケーターは、その「平均」の対象となる期間を、このRSIのように1週間、1カ月、1年といったサイクルを前提としているものがほとんどなのが実情です。 |
ただ、現代のトレーダーは、そのような論理によって作り出されたインジケーターを1時間足、5分足、1分足といった時間足のチャートに置き換えて利用しています。
1時間、5分、1分といった時間足のチャートでは「14日間を平均値で集計したRSI」を表示させても、インジケーターとしては「ほぼ動きが無い指標」となっていまうからです。
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1時間足のチャートに14日間設定のRSIを表示した場合
故に、RSIなどの「平均」を用いるインジケーターでは「パラメーター」とされる形で、その設定値が「ローソク足の本数」で設定される形となっています。
その上で、RSIに関しては「14という数字だけが受け継がれる形で利用されている」という事です。
ただ、そもそもの「平均」の概念を前提とする上で、
・14本のローソク足の平均値で算出したRSIの数値の合理性 ・15本前のローソク足の数値を除外する事の合理性 |
これらを全く見出せる余地が無いため、少なくとも私は1時間足、5分足、1分足といった時間足チャートにRSIを表示させ、売買の拠り所とする行為には「合理性が無い」と考えています。
現に、ここで言及してきたRSIのダイバージェンスもそうですが、このサイン(ジグナル)によって、相場がサイン通りに動く事もあれば、全くサイン通りに動かない事もあります。
そもそも、相場は「上がるか下がるか」ですから、どんな適応なサインを「サイン」と捉えても『相場がサイン通りに動いた(ように見える)ケース』はいくらでもありえるわけです。
要するにRSIを始めとする「平均」の値を計算式に用いているオシレーター指標の「ダイバージェンス」のジグナルをアテにしたとしても、
「上昇トレンドの初動やその真っ最中に売りポジションを建ててしまう」 「下降トレンドの初動やその真っ最中に買いポジションを建ててしまう」 |
といった状況に陥ってしまう事は現実的な問題として大いにありえます。
故に多くのトレーダーは、また別のテクニカル指標を複数、組み合わるなどの方法で対策を取っているものの、それでも「勝てていないトレーダーが大半」なのが実情という事です。
少なくとも私は「1つの指針では不十分なものを複数の指針で補い合う」というような、複数の指標を併用したテクニカル分析の方向性そのものを否定的に捉えています。 -別の指標を組み合わせなければ使い物にならないような指標やシグナルは、そもそも不必要。 これが私のテクニカル分析における基本的な考えだからです。 このような「テクニカル指標を併用する行為の合理性」については、以下の記事で別途、言及していますので、こちらも併せて参考にしてください。 >テクニカル指標の併用、組み合わせは本当に「有効」なのか。 |
ダイバージェンスの理論的背景は数学的に生じる必然的現象。
大多数のオシレーター系指標は「平均」の値を利用しているか、特定の期間、またはローソク足の本数のみを対象としていく計算式で成り立っています。
故に「ダイバージェンス」と呼ばれる現象は、その数値を算出する期間、または、それと同数のローソク足の本数から算出している数値の変動によって必然的に生じていく現象に他なりません。
もちろん、その「期間」や「ローソク足の本数」のみを対象とした数値を「指針」とする事に対して、確固たる「意味」や「優位性の裏付け」があるなら問題はありません。
ですが、大多数のインジケーターの裏付けは、さほど合理的なものではない場合が多く、利用する時間足によってはその論理さえ破綻している場合がほとんどです。
それでも、このようなインジケーターを支持するトレーダー達の論理は、
「大半のトレーダーが、そのパラーメーター(設定値)で利用しているから」
といった心もとない(少なくとも私としては)拠り所がある程度で、それ以上の「裏付け」のようなものは実質的に「何も無い」という事です。
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ここでは、有名どころのオシレーター系指標としてRSIのダイバージェンスを例に挙げましたが、負けているトレーダーほど、自分が利用しているインジケーターやジグナルの事をよく分かっていません。
重要なのは、その理論的な背景を追及をした上で「相場の動向を予測する上での優位性」を自分自身がしっかりと納得できるかどうか。
その上で、実際の相場を対象とする検証を繰り返して、そのジグナルの優位性を確証できるかどうか。
インジケーターや、そのシグナルをアテにしてトレードを行っていくのであれば、まずは、このようなプロセスをしっかりと踏んでいくべきだと思います。
そのような「裏付け」も「確証」も無い状況で、
「オシレーター系の指標にはこのようなシグナルがある」
「このようなシグナルが出ると相場はこのように動く傾向がある」
このような情報のみを鵜呑みにして、そのようなジグナルに頼る形のトレード(売買)を行っていくのは非常に「危険」だという事です。
ここで言及した「RSI」におけるダイバージェンスへの見解は、私の個人的な考えに過ぎないものですが、ここで言及した「理論」などは、事実をそのまま述べています。 少なくとも私はこのような考え方で、その「理論」や「計算式」を踏まえて、テクニカル分析に利用していくべき指標や、そのジグナルの有効性、合理性を判断しているという事です。 |
以上、本講義ではオシレーター系のテクニカル指標における「ダイバージェンス」について、その代表格の1つである「RSI」を例に挙げて解説させて頂きました。
今回のテーマに関連する講義が幾つかございますので、こちらも是非、参考にして頂ければと思います。
>テクニカル指標の優劣~有効性の高いインジケーターの考察~
>テクニカル指標の使い方と「理論」「計算式」の関係性について
>相場における「絶対的な値動き」とそれを捉えるテクニカル分析について
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。