FXで「買い」のポジションと「売り」のポジションの両方を同時に建てる行為を『両建て』と言います。
一見、意味のない行為に思える「両建て」ですが、値動きの捉え方やそれに伴うトレード、また税金対策などで有意義な使い方もできるため、今回は、この「両建て」について講義していきます。
また、ここでは為替のFXにおける両建てとは別に、ビットコインFXにおいてのみ成立する為替のFXには無いメリットも併せて言及していきますので是非、参考にしてください。 |
FXで両建てを行う意味、メリット、税金対策になる理由など。
本来、FXでは相場の値動きを予測し、相場が上がると思えば「買い」のポジションを建て、相場が下がると思えば「売り」のポジションを建てます。
そして、思惑通りに相場が動けば、その変動に伴いリターンを得られるわけです。
ですが「売り」と「買い」の両方のポジションを建てている場合は、相場がどう動いても、どちらかのポジションは利益を生みますが、どちらかのポジションは損失を生む事になります。
つまり、相場がどのように動き手も「最終的な損益は相殺されてしまう」という事です。
もちろん、これは双方向のポジションを同じ数量分、両建てしていた場合の話になりますが、両建ての数量に「差」を付けた場合でも、両建てを行った分だけ利益が目減りする事は避けられません。
ですから、単純なトレードの視点で言えば「両建て」は実質的に意味のない行為であり、同数量の両建てを行っている状況は実質的に「ノーポジション」と変わらないわけです。
また、数量に差を付けて「両建て」を行うなら、数量の少ない方のポジションを解消して、その分だけ、数量の多い方のポジションも解消すれば、同じ状況となります。
ただ、実際にポジションを建てる場合はスプレッドや手数料が関係してきますので、そこを考慮すると「両建て」は『その分だけ単純に損なポジションを建てている』という事になります。
ですが、スプレッドや手数料分を踏まえた上でも「両建て」にメリットが生じるケースとしては、
・ポジションの生成や解消が間に合わない早い値動きへの対応策 ・利益を確定させずに含み益を固定する事で行える税金対策 |
このどちらかであり、いずれも、かなり限定された条件下で有効になるものですが、その具体的なケースをそれぞれ解説していきます。
ポジションの生成や解消が間に合わない早い値動きへの対応策
これはFX(トレード)の経験者で無ければ分からない部分かもしれませんが、実際の「相場の値動き」においては『かなりのスピード感で相場が急落、急騰するケース』があります。
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いざ、そのような相場に実際に遭遇してした場合、新規でポジションを建てる場合でも、既に建てているポジションを解消する場合でも、その急騰や急落に沿った注文は、
・指値注文はレートがどんどん進むので全く通らない ・成行注文ではレートがかなり進んだところで約定するリスクがある |
といった弊害が生じてしまい、そのような相場の真っただ中では、上手い具合に注文を通す事自体が困難となります。
また、そのような急激な変動が伴う相場ではスプレッドが広くなる傾向にあるため、これも不利な取引材料の1つとなります。
よって、そのような相場に遭遇する「可能性」を事前に見越せている場合においては、事前にポジションを建てておくに越した事はありません。
その上で、仮にそのような急激な変動が伴う相場が、言わば「ダマし」のような形で『自分が予測する本筋の値動きとは逆方向に一時的に生じる可能性が高い』という場合、
・本筋の予測に沿った方向のポジション ・一時的なダマし相場となる場合の逆方向へのポジション |
この両方のポジションを「両建て」した上で、本筋の予測とは逆方向の「急激な値動き」が生じる可能性が低くなるまでは、両建てしたポジションを保持します。
実際に本筋の予測とは逆方向に「一時的なダマし相場」と思われる急激な値動きが生じたなら、相場が本筋の値動きに「戻る」と考えられるタイミングで「本筋の予測とは逆方向に建てたポジション」は解消。
この時点で「一時的な逆方向への値動き」でもリターンを得られた形になるわけです。
要するに、
・最終的に相場が動いていく可能性が高い方向は予測できている ・本筋の値動きの前に一時的に逆方向への急激なダマし相場がありえる |
このような値動きの予測が出来ている場合においては「両建て」を上手く利用する事で「急激な値動きに対して、ベストな対処を行える」という事です。
ただ、ここまでの「両方向への値動きの可能性」を予測できるようなケース、このような予測を立てられるトレーダーは実際のところ稀かと思います。
利益を確定させずに含み益を固定する事で行える税金対策
こちらはある程度、長時間、長期間の売買を前提とするようなトレーダーが行える税金対策で、すでに十分な含み益が出ているポジションの「利食い」を行わず、これを「両建て」で代用します。
要するに「買いポジション」で十分な含み益が生じている状況で、本来であれば「利食い」によって利益を確定するタイミングで、逆方向の「売りポジション」を同じ数量分だけ建てるわけです。
そうする事で、同数量の売りポジションを建てた後は、相場がどちらに動いても、双方向の両建てポジションで、損益が相殺される形になります。
つまり、先立って生じていた「含み益をそのまま固定した形で保持できる状況になる」という事です。
ただ、この場合は利益を確定してはいないため「含み益」として、ポジションそのものも保持された状況となります。
このような状況をあえて作り出すメリットはまさに「税金対策」であり、基本的にFXにおける「税金」は、ポジションを解消して「確定した利益」のみが課税の対象になります。
ポジションとして保持されている「含み益」は、それがどんなに大きな金額となっていても『それを確定利益としない限りは課税の対象にならない』という事です。
もちろん、いつかはポジションを解消して利益を確定させない事には、いつまでたっても「含み益」は「含み益」のままですが、個人でFXの収支を申告しているトレーダーあれば年末時期。 法人でFXの収支を申告しているトレーダーであれば、その決算月などをめどとした上で、翌年度以降に収益の確定を持ち越したい場合に「両建て」を利用した税金対策を施せるという事です。 |
▼「両建て」を悪用したEA(自動売買システム)について。ちなみに「両建て」は、ここで言及した「税金対策」では「含み益」を確定させない状況を作れる事と同様に「含み損」を確定させない状況を作り出す事もできます。
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ビットコインFX特有の「両建て」活用。
また、ビットコインのFX(証拠金取引)を行える海外運営の取引所の中には「ビットコインを原資(資金)として証拠金取引(FX)を行える取引所」が存在します。
日本の取引所で「円(JPY)」に証拠金にFXを行えば、勝てた場合は「円(JPY)」が増え、負けた場合は「円(JPY)」が減りますが、ビットコインを証拠金にFXを行う場合は、
・勝てた場合は「円(JPY)」ではなくBTC(ビットコイン)の保有数量が増える ・負けた場合は「円(JPY)」ではなくBTC(ビットコイン)が保有数量が減る |
という事になるわけです。
そして、そのようなビットコインFXの取引所を利用する場合、常に元手(証拠金)となるビットコインの現物を保有しながらFX(トレード)を行う形になります。
ただ、その状況はFXで言うところの、元手(証拠金)となる金額分の「買い」のポジションを持っている状況と同じであり、ビットコインのレート変動で、その元手となる資金(BTC)の価値も変動してしまいます。
そこで、元手(証拠金)と同じ分の「売り」のポジション」を建てる事で、実質的な「両建て」の状況が生まれるため、これによってBTCレートの変動に伴う実質的な損失も生じなくなります。
ビットコインの「現物」を保持しながら同枚数の「売りポジション」を建てる事で「BTCのレートがどのように変動しようと損失が生じる事はなくなる」という事です。
▼ 実質的な「両建て」によるビットコインのノーリスク運用についてこの方法を利用する事で、ビットコインの現物を実質的に「ノーリスク」で運用していく事が可能になります。
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以上、本講義では『両建て』の意味とメリット、その有効な使い方について言及させて頂きました。
今回のテーマに関連する講義も他に幾つかございますので、併せて参考にして頂ければと思います。
本講義の内容が、少しでも今後のあなたの資産運用のお力添えになれば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。