テクニカル分析の「出発点」は大抵の場合、どのようなテクニカル指標、インジケーターを用いて、どのようなテクニカル分析を行うか、というところが「最初の一歩」になると思います。

そして、その『最初の判断』や『最初にどのようなテクニカル指標、インジケーターに目星を付けるか』で、そのトレーダーが「辿っていく道筋」や「行く末」は大きく変わってきます。

もちろん、どんな物事も途中で大きく方向転換する事は可能ですが、それでも、その「最初の一歩」こそが「成功への道筋」を大きく変える事は間違いないはずです。

そこで、今回の講義はテクニカル分析に用いるテクニカル指標やインジケーターを「最初に選ぶ段階」において、どのような視点で、それらを判断するべきなのか。

その「最初の一歩」を限りなく最善なものにするための指針となるような考え方、判断のポイントなどをお伝えしていきたいと思います。

テクニカル指標、インジケーターは「計算式」から有効性を読み解く。

私が兼ねてから、このブログや自身のメルマガを介して『テクニカル分析は理を徹底的に追及しなければならない』という事を一貫してお伝えしています。

テクニカル分析は、突き詰めれば「統計」や「確率」の世界ですから、その「分析」を伴う行為には必ず、一定の「理」が存在しなければなりません。

いわゆる「数理統計」「心理統計」といった、これらの視点で優位な分析、有効性を伴う分析を行っていく必要があるという事です。

それらの視点の上で本当の意味で有効なテクニカル分析を行っていく事を徹底しなければ、まず合理的な値動きの予測を行っていく事もできません。

よって、どのようなテクニカル指標やインジケーターで、どのようなテクニカル分析を行うべきか、というところも、やはり「在るべき理を追及する視点」で考える必要があります。

ただ、これは一見は難しい事を言っているようで、いざ具体的に行うべき事、現実的に行うべき事は、そこまで複雑な事でも何でもありません。

結局のところ、1つ1つのテクニカル指標やインジケーターには、それぞれに「成り立ち」「理論」「計算式」などが存在しますから『それらを踏まえて合理性、有効性を判断していけば良い』という事です。

そもそもそれが難しい(難しそう)と、二の足を踏んでしまうようであれば、そもそも「テクニカル分析」には手を出すべきではないと思います。

テクニカル分析は言ってみれば「これを解ければ一生、お金には困りません」という「一見はアノマリー(不規則)に見えるパターンの中から規則性や傾向を見つけ出す行為」に他なりません。

その「難問」を解くリターンは十分過ぎるものだからこそ、本気で取り組むだけの価値は間違いなくあると思います。

ですが、ここで言及したような「理の追及」をする視点を持たずに、その有効性や合理性さえ不透明な適当な指標分析で攻略できるようなものでは無いという事です。

「理」を追及したテクニカルトレーダーの共通傾向。

よって、テクニカル分析を行っていく上で用いていくテクニカル指標、インジケーターは、その「理論」「計算式」「成り立ち」などを踏まえた上で、

・テクニカル分析の理を追及する上で決して無視するべきではないものなのか
・テクニカル分析の理を追及する上で無視しても問題はないものなのか

このような視点で1つ1つの指標を順を追って判断していけば良いという事です。

ただ、どんなテクニカル指標、インジケーターでも、それを支持している(アテにしている)トレーダーもいれば、とくに支持していない(アテにしていない)トレーダーもいます。

ですが、テクニカル分析に基づくトレードで継続的なリターンを上げる事が出来ているトレーダーは、私が認識している範囲では「最終的に行き付いているところはほぼ共通している」というのが実情です。

そのようなトレーダーの全てが、同じテクニカル指標を使い、同じような手法でトレードをしているとまでは言いませんが、度外視している指標と、重要視している指標には、一定の共通傾向があるという事です。

その共通傾向のみを端的に述べてしまうのであれば、それは以下のようなものです。

・複数のテクニカル指標、インジケーターをあれこれ表示させる事はしていない
・メインとなる1つの指標の有効性を徹底して突き詰めた判断基準を確立している
・2つ以上の指標を用いるとしても、主な指標は補助的な使い方に留めている

私自身もそうなのですが、実質的な「拠り所」としているような指標は実質的に「1つ」であり、テクニカル分析は、本当に有効性の高い指標を用いれば、その指標のみで「十分」なのが実情です。

また、単一指標のみで十分なテクニカル分析を行えないようなインジケーターに関しては、成果を上げているトレーダーのほとんどが「度外視」している傾向にあります。

実際に「重要視している指標」に相応の『理由』があるように「度外視している指標にも相応の理由」があり、その結果として「最終的に行き着いている指標にも共通した傾向がある」という事です。

これは「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、私のブログやメルマガを見てアプローチをくださるトレーダーさんが私と似た考え方を持っていた事による傾向である可能性は否定できません。

ただ、ブログ、メルマガなどとは全く関係のない経緯で知り合ったトレーダーにも、やはり「共通した傾向」が見られました。

よって、少なくとも私が認識している限りでは「成功しているトレーダーには上記のような共通傾向がある」という事です。

「理論」と「計算式」から読み解く『合理性判断』の具体例。

では、ここで『テクニカル分析の理を追及する視点による具体的な判断事例』を挙げてみたいと思います。

これは、あくまでも私個人の「見解」を示すものになりますが、有名どころのオシレーター系指標の1つに「RSI」というインジケーターがあります。

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RSI(Relative Strength Index)

テクニカル指標は「トレンド系指標」と「オシレーター系指標」に大別されるのが一般的で「トレンド系」は文字通り、相場のトレンド(流れ)を判断する指標で移動平均線などが有名どころかと思います。

対する「オシレーター系」は、その時点の相場の売り買いの強弱や、その推移を判断する指標と言われているもので、RSIやMACDなどが有名どころのオシレーター指標かと思います。

 
この「RSI」は、その「理論」や「計算式」などから『合理性に欠ける』という判断で、私は「自分が行いたいテクニカル分析では強いて用いる必要は無い」と考えています。

以下、この「RSI」という指標の「計算式」にあたるものです。

 RSI(%) = 値上がり幅の平均/(値上がり幅の平均+値下がり幅の平均)×100

この計算式に基づく判断として、RSIの数値が高くなるほど「買い(買い注文)が強い」という事になり、RSIの数値が低くなるほど「売り(売り注文)が強い)」という事になります。

その理論(理屈)はさほど複雑なものではなく「値上がり幅の平均」を「値上がり幅の平均」で割れば、数値は「1(100%)」となり、分母に「値下がり幅の平均」を加えれば、当然、数値は下がっていきます。

故に、レートが常に上昇しているような状況は「買い」が強いわけですから、常にRSIの数値は100%となり、そこでレートが下がってくると、分母の数が大きくなり、RSIの数値は下がっていくわけです。

この理論、計算式の上で「RSI」がテクニカル分析において有効な指針となるかどうかは結局のところ、

「どれくらいの期間の平均値でRSIを計算するか」

というところに行き着きます。

この「RSI」に用いられている「平均」という概念は、その「平均」の対象となる数値(期間)のみが「計算」の対象となるからです。

例えば「10日間の上昇幅の平均値」は、対象となる「10日間の数値のみ」が計算対象となるのであって、これを時系列で計算していけば、常に「11日前の数値」は計算の対象から外れる事になります。

値動きの推移の計測や、その予測において最新の数値を重要視する事の合理性に疑いの余地はありませんが「どれくらいの期間を遡って計測するべきか」は非常に難しい課題です。

仮にその計測期間を「10日」とした場合は必然的に「11日前の数値を無視する」という事になるため、

・10日前までの数値を重要視する理由(根拠)
・11日前の数値を無視しても良い理由(根拠)

これらに何らかの「合理性」が無ければ「10日間の平均値」を対象とした形で算出した指針そのものにも「合理性」が生まれません。

「平均」の概念を用いるインジケーターは非常に多いものの、ここで言及したような「課題」は、そのようなインジケーター全般に共通するものと言えます。

その「平均値の対象とする期間」をどのような根拠によって定めるか、定めているのかが重要であり、そこにこそ「理」を追及する上での合理性があって然るべきという事です。

ただ、この「平均値の対象とするべき期間」については「RSI」を提唱したテクニカルアナリストが『14日間』という期間を提示しているため「RSI」に関しては、その設定期間が「一般的」とされています。

その上で、そのテクニカルアナリストが提唱した「論理」は、

『相場には28日間の周期があり、その半期である14日間を重要視した』

このようなもので、そのアナリストの「研究の上での結論」として提唱さているものに基づいて「RSI」を利用するトレーダーは、この論理に沿った形でRSIを利用しています。

この論理の時点で私としては「科学的根拠」や「合理性」に欠けるものを感じてしまうのですが、そのアナリストが、どれくらいの統計と研究を重ねて、この結論を出したのかは明確にはなっていません。

RSIの考案者は「J.ウェルズワイルダージュニア」というエンジニアからテクニカルアナリストに転向したアメリカ人らしいです。

よって「あらゆるものに28日間の周期がある」「その半期の14日間に意味がある」という論理までを全面的に否定するつもりはないです。

ですが、実際に「RSI」を利用する場合、その「平均値」を算出する期間の設定(パラメーター)は「日数」ではなく「ローソク足の本数」で設定する形になっています。

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つまり、実際にRSIを利用しているトレーダーは1時間足、5分足、1分足といった、それぞれの表示チャートに対して、

・1時間足であればローソク足14本分、14時間の平均値から算出されるRSI
・5分足であればローソク足14本分、70分間の平均値から算出されるRSI
・1分足であればローソク足14本分、14分間の平均値から算出されるRSI

このように、そのチャートの時間足に応じたローソク足14本分を対象とする平均値から「RSI」の数値を算出し、それをチャート上に表示させているという事です。
 

「平均値」を用いるインジケーターに共通して見られる「論理」の破綻。

この「RSI」に限らず、テクニカル分析における指標、インジケーターの多くは「株式相場」を対象とした数日サイクルの値上がり、値下がりの予測を基本前提として作られています。

つまり大多数のインジケーターは、数時間、まして、数十分、数分といったデイトレード、スキャルピングトレードなどを前提として提唱されたものではないという事です。

とくに「平均」の値を取り入れているインジケーターは、その「平均」の対象となる期間を、このRSIのように1週間、1カ月、1年といったサイクルを前提としているものがほとんどなのが実情です。

ただ、現代のトレーダーは、そのような論理によって作り出されたインジケーターを1時間足、5分足、1分足といった時間足のチャートに置き換えて利用しています。

1時間、5分、1分といった時間足のチャートでは「14日間を平均値で集計したRSI」を表示させても、インジケーターとしては「ほぼ動きが無い指標」となっていまうからです。

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▼ 1時間足のチャートに14日間設定のRSIを表示した場合

故に、RSIなどの「平均」を用いるインジケーターでは「パラメーター」とされる形で、その設定値が「ローソク足の本数」で設定される形となっています。

その上で、RSIに関しては「14という数字だけが受け継がれる形で利用されている」という事です。

ただ、そもそもの「平均」の概念を前提とする上で、

・14本のローソク足の平均値で算出したRSIの数値の合理性
・15本前のローソク足の数値を除外する事の合理性

これらを全く見出せる余地が無いため、少なくとも私は1時間足、5分足、1分足といった時間足チャートにRSIを表示させ、売買の拠り所とする行為には「合理性が無い」と考えているわけです。

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これはあくまでも「RSI」を一例に挙げたものですが、私はこのような考え方で、その「理論」や「計算式」を踏まえて、テクニカル分析に利用していくべき指標の有効性、合理性を判断しているという事です。
 

▼ これらのインジケーターを支持するトレーダーの論理

これはRSIに限った話ではなく「平均」の値を用いるインジケーターのほとんどが、同じような論理で考案者による「〇日間の平均」という数値をローソク足の本数に置き換える形で利用されています。

そのインジケーターの提唱時点における「論理」や「前提」が、実質的にはほぼ度外視されてしまっているという事です。

それでも、このようなインジケーターを支持するトレーダー達の論理としては、

「大半のトレーダーが、そのパラーメーター(設定値)で利用しているから」

強いて言えば、これのみが唯一の「論理」として、その有効性を裏付ける、心もとない(少なくとも私としては)拠り所となっているのが実情のようです。

 
以上、本講義ではテクニカル指標、インジケーターの有効性を「理論」や「計算式」から判断する視点などを具体的な事例と併せて解説させて頂きました。

今回のテーマに関連する講義が幾つかございますので、こちらも是非、参考にして頂ければと思います。
 

>テクニカル指標の優劣~有効性の高いインジケーターの考察~

>テクニカル指標の使い方、見方を勉強する場合に注意すべき事

>テクニカル指標の使い方と「理論」「計算式」の関係性について

>相場における「絶対的な値動き」とそれを捉えるテクニカル分析について
 

本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。